次の記述の(   )に入る語句の組合せとして、最も適切なものはどれか。

断面が円形の等分布荷重を受ける片持ばりにおいて、最大曲げ応力は断面の円の直径の( ア )に( イ )し、最大たわみは断面の円の直径の( ウ )に( エ )する。

ア:3乗  イ:反比例  ウ:4乗  エ:反比例
ア:4乗  イ:比例  ウ:4乗  エ:反比例
ア:4乗  イ:反比例  ウ:3乗  エ:反比例
ア:4乗  イ:比例  ウ:3乗  エ:比例
ア:3乗  イ:反比例  ウ:4乗  エ:比例

https://kakomonn.com/gijyutushi/questions/80688

最も適切なのは、

ア:3乗 イ:反比例 ウ:4乗 エ:反比例

です。


解説

  • 円形断面の曲げ応力は、断面二次モーメント Id4 I\propto d^4、中立軸までの距離 cd c\propto d なので、断面係数 Z=I/cd3 Z=I/c\propto d^3。曲げモーメント一定の場合の応力 σ=M/Z \sigma=M/Z は、直径 d d の 3 乗に 反比例 します(ア:3乗、イ:反比例)。
  • 等分布荷重 q q を受ける片持ち梁の先端たわみは δ=qL4/(8EI) \delta=qL^4/(8EI) で、断面二次モーメント Id4 I\propto d^4 なので、直径 d d の 4 乗に 反比例 します(ウ:4乗、エ:反比例)。

最大曲げ応力とはなんですか?

 

最大曲げ応力(σ_max)とは、梁などの部材に曲げモーメント(M)が作用したとき、その断面内で最も大きな引張または圧縮の応力値を指します。断面の中立軸から最外繊維までの距離(c)が最大となる位置で発生し、部材の強度設計や安全率評価の基本となる値です。


定義と式

  • 曲げモーメント M:部材に外力が作用して生じるモーメント(N·m)
  • 断面二次モーメント I:断面形状が曲げに抵抗する指標(m⁴)
  • 中立軸から最外繊維までの距離 c:断面の中立軸(応力がゼロの線)から最も遠い点までの垂直距離(m)

最大曲げ応力は次の式で表されます:

σmax=McI \sigma_\mathrm{max} = \frac{M \, c}{I}

  • 単位:Pa(パスカル、N/m²)

意味と使い方

  1. 部材の破壊評価
    部材が曲げで破壊するとき、最外繊維の応力が材料の許容応力(降伏応力や引張強さ)を超えると危険です。σ_max を求めることで安全率を見積もれます。
  2. 断面形状の最適化
    σ_max ∝ c/I。断面二次モーメントを大きく(Iを増やす)、かつcを小さくすることで、同じMでも応力を下げられます。Iは断面形状(形状やサイズ)で決まるため、設計段階で検討します。
  3. 材料選定
    σ_max と材料の強度特性を比較し、適切な材料を選ぶことで、部材の軽量化やコスト削減が図れます。

例:丸棒断面の場合

  • 直径 d の丸棒断面なら

    I=πd464,c=d2 I = \frac{\pi d^4}{64}, \quad c = \frac{d}{2}よって

    σmax=Md2πd464=32Mπd3 \sigma_\mathrm{max} = \frac{M\,\frac{d}{2}}{\frac{\pi d^4}{64}} = \frac{32\,M}{\pi d^3}と、直径 d の 3 乗に反比例することがわかります。


最大曲げ応力を正しく計算・評価することで、梁やシャフトなどの構造部材を安全かつ効率的に設計できます。

断面係数とはなんですか

断面係数(せっかんけいすう、Section Modulus)とは、断面形状が曲げモーメントに対してどれだけ抵抗できるかを表す断面性能指標です。部材の強度設計において、最大曲げ応力と曲げモーメントを結びつける重要なパラメータです。


定義と式

  • 断面二次モーメント I I(単位:m⁴ または mm⁴)
    断面が曲げに抵抗する能力の大きさを表す指標。
  • 中立軸から最外繊維までの距離 c c(単位:m または mm)
    応力が最大になる断面の一番遠い点までの距離。

これらから、断面係数 Z Z は次のように定義されます:

Z=Ic Z = \frac{I}{c}

  • 単位は m3 \mathrm{m}^3(または mm3 \mathrm{mm}^3)。
  • 曲げモーメント M M(N·m または N·mm)を作用させたときの最大応力 σmax \sigma_{\max} は、

    σmax=MZ \sigma_{\max} = \frac{M}{Z}という関係で表せます。


意味と役割

  1. 強度設計の簡略化
    σmax=M/Z \sigma_{\max} = M/Z の式を使うことで、任意の断面形状に対して「許容応力以下に保つために必要な断面係数」を直接計算できます。
  2. 断面形状の比較指標
    同じ材料であれば、断面係数が大きいほど曲げに強い(同じモーメントでも応力が低い)断面といえます。
  3. 断面選定
    市販形鋼や異形断面の中から、必要な断面係数を満たすものをカタログから探す際の基準として使われます。

例:丸断面の断面係数

直径 d d の丸棒断面の場合:

  • I=πd464 I = \dfrac{\pi d^4}{64}
  • c=d2 c = \dfrac{d}{2}

したがって

Z=Ic=πd4/64d/2=πd332 Z = \frac{I}{c} = \frac{\pi d^4/64}{d/2} = \frac{\pi d^3}{32}

となり、断面係数も直径の 3 乗に比例する形状性能となります。


断面係数は、梁やシャフトなど曲げを受ける構造部材の設計・評価で必須の指標です。材質の強度と組み合わせて、安全かつ経済的な断面設計を行う際に利用します。

断面二次モーメントが定義されている中で断面係数を新たに定義する意味はなんですか?

断面二次モーメント I I は「形状が曲げに抵抗する能力の大きさ」を示す純粋な幾何学的指標ですが、実際の強度設計では「曲げモーメント M M が作用したときに生じる応力 σ \sigma」との直接の結びつきが重要です。そこで登場するのが断面係数 Z Z です。


1.I IZ Z の役割の違い

  • 断面二次モーメント I I
    • 単位:m4 \mathrm{m}^4(または mm4 \mathrm{mm}^4
    • 「断面形状そのものが曲げに抵抗する量」を示す。
    • 応力分布の計算やたわみ量の式(δ1/I \delta \propto 1/I)には直接使うが、応力計算ではさらに中立軸からの距離 c c が必要。
  • 断面係数 Z=I/c Z = I/c
    • 単位:m3 \mathrm{m}^3(または mm3 \mathrm{mm}^3
    • 「曲げモーメント M M と最大応力 σmax \sigma_{\max} の関係」を一歩で結びつける量。
    • σmax=MZ \displaystyle \sigma_{\max}=\frac{M}{Z} というシンプルな式で強度評価ができる。

2.断面係数を定義するメリット

  1. 設計手順の簡略化
    • いちいち I Ic c を別々に計算・管理せず、標準的な断面形状ごとにまとめられた Z Z 値を使うことで、必要な許容応力や荷重から断面を選べる。
  2. 材料・形状の比較が容易
    • 同じ断面形状であれば Z Z が大きいほど「曲げに強い」ことが一目瞭然。異形断面間の性能比較にも便利。
  3. 市販カタログとの親和性
    • 建築・機械部材のカタログには断面係数 Z Z が記載されていることが多く、そのまま構造計算に使える。

つまり、断面二次モーメント I I は「曲げに抵抗する“潜在能力”」を表し、断面係数 Z Z は「与えられたモーメントで発生する応力を直接求められる“実用的性能”」を表すもの、と考えると理解しやすいでしょう。