中山製鋼所(5408)調査レポート
企業概要と事業構成
中山製鋼所グループは1919年創業の電炉鋼メーカーで、2024年時点の事業は 鉄鋼事業 を中心に、エンジニアリング事業、不動産事業を展開している。
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鉄鋼事業:スクラップを使った電気炉で鋼材を製造し、薄板・厚板・表面処理鋼板や自動車・建設向けの棒鋼・線材など幅広い製品を供給しているnakayama-steel.co.jp。建材事業も鉄鋼事業に含まれ、軽量形鋼や電縫鋼管などを製造・販売しているnakayama-steel.co.jp。2023年度のセグメント別売上は鉄鋼事業が1,814億円(売上高比率98 %)で利益も94 %を占め、エンジニアリング事業と不動産事業はそれぞれ約1 %と5 %と小さいnakayama-steel.co.jp。
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エンジニアリング事業:鋼製魚礁やロール・バルブなどの製造や機械加工等を行っているnakayama-steel.co.jp。
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不動産事業:不動産の賃貸・売買を手掛けるnakayama-steel.co.jp。
同社は電気炉を用いることで鉄スクラップをリサイクルし、CO₂排出が少ない鋼材を製造している。この環境優位性を活かし、サステナブルなバリューチェーンを強化していく方針を示しているnakayama-steel.co.jp。
財務状況
2025年3月期(2024年度)決算の概要
2024年度(2024年4月〜2025年3月)の連結決算は下記の通りfinance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp。
| 項目 | 2025年3月期(実績) | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,693億29百万円 | ▲8.2 % |
| 営業利益 | 84億36百万円 | ▲31.6 % |
| 経常利益 | 81億19百万円 | ▲33.7 % |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 56億95百万円 | ▲36.0 % |
| 総資産 | 1,491億48百万円 | ▲1.9 % |
| 純資産 | 1,068億10百万円 | +2 % |
| 自己資本比率 | 71.6 % | +2.9 ポイント |
減収減益となった主因は鋼材価格の下落と電気炉設備のトラブルによる生産減である。2023年4月、約半年間にわたり主力電気炉がベアリング故障で大幅減産となり、収益悪化は15~16億円に達したnakayama-steel.co.jp。しかし商社や物流機能を活かして外部調達や納期調整を行い、顧客への影響を最小限に抑えたnakayama-steel.co.jp。
会社は資産構成が堅固で、2025年3月期の自己資本比率は71.6 %と鉄鋼業界でも高水準であるfinance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp。キャッシュ・フローは営業活動で73億46百万円の資金を創出し、投資活動(電気炉などの設備投資)が▲46億83百万円、財務活動が▲38億04百万円となったfinance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp。期末の現預金残高は153億26百万円で潤沢であるfinance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp。
株式指標と配当
バフェット・コードによる2025年9月22日現在の主要指標は以下の通り。株価は665円、時価総額は約360億円である。PERは 8.6倍、PBRは 0.3倍、配当利回り(会社予想)は 3.6 % であり、自己資本比率は **71.8 %**と高いbuffett-code.com。ROEは 5.3 %、ROAは 3.6 % とやや低水準ながら、EV/EBITDAは2.9倍とバリュエーションは割安感がある
buffett-code.com。配当金は年間24円(予想)で配当性向は38.1 %
buffett-code.com。
Simply Wall Stの解説によると、同社は過去1年間の配当総額が利益の約35 %である一方、フリー・キャッシュ・フローに対しては165 %と高く、キャッシュフローで配当を十分に賄えていないことが指摘されているsimplywall.st。また、1株当たり利益は過去5年間で年率17 %成長し、配当も過去8年間で平均約30 %増加しているものの、キャッシュフローへの依存度から「配当維持にはリスクがある」と分析しているsimplywall.st。
成長戦略・長期ビジョン
同社は2019年に創業100周年を迎え、2030年に向けた長期ビジョンを策定した。電気炉メーカーとしての強みを活かし、持続可能な社会の実現に貢献することを掲げているnakayama-steel.co.jp。重点方針は次の5点であるnakayama-steel.co.jp:
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“中山らしさ”の追求とグループ一体での付加価値向上(連結収益の最大化)。
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中部鋼鈑との業務提携推進—電気炉材や厚板の相互供給を強化し、資源調達や生産を効率化する。
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カーボンニュートラル・循環型社会への対応強化—電気炉の環境優位性を活かし、CO₂排出量を2013年度比46 %削減する目標を掲げているnakayama-steel.co.jp。
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経営基盤の強化—設備更新による生産効率向上と人材育成、リスク管理を進める。
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ステークホルダーへの価値提供—株主・顧客・従業員・地域社会への貢献を重視する。
2022~2024年度の中期経営計画では、建材事業本部の設立により加工分野の競争力を強化し、高付加価値製品の拡販を進めているnakayama-steel.co.jp。全国に拠点を持つ中山通商・三星商事を活用した地域密着営業やECサイト「PRO資材便」の展開など販売体制を拡大しているnakayama-steel.co.jp。生産面では電気炉の月産5万トン(年間60万トン)体制の確立を目標とし、新電気炉工場建設による生産能力増強を進めているnakayama-steel.co.jp。しかし設備トラブルにより2023年度の目標達成は未達となったnakayama-steel.co.jp。
強み・投資魅力
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環境優位性の高い電気炉技術:国内に蓄積されたスクラップを電気炉でリサイクルし、CO₂排出量が少ない鋼材を製造する。カーボンニュートラルが求められる時代に適した製造プロセスであるnakayama-steel.co.jp。
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堅固な財務体質:自己資本比率が70 %台と非常に高く、有利子負債も少ない。2025年3月期の純資産は1,068億円で手元現金も潤沢finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp。PER 8.6倍・PBR 0.3倍と株価指標に割安感がある
buffett-code.com。
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高い配当利回り:2025年9月22日時点の予想配当利回りは約3.6 %
buffett-code.com。過去数年間は連続増配傾向にあり、1株当たり利益も年率17 %で伸びているsimplywall.st。
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新電気炉による成長余地:長期ビジョンの中核である新電気炉工場建設が完成すれば、鉄源自給率が向上し、利益率改善とCO₂排出削減が期待されるnakayama-steel.co.jp。国内建築用軽量C形鋼ではトップシェアを持ち、加工事業強化による付加価値向上が見込まれるnakayama-steel.co.jp。
リスク・課題
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景気・鋼材市況に左右される:主力の鉄鋼事業は建設・自動車向け需要や鋼材価格の動向に大きく影響される。中国経済の減速による輸出需要減や国内建設市場の縮小により市況は不透明nakayama-steel.co.jp。
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原料価格の変動:電炉用スクラップや電力価格の上昇は利益率を圧迫する。2024年度も原料価格高騰によるスプレッド縮小が予想されているnakayama-steel.co.jp。
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設備トラブル・投資負担:2023年度には電気炉の故障で半年間減産し、15〜16億円の利益減となったnakayama-steel.co.jp。新電気炉建設は巨額の設備投資を伴うため、資金繰りと稼働の遅延リスクがある。
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配当の持続性:同社の配当性向は利益に対しては低いが、フリー・キャッシュ・フローを上回る水準であり、Simply Wall Stは配当維持リスクを指摘しているsimplywall.st。
投資対象としての評価
中山製鋼所は電気炉による環境優位性と堅実な財務基盤を持つ老舗鉄鋼メーカーであり、2025年9月現在の株価はPER 8.6倍・PBR 0.3倍と割安感があるbuffett-code.com。自己資本比率は約72 %と高く、財務的な余裕は大きい。また建材事業でトップシェア製品を持ち、新電気炉プロジェクトを通じて生産能力増強とCO₂削減を図るなど長期的な成長戦略を進めているnakayama-steel.co.jp。
一方で、収益の大部分が国内鋼材需要に依存しており市況変動の影響を受けやすい。2023年度の電気炉故障が示すように、大型設備のトラブルは業績に大きな影響を与える。また配当がキャッシュフローに対して高水準である点や、新電気炉建設に伴う投資負担もリスクとなるnakayama-steel.co.jpsimplywall.st。
以上を踏まえると、安定した財務体質を背景に中長期で配当を狙う投資家にとっては魅力的な側面があるが、鋼材市況や設備投資リスクに敏感である点を理解した上で検討すべき銘柄と言える。環境対応型電炉の競争力や国内建築需要の動向、今後の設備投資の進捗とキャッシュフローを注視しながら投資判断を行うことが重要である。
今後の予想ネットキャッシュ比率はどのようになっていきますか ネットキャッシュとは「流動資産+投資有価証券×70%-負債」であり、ネットキャッシュ比率はネットキャッシュを時価総額で割った数値です
ネットキャッシュ比率(=〔流動資産 + 投資有価証券 × 70% - 負債〕 ÷ 時価総額)を将来予想するには、いくつか仮定を置く必要があります。公開情報から現在の水準をおさえ、仮定ベースで「上昇するか低下するか」の見通しを立ててみます。 以下、ステップを追って考察します。現時点の数値の確認(基準点)
まず、現在(直近)の貸借対照表上の資産・負債の状況・時価総額を確認します。| 項目 | 数値・出典 | 備考 |
|---|---|---|
| 投資有価証券 | 3,150 百万円 等(過去期) (バフェットコード) | 決算短信や四半期報告書で確認可能 |
| 流動資産 | 四半期報告書で 2023年6月期で流動資産合計 96,650 百万円 等 (EDINET) | ただし、最新期までの変動を含める必要あり |
| 負債 | 四半期報告書で 2023年6月期 負債合計 49,411 百万円 等 (EDINET) | 有利子負債部分は別途開示 |
| 有利子負債合計 | 10,276 百万円 等 (バフェットコード) | ただしこれが全部「負債」に含まれているわけではない |
| 時価総額 | 約 420 億円(=42,000 百万円) 程度 (IR BANK) | 株価 × 発行済株式数で算出 |
このときネットキャッシュ比率 = 52,205 ÷ 42,000 = 約 1.24 (124 %)。 このように仮定すれば、現時点でネットキャッシュ比率が 100 % を超えているという水準が想定され得ます。ただし、これはあくまで illustrative な仮定です。 実際には、流動資産(売掛金・棚卸資産等)の回転、短期負債の変動、投資有価証券の評価変動、株価の変動など多くの変数があります。
将来予想における主な変数と仮定
ネットキャッシュ比率の将来動向を予想する上で、以下の要素が鍵になります:- 流動資産の増減 売上拡大・在庫の拡大・売掛金の増加などにより流動資産が増える可能性。逆に在庫回転率低下や売上停滞なら減る可能性。
- 投資有価証券の変動と評価差益/差損 有価証券の保有額を維持・拡充、または売却や評価損の発生があるかどうか。 投資有価証券 × 70% を使うので、その変動の寄与は限定的ですが無視はできません。
- 負債の増減 特に短期負債や支払手形・買掛金、借入金の返済や借換え、借入余力の活用など。 負債が減少すればネットキャッシュ比率はすんなり上昇する方向。
- 時価総額の変動 株価が上昇すれば分母が大きくなり、ネットキャッシュ比率は低下方向。逆に株価低迷なら比率上昇方向。 特に時価総額の変動は比率を大きく揺さぶる要素です。
- 事業投資(設備投資・電気炉投資など) 将来予想で中山製鋼所は「新電気炉投資」や製造能力拡張などを計画しており、これらの投資が財務に一定のキャッシュ支出を伴うことが見込まれます。 (Yahoo!ファイナンス)
- 収益性とキャッシュ創出力 営業キャッシュ・フローの改善が続けば、ネットキャッシュは自力で拡充できる余地がある。
仮定シナリオをおいた将来予想
以下、ざっとモデル的なシナリオを置いて、ネットキャッシュ比率の傾向を描いてみます(あくまで仮説的なシミュレーション)。| シナリオ | 流動資産 増減 | 負債 増減 | 投資有価証券 保持/売却 | 株価・時価総額変化 | 結果(ネットキャッシュ比率傾向) |
|---|---|---|---|---|---|
| 慎重シナリオ | 流動資産横ばい | 負債軽微に減少 | 有価証券維持 | 株価上昇(時価総額増加) | 比率 やや低下または横ばい |
| 成長投資シナリオ | 流動資産増加(売上拡大等) | 負債も拡大(設備投資借入) | 有価証券売却または維持 | 株価上昇 | 比率 横ばい~やや低下 |
| 改善シナリオ | 流動資産適度拡大 | 負債削減進展 | 有価証券売却や運用増加 | 株価安定またはゆるやか上昇 | 比率 上昇傾向 |
結論・見通し(予想)
私の仮定および公開情報をもとにすると、次のような見通しが妥当だと思われます:- 中山製鋼所は現在、かなり余裕のあるキャッシュポジションを保っている可能性が高い。
- ただし、今後の設備投資(電気炉など)や事業拡張のための借入があると、ネットキャッシュは一時的に減少する可能性がある。
- その一方で、負債削減やキャッシュ創出力の改善が進めば、ネットキャッシュ比率は中長期で 緩やかに上昇する余地 がある。
- もっとも、株価(時価総額)の変動が比率に大きな影響を与えるため、株価が急上昇すれば相対的に比率は低下するリスクもある。
過去の利益率を教えて下さい
了解です。直近2期の「利益率(営業・経常・当期純利益)」と資本効率(ROE/ROA)をまとめます。数値は会社の決算短信からの公式値です。| 期(連結) | 営業利益率 | 経常利益率 | 当期純利益率 | ROE(自己資本当期純利益率) | ROA(総資産経常利益率) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 5.0% | 5.4% | 3.4% | 5.4% | 5.4% (Yahoo!ファイナンス) |
| 2024年3月期 | 6.7% | 8.1% | 4.8% | 8.8% | 8.1% (Yahoo!ファイナンス) |
- 上表のROE/ROAの定義は会社開示の定義(ROE=親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本、ROA=経常利益/総資産)に準拠しています。10年分のROE/ROAの推移は同社サイトの「10年間の連結財務ハイライト」にまとまっています。(中山製鋼所)
企業にとって株の配当と、銀行に支払う利子ではどちらが負担が大きいですか
良い質問です。企業にとって「配当」と「利子(支払利息)」はどちらもキャッシュアウトですが、性質や負担の意味合いが大きく異なります。整理すると以下のようになります。1. 株主配当
- 性質:利益処分として株主に支払う。法律上は義務ではなく、会社の経営判断で支払う/減らす/ゼロにすることができる。
- 費用計上:損益計算書(PL)には費用としては出てこず、純利益から分配される。
- キャッシュフロー:営業・投資活動後に残った資金を株主に還元する形なので、資金繰りが苦しくなれば簡単に減配や無配にできる。
- 株価への影響:安定的な配当は株主にとって安心材料だが、企業にとっては「期待に応えるべき」という心理的な負担になる。
2. 銀行への支払利息
- 性質:契約に基づき必ず支払わなければならない「固定的な費用」。返済が滞れば信用不安や倒産リスクにつながる。
- 費用計上:損益計算書で「営業外費用」として利息が計上され、利益を直接減らす。
- キャッシュフロー:固定的に毎期出ていくため、資金繰りの負担が大きい。借入残高が大きければリスクも高い。
- 信用格付け・金利:返済能力が弱いと金利が上昇し、さらに負担が増す悪循環に陥る可能性がある。
3. 負担感の比較
- 短期的な“重さ”: 銀行への支払利息のほうが圧倒的に重い。契約で必須、利益が出なくても払わざるを得ないため。
- 柔軟性の違い: 配当は「任意」、利息は「強制」。したがって財務的には利息の方がリスク要因。
- 株主との関係: ただし、長期的には「配当を減らす=株主の信頼を損なう」ため、経営判断としては配当維持も重いプレッシャーになる。
✅ まとめ
- 法的・財務的に厳格に負担となるのは利子(支払利息)。返済不能なら即信用不安につながるため。
- 戦略的・株主対応としての負担感は配当。企業が配当を維持するために内部留保や投資を犠牲にするケースもある。
ご希望なら、中山製鋼所について「直近の支払利息総額」と「株主配当総額」を比較して、実際にどちらのキャッシュアウトが大きいか具体的に計算してみましょうか?




