十数年使ったNC旋盤の起動ボタンが破れてきた
高松機械工業(TAKAMAZ)のNC旋盤X-10は、うちで長年使っている機械のひとつです。操作盤には緑の「起動」、赤の「一時停止」、赤い大型の「EMERGENCY STOP」の押しボタンが並んでいますが、あるとき緑の「起動」ボタンの表面を見ると、ゴム状の防じんカバーに亀裂が入り、中央部分が破れているのに気づきました。
十数年分の油や切削環境にさらされ続けてきたゴムなので、硬化して割れるのは自然な経過です。最初は「スイッチごと交換しないとまずいか」と思いましたが、よく確認すると壊れていたのはこのゴム部分だけでした。
スイッチ本体まで交換する必要はあるのか
まず実際にボタンを何度か押してみました。押した感触に違和感はなく、ボタンはきちんと戻ってくるし、押せば機械は正常に起動します。接点不良らしき挙動もありません。壊れているのは見た目の防じんカバーだけで、スイッチとしての機能は生きている状態でした。
古い工作機械の操作盤を見ると、ボタンのゴム部分までスイッチ本体と一体の部品に見えます。しかし実際には、スイッチ本体・接点ユニット・防じんキャップが別部品になっている場合があります。であれば、まずスイッチ本体を丸ごと交換する前に、部品構成を確認する価値があると考えました。
操作盤の裏側を確認する
表側を見ているだけでは型式が分かりません。そこで操作盤の裏側を開けて、押しボタンスイッチ本体の刻印を確認しました。
出てきた表示は「AH25-F」「Fuji Electric」。富士電機の旧AH25シリーズの押しボタンスイッチが使われていることが分かりました。緑の起動ボタンについては、スイッチ本体としては「AH25-FG10」系統に相当するものです。
表から見ただけでは分からなかったメーカーとシリーズが、裏側の刻印で判明した形です。古い機械の部品を調べるときは、表側の見た目だけで判断せず、裏側の型式表示を確認するのが結局いちばん早いというのは、今回もあらためて実感しました。
ゴムカバーは単品で購入できた
AH25-Fシリーズを調べると、緑色・耐油形の防じんキャップとして「富士電機 AHX047」という部品が該当することが分かりました。「防じんキャップ」「防じんカバー」「ゴムカバー」と呼び方はいろいろありますが、いずれも同じものを指しています。
今回のX-10で必要だったのは、このAHX047一点だけです。スイッチ本体や接点ユニットはまだ正常に機能しているので、交換対象はゴムキャップだけで十分という判断になりました。価格は販売店によって差がありますが、いずれにしても数百円程度で入手できる補修部品です。
数百円の部品で延命できる
スイッチ本体・接点ユニット・防じんキャップという構成のうち、劣化していたのは防じんキャップだけでした。スイッチ一式を交換すれば当然コストも作業量も増えますが、キャップ単体の交換で済むなら、部品代は数百円、作業もキャップを外して新しいものを取り付けるだけで完結します。
今回のようにキャップだけの交換で済む場合は、配線に触れずに作業できる可能性があります。ただし操作盤内部を開けて確認・作業する以上、念のため主電源を切り、必要に応じて電源遮断・無電圧確認を行ってから作業するのが基本です。配線そのものに触れる作業は、知識のある担当者が行うべきところです。実際の取り付け方法は、機種と部品仕様を確認したうえで進めています。
古い工作機械では「壊れた場所」を細かく見る
NC旋盤は20年以上使われることも珍しくありません。機械本体や主要なユニットがまだ十分使える状態でも、ゴム、樹脂、パッキン、スイッチカバー、ケーブル被覆、ホース、シール材といった部分は、機械本体より先に経年劣化します。
こうした劣化を見つけたときに、「機械全体、あるいはユニット全体の故障」として一括りに考えるのではなく、
- どこまでが消耗品で、どこからが機能部品なのか
- 消耗している部分だけを単品で交換できないか
- 現在の後継部品や代替部品が出ていないか
を切り分けて調べると、古い機械を低コストで延命できる場合があります。今回のX-10もその一例で、富士電機のAH25シリーズのように、押しボタン本体とは別に補修用のキャップやカバーが用意されているケースは珍しくありません。オムロン、IDEC、三菱電機などのFA機器メーカーでも同様に、本体とは別に補修部品が用意されていることがあるので、型式さえ特定できれば同じ考え方で調べられます。
まとめ
- 高松機械X-10の緑色「起動」ボタンの防じんカバーが経年劣化で破れた
- スイッチ本体・接点は正常で、押した感触にも起動動作にも異常なし
- 操作盤裏側の刻印を確認し、富士電機AH25-Fシリーズと判明した
- 該当する緑色・耐油形の防じんキャップは「AHX047」
- キャップ単体なら数百円程度で交換でき、配線に触れずに済む可能性がある
- 古い工作機械ほど、丸ごと交換する前に「どの部品が本当に壊れているか」を切り分けて調べる価値がある
見た目が傷んでいると、つい部品全体を交換したくなりますが、操作盤の裏を開けて型式を確認するひと手間で、数百円の補修部品だけで済むこともあります。古い機械を長く使ううえでは、こうした地味な切り分けの積み重ねが効いてくると感じています。

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