バイポーラ型電極は古くから考案されてきましたが、実用化には至りませんでした。
しかし、近年異なるタイプの製品が相次いで発表されています。

バイ(bi-)は「2つ」、ポーラ(polar)は「極」のこと。

つまり、バイポーラは「2つの極」を意味し、バイポーラ型電極とは、1枚の電極基盤の表裏に、それぞれ正極と負極を持つ電極をいいます。
そのため、通常の電池では電流は電極に沿って流れるのに対して、バイポーラ型電極では電流が電極面に垂直に流れます。

このとき、電流が流れる向きの断面積が大きくなるので、抵抗が小さくなり、大きな電流を流すことができます。

ここでは、2020年6月に古河電気工業と古川電池が開発の成功と量産化を発表したバイポーラ型鉛蓄電池について紹介します。

 

省エネ志向で電力貯蔵に最適なシステム

バイポーラ型鉛蓄電池は、低地型の電力貯蔵用とを目的とした電池です。
名称のとおり、充放電の基本原理は鉛蓄電池と同じですが、構造はシンプルで、樹脂プレートの両側にそれぞれ鉛と酸化鉛の薄膜を接合させて電極基板を作ります。

そして、電解液の希硫酸を基板の間に封じ込め、鉛蓄電池で起きがちな液漏れを防ぎ、安全性を高めています。

バイポーラ型鉛蓄電池は、体積が小さく、重量も軽いので、従来の鉛蓄電池に比べて体積エネルギー密度は約1.5倍、重量エネルギー密度は約2倍に高まります。
ただ、これでも電池セルの値としてはリチウムイオン電池(LIB)に劣ります。

しかし、蓄電システムを設置するときに、LIBでは必要となる一定の距離間隔や空調設備がいらないので、設置面積当たりのエネルギー量はLIBを上回ります。
トータル的に、システムコストをLIBの半分に抑えることが目標で、これはダムの揚水発電並みに低い水準です。

一方、バイポーラ型鉛蓄電池は、サイクル寿命約4500回とLIBの500~1000回(LiCoO2正極)をはるかに凌駕しており、およそ15年にわたる寿命と耐久性をもっています。
また、使用後のリサイクルも、すでに確立されている従来の鉛蓄電池の流れに乗せることができます。

このように、経済性・安全性・耐久性・リサイクル性にすぐれるバイポーラ型鉛蓄電池は、次世代の電力貯蔵用電池の有力候補です。

 

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古河電気工業と古河電池がバイポーラ型蓄電池を共同開発 バイポーラ型蓄電池のメリット・デメリットと性能