
答え:⑤
各選択肢の検討
- 「減衰が存在するとき,共振時の応答は有限の振幅になる。」
無減衰系(理想)では励振周波数=固有角周波数で理論的に無限大(発散)となるが,粘性減衰があれば最大振幅は有限。正しい。
- 「減衰が存在するとき,自由振動は時間とともにゼロに収束する。」
粘性減衰
かつ
ならエネルギー散逸により振幅は指数的に減少し 0 に向かう。正しい(臨界・過減衰も単調減衰で 0 へ)。
- 「減衰が大きい場合は,減衰が無い場合に比べて共振周波数は小さくなる。」
粘性減衰比
の下での“共振(共振ピークが現れる)周波数”や“減衰固有角周波数”は
で,無減衰
より小さい。正しい。
(厳密な“共振ピーク周波数”は
(ζ<1/√2) であり,やはり
より小さい。)
- 「減衰比が 1 より大きいときを過減衰という。」
減衰比
が臨界,
が過減衰。正しい。
- 「減衰比は(力/速度)の次元を持つ。」
これは 誤り。力/速度(N·s/m)は“粘性減衰係数”
の次元であり,減衰比(damping ratio)
は 無次元。
従って 最も不適切なのは ⑤。
参考:技術士第一次試験-令和2年度機械部門Ⅲ-15解答例 | 技術士のたまご
c≠0 のときの 固有角周波数の式を書いてください。ここから臨界減衰係数と減衰状態の分類を説明してください
1 単自由度ばね‐ダンパ‐質量系の運動方程式
2 固有角周波数に減衰を含めた一般形
(1) に
を代入すると
根
■ 不足減衰領域
なので (3) の平方根が虚数になり,
これが 減衰固有角周波数(damped natural frequency)です。
でも振動が残る場合は,ばね‐質量だけの
が
へ低下します。
3 臨界減衰係数
平方根が 0 になる境界が
4 減衰状態の分類(
または
による)
減衰比
|
減衰係数
|
特性根 |
応答の特徴 |
状 態 |
|
|
|
振幅一定で周期振動 |
無減衰 |
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減衰振動(オーバーシュートあり) |
不足減衰 |
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重根
|
最速・無振動収束 |
臨界減衰 |
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|
実負 2 根 |
振動せず遅い二指数減衰 |
過減衰 |
|
|
一部正の実部 |
発散(不安定) |
負減衰 |
5 ポイントまとめ
- 固有角周波数(減衰含む)
- 臨界減衰係数
(これより大きいと振動は消えるが応答は遅くなる)
- 分類
無減衰 →
不足減衰 →
臨界減衰 →
過減衰
この関係を押さえておけば,任意の
が与えられたときに
- 実際の振動周波数
- 振動の有無と減衰形
を即座に判断できます。
参考
技術士第一次試験-令和2年度機械部門Ⅲ-15解答例 | 技術士のたまご