主せん断応力 τmax\tau_{\text{max}}

 

の求め方

平面応力状態

(σx,  σy,  τxy)(\sigma_x,\;\sigma_y,\;\tau_{xy})

に対し

τmax=(σxσy2)2+τxy2=σ1σ22\tau_{\text{max}} =\sqrt{\Bigl(\tfrac{\sigma_x-\sigma_y}{2}\Bigr)^2+\tau_{xy}^{\,2}} =\frac{\sigma_1-\sigma_2}{2}

 

が主せん断応力(最大せん断応力)の絶対値になります。


各選択肢の計算

番号

σx\sigma_x,[MPa]

σy\sigma_y,[MPa]

τxy\tau_{xy},[MPa]

(σxσy2)2\displaystyle\Bigl(\frac{\sigma_x-\sigma_y}{2}\Bigr)^2 

τxy2\tau_{xy}^{\,2} 

τmax[MPa]\displaystyle\tau_{\text{max}}\,[\text{MPa}] 

120 120 0

00 

00 

0
70 0 30

352=122535^2=1225 

302=90030^2=900 

212546.1\sqrt{2125}\approx**46.1** 

50 –40 0

452=202545^2=2025 

00 

45.0
0 0 40

00 

402=160040^2=1600 

40.0
–100 0 0

502=250050^2=2500 

00 

50.0

結果

最大の

τmax|\tau_{\text{max}}|

50 MPa で、これは の組み合わせ

σx=100  MPa,  σy=0  MPa,  τxy=0  MPa\boxed{\sigma_x=-100\;\text{MPa},\;\sigma_y=0\;\text{MPa},\;\tau_{xy}=0\;\text{MPa}}

 

に対応します。

 

参考:

令和3年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-9 モールの応力円 | 副業の宮殿【PR】

平成26年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-8 ねじりモーメントを受ける丸棒のモールの応力円 | 副業の宮殿【PR】

技術士第一次試験-令和2年度機械部門Ⅲ-9解答例 | 技術士のたまご

モールの応力円について教えてください。

モールの応力円は,平面応力状態における応力変換を円上の幾何学で直感的に表す強力なツールです。以下,ポイントを絞って解説します。


1. モールの応力円とは

  • 平面応力状態
    (σx,  σy,  τxy)(\sigma_x,\;\sigma_y,\;\tau_{xy})
     

    を,座標平面(横軸:法線応力σ,縦軸:せん断応力τ)上に描く円図。

  • この円上の任意の点
    (σn,  τn)(\sigma_n,\;\tau_n)
     

    は,ある角度θ(材軸から面の回転角)での面に作用する法線応力・せん断応力を表す。

  • 円の中心と半径を求めれば,主応力や最大せん断応力も一目でわかります。

2. 応力円の作図手順

  1. 座標軸を設定
    • 横軸に法線応力 σ(引張+を右向き,圧縮-を左向き)
    • 縦軸にせん断応力 τ(材料片の上面に作用する τ_xy を上向きを+として描く)
  2. 2つの基本点をプロット
    • 点A
      (σx,  +τxy)(\sigma_x,\;+\tau_{xy})
       
    • 点B
      (σy,  τxy)(\sigma_y,\;-\tau_{xy})
       
  3. 中心
    CC
     

    と半径 RR 

    の算出

    C=(σx+σy2,  0),R=(σxσy2)2+τxy2C = \biggl(\,\frac{\sigma_x+\sigma_y}{2},\;0\biggr), \quad R = \sqrt{\Bigl(\frac{\sigma_x-\sigma_y}{2}\Bigr)^2 + \tau_{xy}^2} 

    • 中心は横軸上にある点
    • A,B が円周上にくるように,この
      CC
       

      RR 

      の円を描く


3. 主応力・最大せん断応力の読み取り

  • 主応力
    円の横軸と交わる2点の座標が,最大・最小の主応力

    σ1,2=C±R=σx+σy2±(σxσy2)2+τxy2\sigma_{1,2} = C \pm R = \frac{\sigma_x+\sigma_y}{2} \pm \sqrt{\Bigl(\frac{\sigma_x-\sigma_y}{2}\Bigr)^2 + \tau_{xy}^2} 

  • 最大せん断応力
    円の頂点(縦方向の上下端)が,±最大せん断応力

    τmax=R,σ対応=C\tau_{\max}=R,\quad \sigma_\text{対応} = C(法線応力成分は円の中心と一致)


4. 応力変換式との対応

  • 材軸面を角度 θ 回転したときの応力成分は,モール円上の点を
    • 円の中心から角度
      2θ2\theta
       

      だけ反時計回りに動かした位置に対応

  • 一般の変換式

    σn(θ)=C+Rcos(2θ),τn(θ)=Rsin(2θ).\begin{aligned} \sigma_n(\theta) &= C + R\cos(2\theta) ,\\ \tau_n(\theta) &= R\sin(2\theta) . \end{aligned} 

  • 主応力面は
    2θp2\theta_p
     

    が円上で τ=0\tau=0 

    になる位置,すなわち
    tan2θp=2τxyσxσy\tan2\theta_p = \dfrac{2\tau_{xy}}{\sigma_x-\sigma_y} 

    で求まります。


5. 応用例とメリット

  • 設計確認:任意の面の応力状態を瞬時に評価できる。
  • 安全率評価:許容主応力・許容せん断応力と比較しやすい。
  • 複雑荷重の合成:複数の応力要素(熱応力,残留応力など)がある場合でも,合成後の応力円で一括評価が可能。

まとめ

  1. モールの応力円は「円の幾何学」で平面応力の主応力・せん断応力を直感的に描画する手法。
  2. 中心
    CC
     

    と半径 RR 

    を計算し,基本点A・Bから円を描く。

  3. 円と横軸の交点で主応力,円の縦端で最大せん断応力が読み取れる。
  4. 円上の角度は材料面の回転角
    2θ2\theta
     

    に対応。

モール円の作図と読み取りに慣れると,複雑な応力状態も瞬時に把握できるようになります。具体的な例題でもご説明できますので,お気軽にお申し付けください!

 

平面応力状態とはなんですか

 

平面応力状態(plane stress) とは、構造部材の厚さ方向(通常は

zz

軸方向)の応力成分が無視できるほど小さく、面内の応力成分だけを考慮する応力状態のことです。


1. 定義と前提条件

  • 主な仮定
    • 厚さ方向の正応力:
      σz=0\sigma_z = 0
       
    • 厚さ方向のせん断応力:
      τxz=τyz=0\tau_{xz} = \tau_{yz} = 0
       
  • 残る応力成分

    σx,σy,τxy \sigma_x,\quad \sigma_y,\quad \tau_{xy}の3成分だけで応力状態を記述する。


2. 適用例

  • 薄板・薄殻構造
    • 板厚が他の寸法に比べて十分小さい板(航空機の外板、橋梁の床版、箱型シェルなど)
    • 熱応力や残留応力が板厚方向に十分抜ける場合
  • 試験片
    • 板状試験片を用いた引張・曲げ試験

これらでは、厚さ方向に応力がかかりにくいため、平面応力近似が成り立ちます。


3. 数式での表現

平面応力状態では、応力テンソルは

σ=[σxτxy0τxyσy0000]\boldsymbol{\sigma} = \begin{bmatrix} \sigma_x & \tau_{xy} & 0\\[6pt] \tau_{xy} & \sigma_y & 0\\[6pt] 0 & 0 & 0 \end{bmatrix}

 

となります。
この下でのひずみ–応力関係(線形弾性体の場合)は、平面応力用の薄板弾性係数行列を用いて表現します。


4. 平面ひずみ状態との比較

平面応力状態 平面ひずみ状態
厚さ方向の応力

σz=0\sigma_z = 0 

εz=0\varepsilon_z = 0 

残る応力成分

σx,σy,τxy\sigma_x,\sigma_y,\tau_{xy} 

σx,σy,τxy,σz\sigma_x,\sigma_y,\tau_{xy},\sigma_z

σz0\sigma_z\neq0

代表的な適用例 薄板、板試験片 地中構造、堤防、コンクリート梁など厚みの大きい部材

5. メリットと注意点

  • メリット
    • 計算量が減り、解析や設計が簡便になる
    • Mohrの応力円や解析式がそのまま適用できる
  • 注意点
    • 厚さがそれほど薄くなければ誤差が大きくなる
    • 板の端部近くや集中荷重部では板厚方向応力が無視できない場合がある

まとめ

  • 平面応力状態 は「板厚方向の応力をゼロとみなす」近似
  • 板状・薄殻構造の設計・解析で多用される
  • 応力テンソルは
    σx,  σy,  τxy\sigma_x,\;\sigma_y,\;\tau_{xy}
     

    の3成分のみで記述

ご不明点や具体例(荷重条件・材質・形状)での適用方法などがあれば、さらに詳しくご説明いたします!

 

モールの応力円では基本点Aから横軸、縦軸までの角度が最大応力になりますか?

 

モールの応力円で「基本点Aから円周上のσ 軸(横方向)またはτ 軸(縦方向)までの角度」を測るのは,それぞれ主応力面と最大せん断応力面の方向(円周角)を求めるためです。ただし、モールの円上の角度=実空間での板面回転角の2倍になります。


1. モール円上の「基本点A」とは

  • 点A:
    (σx,  +τxy)(σ_x,\;+\tau_{xy})
     

    を表します。

  • 中心C:
    ((σx+σy)/2,0)\bigl((σ_x+σ_y)/2,\,0\bigr)
     
  • 半径:
    R=(σxσy2)2+τxy2R=\sqrt{\bigl(\tfrac{σ_x-σ_y}2\bigr)^2+\tau_{xy}^2}
     

点Aから円周上を反時計回り(一般に+方向)にたどって――

  • 横軸との交点(τ=0) → 主応力σ₁,σ₂の点
  • 縦軸との交点(σ=C) → 最大せん断応力 ±R の点

までの中心角をそれぞれ測ります。


2. 円上角度と実空間角度の関係

  1. 点A → 横軸交点までの円周角

    2θp=(CA,  横軸方向) 2θ_p =\angle(\,\overrightarrow{CA},\;\text{横軸方向}\,)これを半分にして

    θp\displaystyle θ_pが「元のx軸から主応力面までの回転角」です。

  2. 点A → 縦軸交点(上部)までの円周角

    2θs=(CA,  縦軸方向) 2θ_s =\angle(\,\overrightarrow{CA},\;\text{縦軸方向}\,)半分にして

    θs\displaystyle θ_sが「元のx軸から最大せん断面までの回転角」です。

特に、縦軸上(最大せん断応力点)は常に主応力点から90°(円周角)離れているので

2θs=2θp+90°θs=θp+45°2θ_s = 2θ_p + 90° \quad\Longrightarrow\quad θ_s = θ_p + 45°

 

つまり物理的にも「最大せん断面は主応力面から45°回転した面」に対応します。


3. 手順まとめ

  1. モール円を描き、点A・Cをプロット
  2. 中心Cを基準に、点A→σ軸交点、点A→τ軸交点までの円周角を測る
  3. 円周角÷2 で、部材上の実際の面の回転角
    θp,θsθ_p,θ_s
     

    が得られる


結論

「基本点Aから横軸までの円上角度」は主応力面の方向を、
「基本点Aから縦軸までの円上角度」は最大せん断面の方向を、
それぞれ表しますが、
いずれもモール円上の角度=実空間での回転角の2倍
という点を必ず抑えてください。

このルールにのっとれば、モールの応力円から任意面のσ–τを直感的に求められるようになります!