Nvidia が、サーバー向けのCPU市場に参入する、という報道です。

Nvidia の収入の大半は GPU から来るものですが、ARMベースのCPUを搭載したSOC(System on Chip)にも徐々に進出しています。現在は、Chromebook や Nintendo Switch 向けに提供していますが、200~300ドルのデバイス向けのチップなので、売り上げも小さいし、利益率も低いのです。

同じ SOC である Apple の M1 チップに性能面で大きく負けていますが、パソコン市場では、いまだに x86 系のCPUが必須な状況なので、Nvidia として高性能なチップを開発してもビジネスにはなりません。Microsoft が ARM をもっと積極的にサポートし、ARMベースの Windows パソコンが安心して使えるようになるまで、まだまだ時間がかかると思います。

そこでNvidia が目をつけたのがサーバー向けの市場です。Linux が中心であるサーバー側であれば、CPU が ARM であっても問題ないし、消費電力あたりの性能で考えれば、ARM の方が優れているぐらいです。そんな理由もあり、x86 系から ARM へのシフトが徐々に起こりつつあったのです。

そこで、Nvidia としては、まずはサーバー向けの高性能 SOC を提供することにより、ARM へのシフトの波に乗ろうという考えなのです。サーバー向けの高性能プロセッサは、単価が高いため、大きな売り上げと高い利益率が期待できます。この市場でしっかりと稼いで研究開発費を回収出来れば、数年後に ARM ベースの Windows パソコン市場が本格的に立ち上がった時に、Nvidia が圧倒的なシェアを持つことも不可能ではありません。

サーバー向けの高性能プロセッサ市場は、インテルにとっては稼ぎ頭の市場であり、Nvidia の参入により、シェアを大きく下げることはほぼ確実だと思います。

Nvidia は、自動運転車向けの SOC にも力を入れていますが、そこも市場としてはまだまだ小さいため、売り上げや利益には貢献出来ていません。

つまり、Nvidia は、既にこれだけ大きな会社でありながら、高性能サーバー、自動運転車、ARM 版 Windowsパソコン、という三つの市場で、とても大きな「伸び代」を持っている会社なのです。そう考えれば、数年後には GAFA+M の仲間入りをしていても不思議はないし、株価総額 $1 trillion も不可能ではないと思います。

 

引用:週刊 Life is Beautiful 2021年4月20日号