欲しい世界を描くことが大切だと述べたが、そこで生み出すべき単なる機能的な差異を超えた「目に見えない価値」
例えば従来型の喫茶店とスターバックスの違いは何かを機能的に説明するのはなかなか難しい。
人がいいなと思うであろうことを先んじて感じ、それを自分なりに表現できる力が重要となる。
言葉でもいいし、絵でもいい。その両方があるとさらに最高だ。そういう力をもった人を育てていけるかが僕らに問われている。
そして僕ら一人ひとりもそういう価値を感じられる能力を磨いておきたい。
仮に生み出せなくとも、少なくとも識別できる、そんな「知覚」の能力が深く広い人が多くなることで、街も、空間も質が上がる。
東京、京都、大阪は世界の都市の中でももっともミシュランの星が多いトップ3であり、京都の祇園周辺に至っては面積当たりのミシュランの星の密度が世界最高といわれる。
これには、日本人の食、味覚、また、それにまつわる多面的な経験に対する近くの深さが寄与していることは言うまでもない。
価値を感じる人がいないところでこのような文化が育つわけがないからだ。
パリにおける建物・絵画・視覚芸術の奥深さ、ロンドンにおけるウイットの味わい、フィレンツェを含むイタリアのトスカーナ地方の豊かな田園空間創造に「知覚」が生んだ豊かな文化が見られる。食の日本のように我々日本人が優れている部分もあるが、そうでない部分は謙虚に学び、さらに深い近くを磨いていくことが空間、そして土地の力や価値に直結していく。
技やテクノロジーの強さはもちろん大切なのだが、利休がかつて行ったように、新たな価値観の挑戦(夢)とそれを形にする力(デザイン)こそが我々の未来の価値を生み出していくもう一方の力になる。
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