リチウムイオン電池は、リチウムイオンが正極と負極の間を移動することで充電と放電が可能になる二次電池である。
一般には正極にリチウム金属酸化物、負極に炭素材料、電解液に非水系溶媒を用いる。
一方、電解質としてゲル状の高分子ポリマーを用いる二次電池は、リチウムポリマーとして区分される。

発明の歴史としては、1976年に米エクソンのスタンリー・ウィッティンガム博士(2019年 ノーベル化学賞受賞)が、二硫化チタンを正極に、金属リチウムを負極に使う二次電池を開発した。

この電池は、特に負極側で安全性の点で問題となる充電時のデンドライト問題、すなわち金属リチウムが負極表面で析出し、正極と負極を分離するセパレーターを突き破って正極側へ到達して、その両極に電流が流れることで電気的にショートする現象である。
内部短絡を起こしやすい電池は火災など事故の原因となるため使用できない。

しかし、二硫化チタンは層状の化合物で、リチウムイオンを分子レベルで収納できるスペースを持ち、リチウムイオンが繰り返し出入りしても形が壊れにくい特徴を持った物質だったことが明らかになる。
この「層状化合物にイオンが出入りする」という現象は、「インターカレーション」と呼ばれている。

その優れた特性から、その後、インターカレーション型の電極が盛んに研究されるようになった。

ところが負極に炭素材料として黒鉛を用いると、電解液として使用するプロピレンカーボネートなどのほとんどの有機溶媒が負極側で分解してしまう現象が発生する。
このため、有機溶媒を適用した炭素系材料でのインターカレーションは困難と考えられていた。

1980年には、英オックスフォード大学のジョン・グッドイナフ教授(2019年ノーベル化学賞受賞)と水島公一氏が、コバルト酸リチウムなどのリチウム遷移金属酸化物が正極材料として機能することを発見した。
その翌年に三洋電機が黒鉛を負極材料とする二次電池の特許を出願。

1983年になると、グッドイナフ教授はスピネル構造をとるマンガン酸リチウムも正極材料に使えることを見出した。
コバルト酸リチウムに比べて安価で安全という特徴があることから、1996年に正極材料として実用化された。

車載用途では、日産自動車が初の量産EVとして2010年に発売開始した「リーフ」のリチウムイオン電池に、この材料が適用された。

 

1981年、旭化成工業の吉野彰氏らは、白川英樹氏(2000年ノーベル化学賞受賞)が1977年に発見したポリアセチレン(導電性プラスチック)が有機溶媒を用いた二次電池の負極に適用可能なことを見出した。
正極にはグッドイナフ教授らが1980年に発見したコバルト酸リチウムなどを用いて、今日に至るリチウムイオン二次電池の原型を確立した。
1983年のことである。

 

しかし、ポリアセチレンは電池容量の向上に結び付けることが困難なことなどから、1985年、吉野彰氏らは負極に炭素材料を適用する新たなリチウムイオン二次電池の基本骨格を提案した。
そして、アルミ箔を正極集電帯に用いる技術を確立、安全性を確保するための機能性セパレーターの実現、さらに安全素子技術、保護回路、充電制御技術、電極構造や電池構造等の技術も開発され、安全なリチウムイオン電池の実用化に大きな貢献を果たした。

1986年、カナダのモリエナジー社は正極に二硫化モリブデン、負極に金属リチウムを用いた金属リチウム二次電池を製品化した。
しかし、金属リチウムのデンドライトが充電過程で負極に析出し、それが正極に達して内部短絡を起こす問題を生じた。

1989年には、NTTのショルダー型携帯電話などで発火事故が多発し、金属リチウムを用いる電池はリチウム一次電池として実用に至っているが、充電可能な二次電池の開発は中断されるに至った。

 

1990年、負極に黒鉛を用いた場合に、エチレンカーボネートの電解液が黒鉛表面に保護被膜を形成することで電解液が制御されることが見いだされ、現在に至るまで主流な溶媒として適用されている。
そして1991年、ソニー・エナジー・テックが世界初のリチウムイオン電池を量産し、製品化した。

1993年には、エイ・ティーバッテリー(旭化成工業と東芝との合弁会社)も製品化し、1994年には三洋電機も黒鉛炭素を負極材料とするリチウムイオン電池を製品化した。

 

その後も開発は続き、ジョン・グッドイナフ教授らは1997年に、オリビン構造をとるリン酸鉄リチウムを正極材料として提案した。
コバルト酸リチウムと比べて安全性に対する優位性がある一方で、作動電圧が3V程度と、一般のリチウムイオン電池に比べて低いことから、同等エネルギー量を前提にすると重くて大きな電池となる。
ソニーは2009年に、リン酸鉄リチウムイオン電池を商品化した。
同社は車載用途電池の事業をもっていなかったので、家庭用などの定置用途でビジネスを構築してきた。

近年では、中国市場におけるEVバスには重くて大きくなっても問題ないリン酸リチウムイオン電池が適用されている。
搭載容量が制限される一般のEVでは、リン酸リチウムではなく三元素(ニッケルーマンガンーコバルト)が主流になっている。

1999年になると、ソニー・エナジー・テックなどが電解質にゲル状ポリマーを適用するリチウムイオンポリマー電池を実用化した。
電解液系から半固体のポリマーに変更することで軽量・薄型化が実現されている。

さらに、従来の金属缶タイプではなく、外装材をアルミラミネートフィルムで構成するものが主流となった。
従来の携帯電話からスマートフォンやタブレット用途では、形状成型自由度に優れたラミネートタイプが広く用いられている。

 

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