機械保全士の学科試験の勉強をしていたら、ソリッドステートリレー(SSR)に関する問題に出くわした。教科書的には「無接点だから機械式リレーより長寿命」「高速・高頻度のスイッチングに向く」とさらっと書いてあるだけなのだが、これを読んで、過去にSSRを組み込んだ装置を作ったときに遭遇した2つのトラブルを思い出した。
1つは、想像していたより大きかった発熱。もう1つは、OFFにしたはずなのに出力端子に電圧が残っていて、外部のカウンタが正しく動作しなかった現象だ。どちらも当時は「なぜ?」となったが、SSRの内部構造を理解すると筋の通った話だった。この記事では、その実体験を軸にSSRの特性と注意点を整理する。
SSRとは何か(簡単な整理)
SSR(Solid State Relay)は、電磁石で接点を物理的に動かす機械式リレーと違い、トライアック・サイリスタ・MOSFETなどの半導体スイッチング素子と、入出力を絶縁するフォトカプラを組み合わせて負荷をON/OFFする部品だ。可動部・接点がないため、機械式リレーと比べると次のような特徴を持つ。
| 項目 | SSR | 電磁リレー |
|---|---|---|
| スイッチング方式 | 半導体 | 機械接点 |
| 動作音 | ほぼ無音 | カチッと鳴る |
| 接点摩耗 | なし | あり |
| 高頻度ON/OFF | 得意 | 苦手 |
| ON時発熱 | 大きめ | 比較的小さい |
| OFF時漏れ電流 | あり(方式・製品による) | ほぼなし |
この記事全体を通して言いたいことを一文でまとめると、次のようになる。
SSRは接点が摩耗しない代わりに、ON時には熱が出て、OFF時にも完全には切れない。
以下、この「熱」と「切れない」を、実際に経験したトラブルに沿って見ていく。
1. 想像以上だった発熱
SSRには機械式リレーのような接点の接触抵抗がない。その代わり、ONしている間も内部の半導体素子には電圧降下(トライアック出力なら1V前後、素子や電流によって変わる)が残り続ける。この電圧降下と負荷電流の積が、そのまま熱として消費される。ざっくりとした見積もりとしては、
発熱量 ≒ ON時電圧降下 × 負荷電流
という式で考えられる。仮にON時電圧降下が1.5V、負荷電流が10Aなら、
1.5V × 10A = 15W
程度の発熱になる。数字だけ見ると大したことがなさそうに感じるかもしれないが、これは常時ONで流れ続ける熱であり、しかも発熱源がSSRという小さな部品1点に集中している。
実際にこの規模の装置を組んだときも、動作させてみるとSSR本体がかなり熱くなった。「無接点だから機械式より発熱は小さいはずだ」という先入観があったので最初は少し戸惑ったが、上の式で計算してみると、確かにそれなりの電力が熱として出ていることに納得した。
最終的には、SSR単体の放熱フィンだけでは追いつかなかったため、SSRと金属筐体との接触面積を大きく取り、熱伝導グリスを挟んで密着させることで、筐体そのものをヒートシンク代わりに使う形で放熱した。ポイントを簡単に整理すると、
- 熱の逃げ道は直列:半導体接合部→パッケージ→取付面→放熱体、という経路で熱抵抗が積み重なる。どこか1か所でもボトルネックがあると全体の放熱効率が落ちる。
- 熱伝導グリスの役割:グリス自体の熱伝導率が特別高いわけではなく、取付面の微小な凹凸にできる空気層(熱を伝えにくい)を埋めて接触熱抵抗を下げるためのもの。塗りすぎても厚みが増して逆効果になる。
- 取付面積と平滑性:接触面積が大きいほど、また平滑であるほど熱が逃げやすい。金属筐体を放熱体として使う場合は、筐体内の他の発熱部品や周囲温度、筐体の密閉度合いも合わせて考える必要がある。
この経験から、「SSRは接点がないから扱いやすい部品」というだけでなく、「大電流を流す場合は熱設計まで含めて考えなければならない部品」だと実感した。
2. OFFなのに電圧が残り、カウンタが正常に動かなかった
もう一つ、印象に残っているトラブルがある。SSRをON/OFFさせて、その回数を外部のカウンタで数えようとしたときのことだ。
機械式リレーであれば、OFFにすると接点が物理的に開くので、ほぼ完全に電流が遮断される。ところがSSRは半導体なので、OFF状態でも完全な開放にはならず、微小な漏れ電流が流れることがある。特にAC用SSR(トライアック出力など)では、半導体素子そのものだけでなく、ノイズ対策(dv/dt対策)として内蔵されているスナバ回路(コンデンサと抵抗の直列回路)を通じても、ごくわずかな電流が流れる経路が生まれる。
このとき起きていたのは、次のような流れだったと理解している。
SSR OFF
↓
微小な漏れ電流(半導体本体+スナバ回路経由)
↓
入力インピーダンスの高いカウンタの入力端子へ流れ込む
↓
入力端子側で電圧として現れる(V = I × R、Rが大きいほど電圧は大きく見える)
↓
カウンタがOFF(Low)と認識できない
↓
次にONしても電圧の変化として認識されず、カウントされない
当時テスターで出力端子を測ると、OFFにしているはずなのに100V近い電圧が表示されて戸惑った。ただし、これは「実際にその電圧で仕事ができる」という意味ではない。テスター(や高インピーダンスのカウンタ入力)は流れ込む電流がごくわずかでも、内部抵抗が高いために電圧として大きく表示・検出してしまう。漏れ電流そのものの電流容量はごく小さく、電球を光らせたりモーターを回したりできるような電力は持っていない。しかし、電圧の有無だけを見て動作するデジタル入力(PLC入力・カウンタ入力など)にとっては、この「見かけの電圧」が誤動作の原因になり得る。
対策としてよく使われるのが、負荷に並列に抵抗(ブリーダ抵抗)を入れて、漏れ電流を積極的に逃がしてやる方法だ。漏れ電流の逃げ道を用意することで、OFF時の端子電圧をしっかり0V付近まで落とし、入力機器側が正しくOFFと認識できるようにする。
ただし、この抵抗値はいくつという固定値で決められるものではない。使用しているSSRの漏れ電流の仕様、接続する入力機器(PLC・カウンタなど)のインピーダンスや動作しきい値、電源電圧といった条件から、そのつど設計する必要がある。抵抗値を小さくしすぎれば無駄な電力消費や発熱が増えるし、大きすぎれば漏れ電流を十分に逃がしきれず、誤動作が残ってしまう。
機械保全士の勉強とのつながり
教科書や試験問題では、
- ソリッドステートリレーは無接点である
- 機械式リレーより寿命が長い
- 高速・高頻度のスイッチングに向いている
とまとめられている。これはこれで正しいのだが、これだけを覚えても、実際の設備で起きる問題には対応できない。現場で必要なのは、なぜSSRが熱くなるのか、OFFなのになぜ電圧が残るのか、なぜそれがPLCやカウンタの誤動作につながるのか、そしてどういう場面で機械式リレーとSSRを使い分けるべきなのか、というところまでの理解だと思う。
なお、ここで書いたOFF時の漏れ電流の大きさや、実際に誤動作が起きるかどうかは、SSRの方式(AC出力かDC出力か、スナバ回路の有無)や製品、接続する入力機器の仕様によって変わる。すべてのSSRで同じ程度の漏れ電流が出るわけではないし、対策の要否も回路条件次第になる。
機械保全士の勉強をしていると、こうして昔経験したトラブルが理論としてつながってくる瞬間があって、地味に面白い。

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