食虫植物の鉢を3Dプリントで作る:Meshy AIとCADの役割分担

モウセンゴケ(Drosera capensis)用のオリジナル鉢を3Dプリントで作ろうとした記録です。結論から言うと、造形はAI、寸法はCADという分担に落ち着きました。そこに至るまでに何度か失敗しているので、その過程も含めて書きます。

前提:この植物に必要な鉢の条件

capensisは直根性で、根が縦に深く伸びます。一方で腰水栽培では、用土の毛細管現象による吸い上げが10〜15cmで頭打ちになります。

つまり「根は深い鉢を欲しがるが、水の吸い上げには高さの限界がある」という綱引きがあり、用土深100〜130mmあたりが実用解になります。細くて深い形が正解、というのが出発点でした。

失敗1:CADだけで作ると、正しいがダサい

まずFusion 360で一から設計しました。口径φ75、高さ120mm、底面に吸水スリット6本、腰水トレー内で鉢底を浮かせるスタンドオフ脚3点。寸法要件はすべて満たしています。

装飾として、モウセンゴケの粘液の露をモチーフにした「露珠」を44粒配置しました。

出来上がったものを見て、正直にダサいと思いました。

原因は明確でした。等間隔のグリッドに同じ大きさの粒を並べたので、露のきらめきではなくゴルフボールのディンプルに見えたのです。自然界の結露は絶対に均等配置になりません。粒が小さく散らばっていたことも、「ブツブツ」の印象に拍車をかけていました。

寸法を満たすことと、見て魅力的なことは別問題です。

失敗2:Meshy AIで作ると、かっこいいが入らない

そこで生成AIのMeshyで造形を作りました。聖杯型、アンモナイト、カタツムリと試しましたが、どれも手作業では出てこない有機的な形になります。

ところが寸法が合いません。最初の聖杯型は外径135mm×高さ90mmで、内径125mm。狙いは内径85mmでした。

ここで最初の罠にはまります。 均等縮小で内径85mmに合わせると、高さが61mm、内寸深さ48mmまで縮んでしまい、今度は内鉢が22mm飛び出す。縦横比そのものが要件と合っていないのです。

Meshyは「それらしい形」を作る道具であって、寸法が制約条件として入りません。ここがCADとの決定的な違いです。

突破口:XYとZを別々にスケールする

解決は単純でした。軸ごとに違う倍率をかけるだけです。

メッシュは寸法を後から編集できませんが、軸ごとの拡縮は自由にできます。XY×0.72、Z×1.35とすれば、内径と深さを独立に合わせられます。均等縮小しか試していなかったのが、詰まっていた原因でした。

もうひとつ効いたのが、角型ポットなら対角99mmではなく72mm幅でよいという気づきです。丸穴で受けるなら対角を通さなければなりませんが、角穴を彫るなら辺の長さで足ります。これだけで必要な拡大率が大きく下がり、外鉢のサイズとフィラメント消費を抑えられました。

失敗3:メッシュが閉じていない

スケールしたデータをFusionに入れたところ、「メッシュが閉じていて正しい方向に配置され、正の体積を持っていることを確認してください」というエラーで弾かれました。

検査すると、開いた縁が279本、3枚以上の面が共有する不正なエッジが438本ありました。Meshy出力の時点で存在していた欠陥です。さらに読み込み時に頂点が分裂し、メッシュが実質バラバラになっていました。

位置ベースで頂点を結合し直し、主要部だけ残して穴を埋めることで閉じたソリッドになりました。Meshy出力をCADに入れる前に、修復工程を挟むのは必須だと考えたほうがよさそうです。

失敗4:掛け算では埋まらない

アンモナイト形状で、渦の中心に向かってへこむ部分を外側まで膨らませたい、という要望がありました。

Y座標を掛け算で拡大する処理をかけたところ、まったく膨らみませんでした。

理由は考えれば当たり前で、へこみが中心面(Y=0)まで達する深い漏斗状だったからです。Y=0の点は何倍しても0のままです。掛け算では穴は埋まりません。

次に楕円体のソリッドを合体させたところ、今度は数値上は埋まりました。しかし見た目は、渦の中心に無関係な球が生えた状態で、造形として破綻していました。

さらにvoxel化してスライスごとに内部を埋める方法も試しましたが、これは渦の彫刻を全部つぶしてしまいました。凹んだ溝も「埋めるべき穴」と判定されるためです。

結局この形状は諦めました。アンモナイトの中心のくぼみは貝の構造そのものなので、そこを埋めるという方向自体に無理がありました。

成功:中空シェルなら、上を開けるだけでいい

最終的にうまくいったのはカタツムリの造形です。

測ってみると、このモデルは元から壁2〜3mmの中空シェルでした。ということは、埋めて彫り直す必要はありません。上を開けるだけで、既存の空洞がそのまま鉢になります

1.8倍にスケールし、上面に44mm角→30mm角のテーパー開口をブーリアンで切り、底にØ13mmの排水穴を追加しました。

  • 外形 180 × 86 × 137mm
  • 開口 44mm角、空洞深さ約110mm
  • 材料 約53g

表面の彫刻は一切損なわれていません。そして幅44mm × 深さ110mmという細くて深い形は、冒頭に挙げた直根性の条件にそのまま合致していました。

得られた教訓

Meshyは造形の発想出し、CADと数値処理は寸法の確定。 どちらか一方では成立しません。

均等縮小で詰まったら、軸ごとのスケールを疑う。 縦横比が要件と合っていないだけのことが多いです。

生成メッシュは壊れている前提で扱う。 穴、非多様体エッジ、頂点の分裂。修復工程を標準の手順に組み込むべきです。

形状の性質を先に測る。 中実か中空か、どこに空洞があるか。これを測らずに加工方法を決めたことが、失敗3と4の共通の原因でした。

次にMeshyで生成するときの指示。 内寸(開口何mm以上、深さ何mm以上)を明示し、「内側は単純な筒」「正面からも上からも丸みのある立体」と条件を足します。平たい造形は鉢として容量を稼げません。

今回いちばん楽だったこと

モデルの微修正をAIに任せられたことです。「中心のへこみを外側まで膨らませたい」「もっと大胆にかっこよく」といった曖昧な要望から、実際に処理を書いて実行し、数値で検証するところまで回せました。

もっとも、最初のアンモナイトのようにどうやっても成立しない形もありました。そこで粘らずに別の造形へ切り替えられたのは、試行のコストが低かったからです。従来なら1つの形を手作業で直し続けていたはずで、切り替えという判断自体が生まれにくかったと思います。

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