空気圧設備を扱っていたとき、流路途中に設置されたソレノイド弁付近から、通常の排気音とは違う「共鳴しているような音」が発生したことがある。
最初はソレノイドそのものの異常を疑った。ソレノイド弁で「ブーン」といううなり音が発生する場合、電圧不足などによって電磁石の吸引力が不足し、鉄心が完全に吸着していない可能性がある。そのため、まずソレノイドに印加されている電圧が正常かどうかを確認した。
しかし、今回の音はソレノイドの通電による単純なうなり音というより、空気が流れているときに強く発生していた。そこで、空気の流れによって発生する共鳴ではないかと考えた。
閉止した分岐配管を接続すると音が消えた
試しに、主配管につながっている閉止された分岐回路を接続したところ、それまで発生していた共鳴音がほぼ消えた。分岐の先端は閉じているため、空気がそこから外へ排出されているわけではない。
当時は「音を分岐側へ逃がしたことで静かになった」と考えていたが、後から考えると、もう少し興味深い現象だった可能性がある。
空気圧配管も「音響系」になる
空気圧回路では、通常は圧力や流量に注目する。しかし空気は圧縮性を持つため、配管内部では圧力波が伝わっている。
ソレノイド弁の狭い流路や絞り部分を空気が高速で通過すると、圧力脈動が発生することがある。その脈動の周波数と、配管の長さや容積によって決まる固有振動数が近くなると、圧力波が増幅され、笛のような音や「ウォーン」「ブーン」といった共鳴音として聞こえることがある。
つまり、空気圧配管は単に空気を運ぶ管ではなく、条件によっては楽器の管と似た振る舞いをする。
なぜ閉止分岐をつなぐと音が消えたのか
今回、閉止した分岐配管を主回路につないだことで、配管全体の条件が変化した。
考えられる理由の一つは、配管系の固有振動数が変化したことだ。主配管だけだった状態から分岐配管が加わると、空気が入っている容積や圧力波が反射する位置が変わる。その結果、
「圧力脈動の周波数 ≒ 配管系の固有振動数」
となっていた条件が崩れ、共鳴しなくなった可能性がある。
もう一つ考えられるのが、閉止分岐が「サイドブランチ共鳴器」のように作用した可能性である。閉止された管では、特定の周波数の圧力波に対して大きな音響効果が発生する。条件によっては分岐側で発生する圧力波が主配管側の圧力脈動を打ち消し、特定周波数の音を小さくする。単純な閉止管では、管長が波長のおよそ1/4となる付近が一つの代表的な条件になる。
したがって今回の現象は、単純に「音を逃がした」というより、
「分岐配管を追加したことで配管系の音響特性が変わり、共鳴点から外れた、あるいは反共振によって圧力脈動が抑えられた」
と考える方が適切そうだ。
現場での切り分けに使えそうな方法
似たような音が発生した場合には、次のような確認が役立つ。
まず、空気を流していない状態でも音が出るか確認する。通電しているだけで「ブーン」と鳴るのであれば、ソレノイドの電圧不足、鉄心の吸着不良、異物など電磁部を疑う。一方、空気が流れたときだけ音が発生するのであれば、流体音や配管共鳴の可能性が高くなる。
その場合は、供給圧力やスピードコントローラの開度を少し変えてみる。わずかな条件変更で急に音が消えるのであれば、共鳴現象である可能性はさらに高い。
さらに、仮設ホースなどを使って配管長や分岐容積を変え、音が大きく変化するか確認する方法も考えられる。
「圧力と流量」だけでは説明できない現象
空気圧回路を扱うときは、圧力、流量、シリンダ速度、ソレノイド弁の動作などに目が向きやすい。しかし今回の経験から、配管の長さや容積、分岐の有無といった一見あまり重要ではなさそうな条件が、音響的には大きな意味を持つ場合があることが分かった。
閉止分岐を接続しただけで共鳴音が消えた経験は、
「空気圧配管の中では、空気は単に流れているだけではなく、圧力波としても振る舞っている」
ということを実感できた事例だった。
なお、閉止分岐を追加すれば必ず共鳴がなくなるわけではない。逆に条件によっては新しい共鳴を作る可能性もある。また、恒久対策として不要なデッドレグを残す場合は、ドレンの滞留などにも注意が必要である。
そのため実際の設備では、原因を切り分けたうえで、配管長の変更、配管径の変更、サイレンサ、圧力調整、適切な消音器・共鳴器などを検討するのが望ましい。
ただ、「配管を少し変えただけで音が消えた」という現象を経験したとき、その背景には音響・振動という別の物理が隠れているかもしれない。
機械保全では、こうした現場での小さな違和感を記録しておくことが、次のトラブル解決につながる。

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