はい。解きます。

問題の要点

  • 断熱された全体の系(ドアを開けて熱交換が起きた後閉じる)で、高温側(1000 K)から低温側(400 K)へ 10 kJ の熱が移動した。
  • 各物体の温度は熱容量が十分大きいため変化しない(定温過程とみなせる)。
  • 全系のエントロピー変化を求めよ。

解法

熱が高温側から低温側へ移るときのエントロピー変化は:

ΔS=QcoldTcold+QhotThot \Delta S = \frac{Q_{\text{cold}}}{T_{\text{cold}}} + \frac{Q_{\text{hot}}}{T_{\text{hot}}}

 

ここで

Q=10,000 J Q=10{,}000\ \mathrm{J}

が高温→低温に移動した量なので、

  • 低温側(400K)に入る熱:
    Qcold=+10,000 J Q_{\text{cold}} = +10{,}000\ \mathrm{J}
     
  • 高温側(1000K)から出る熱:
    Qhot=10,000 J Q_{\text{hot}} = -10{,}000\ \mathrm{J}
     

よって:

ΔS=10,000400+10,0001000=2510=15 J/K \Delta S = \frac{10{,}000}{400} + \frac{-10{,}000}{1000} = 25 – 10 = 15\ \mathrm{J/K}

 

答え

15 J/K

 

参考:技術士第一次試験-令和2年度機械部門Ⅲ-24解答例 | 技術士のたまご

エントロピーとは何ですか?

もちろんです。エントロピーの概念を直感的・定量的に分けて説明します。


1. 直感的なイメージ

エントロピーは「系の取りうる状態の数の多さ」や「広がりや乱雑さの度合い」を測る量です。たとえば:

  • 熱が高温から低温に自然に流れるのは、エントロピー全体が増える方向だから(自然な進行方向=時間の矢)。
  • 粒子が一か所に集まっているよりも、ばらけている方が取りうる内部状態が多く、エントロピーが大きい。
  • 「秩序」→「無秩序」に見える変化は、マクロでエントロピーが増える現象と関係がありますが、「単なる乱雑さ」だけではなく、取り得る微視的状態の数の増加が根底にあります。

2. 熱力学的定義(マクロな系での定義)

可逆(理想的な)過程で系に与えられた微小な熱

δQrev \delta Q_{\text{rev}}

を温度

T T

で割ったものを積分したものがエントロピーの変化:

ΔS=δQrevT \Delta S = \int \frac{\delta Q_{\text{rev}}}{T}

 

例:温度

300K 300\,\mathrm{K}

の系に可逆的に

100J 100\,\mathrm{J}

の熱を入れると、

ΔS=100300=0.333 J/K \Delta S = \frac{100}{300} = 0.333\ \mathrm{J/K}

 

単位はジュール毎ケルビン(J/K)。

孤立系では、エントロピーは減らない(増大するか一定)。これが熱力学第二法則の一部です。


3. 統計力学的な定義(微視的な解釈)

系が取り得る微視的状態の数を

Ω \Omega

とすると、エントロピーは:

S=kBlnΩ S = k_B \ln \Omega

 

ここで

kB k_B

はボルツマン定数(

1.38×1023 J/K \approx 1.38 \times 10^{-23}\ \mathrm{J/K}

)。
状態の数が増える(可能性が広がる)と

Ω \Omega

が増え、結果として

S S

も大きくなる。


4. 情報理論との類似(シャノンエントロピー)

確率分布

{pi} \{p_i\}

を持つ選択肢の不確実性(情報の平均量)はシャノンエントロピーで:

H=ipilog2pi(単位:ビット) H = -\sum_i p_i \log_2 p_i \quad \text{(単位:ビット)}

 

物理のエントロピーと形式的に似ていて、確率的に「どれだけの情報(不確実性)」があるかを測る。
熱力学的エントロピーは確率分布(微視的状態の重み)を自然対数で扱った形に対応します。


5. よくある誤解の整理

  • エントロピー = 単なる「乱雑」ではなく、「可能な内部状態の数の対数的な広がり」。
  • エントロピーが増える方向が「自然な時間の進み方」だが、局所的に減ること(冷却や秩序化)は外部とのやり取り(全体ではエントロピー増大)によって可能。
  • 熱が高温から低温へ流れるのは、全体のエントロピーが増えるから起きる(自発的な過程)。

まとめ

  • 定義(可逆熱)
    ΔS=δQrev/T \Delta S = \int \delta Q_{\text{rev}} / T
     
  • 統計解釈
    S=kBlnΩ S = k_B \ln \Omega
     

    (状態数の対数)

  • 性質:孤立系でエントロピーは増えるか一定(第二法則)。
  • 単位:ジュール毎ケルビン(J/K)。

必要なら、具体例(気体の膨張、混合、熱エンジン効率との関係など)や問題演習も出せます。どちらがよいですか?