ゲーテはいった「現在の姿を見て接すれば、人は現在のままだろう。人のあるべき姿を見て接すれば、あるべき姿に成長していくだろう」

 

『ラ・マンチャの男』というミュージカルをご存じだろうか。ある中世の騎士がアルンドンサというひとりの娼婦に出会う美しい物語である。

周囲の人は誰もが、ヒロインである彼女を見下し、彼女はそういう人間だと決めつけていた。
しかし、この詩人の心を持つ騎士は、彼女の中に全く違う姿を見出していた。美しく気高い彼女本来の姿が彼の目には映っていた。騎士は彼女を肯定し、繰り返し彼女にその本来の素晴らしい姿を反映して見せた。やがて騎士は、その娼婦にドルネシアという新しい名前を与え、それは彼女の生活に新しいパラダイムをもたらした。

当初、彼女は自分に対する騎士の行為をことごとく否定した。古い脚本には、人を寄せつけないほどの力があるからだ。そのため彼女は、彼を気の狂った空想家だとあしらった。しかし、それでも騎士は娼婦に対して、忍耐強く無条件の愛の預け入れを繰り返し、少しずつ彼女の脚本づけを書き改めていった。彼の行動が、彼女の本質や本来の可能性を刺激し、やがて彼女はそれに徐々に反応し始める。彼女の生活の在り方が、次第に変わり始めた。彼女は、彼が映し出してくれる自分の姿を信じ、その新しいパラダイムに基づいて行動し、周りの人々の誰もが驚くほど変わっていったのである。

その後、彼女が以前のパラダイムに戻りかけた時にも、彼は彼女を自分の病床に呼びよせ、「見果てぬ夢」という美しい歌を歌うと、その目を見つめて次のようにささやいた。
「あなたはドルネシアだ。決してそのことを忘れるな」と。

 

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