テスラによる自動運転関連特許
調査方法
Google Patents や Justia Patent などの一次情報源を検索し、最近のテスラの特許出願・特許権の中から「自動運転」に直接関係するものを抽出した。特許番号や公開番号、出願日・発行日、発明者・権利者などを確認し、要旨を整理している。なお、2026年1月27日現在、近年の特許データベースの更新状況を確認し、2023~2026年に公開された最新情報も含めた。
主な自動運転関連特許
以下ではテスラが出願・権利化した自動運転関連特許を概要とともに紹介する。記載している日付は 特許の出願日 と 発行日(公表日・特許付与日) であり、どちらもアメリカ特許を基準に記載している。発行日が無い場合は公開段階の出願である。
1. Autonomous Driving System Component Fault Prediction(部品故障予測)
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特許番号 : US 12272189 (Grant)
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出願日 / 発行日 : 2023‑04‑10 出願、2025‑04‑08 特許付与
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発明者 / 権利者 : Atchyuth Gorti, David Glasco, Daniel Bailey / Tesla, Inc.
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概要 : この発明は、車両の自動運転システムに含まれる複数の部品の性能データを監視し、性能データを閾値と比較することで将来発生しうる故障状態を予測する。予測された故障情報は車両のインフォテインメントシステムやサービス担当者へ通知され、故障を未然に防ぐ。
2. Data Pipeline and Deep‑Learning System for Autonomous Driving(データパイプラインと深層学習システム)
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特許番号 : US 12260332 (Grant)
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出願日 / 発行日 : 2023‑07‑17 出願、2025‑03‑25 特許付与
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発明者 / 権利者 : Timofey Uvarov, Brijesh Tripathi, Evgene Fainstain / Tesla, Inc.
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概要 : 車両のセンサーで取得した画像を複数の成分画像に分解し、それぞれを深層ニューラルネットワークの異なる層に入力して結果を得る。得られた結果を用いて車両を自律的に操作する。複数カメラからの画像を並列的に処理することで、リアルタイムな運転判断を実現する。
3. Estimating Object Properties Using Visual Image Data(画像データによる物体特性推定)
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特許番号 : US 12236689 (Grant)
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出願日 / 発行日 : 2023‑09‑22 出願、2025‑02‑25 特許付与
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発明者 / 権利者 : James A. Musk, Swupnil Sahai, Ashok Elluswamy / Tesla, Inc.
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概要 : 車載カメラの画像データを機械学習モデルに入力し、物体までの距離などの特性を推定する。モデルはカメラ画像と距離センサーから得た正解データで訓練され、画像だけから距離を推定できる。ライダーなどを用いずに距離推定が行える点が特徴。
4. Generating Ground Truth for Machine Learning from Time‑Series Elements(時系列データからの機械学習用“真実データ”生成)
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特許番号 : US 12223428 (Grant)
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出願日 / 発行日 : 2023‑09‑01 出願、2025‑02‑11 特許付与
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発明者 / 権利者 : Ashok Elluswamy ほか / Tesla, Inc.
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概要 : センサーから収集した時間的に連続するデータ群を解析し、ある時刻のデータに対応する“正解ラベル”を他の時刻のデータから求める。この真実データを用いて機械学習モデルを訓練し、時系列データのラベル付けを自動化する。
5. Enhanced Object Detection for Autonomous Vehicles Based on Field of View(視野ベースの物体検出強化)
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特許番号 : US 12198396 (Grant)
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出願日 / 発行日 : 2024‑02‑13 出願、2025‑01‑14 特許付与
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発明者 / 権利者 : Anting Shen、Romi Phadte、Gayatri Joshi / Tesla, Inc.
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概要 : 画像センサーで取得した画像から視野を決定し、視野に対応する領域を高解像度で切り出し、それ以外を低解像度にダウンサンプルする。畳み込みニューラルネットワークを用いて両方を同時に推論することで、広い視野と高精度を両立させる。
6. Autonomous and User‑Controlled Vehicle Summon to a Target(目標地点への自動召喚)
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公開番号 : US 20250068166 (Application)
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出願日 / 公開日 : 2024‑11‑08 出願、2025‑02‑27 公開
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発明者 / 出願人 : Elon Musk ほか / Tesla, Inc.
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概要 : 車両外にいるユーザーが指定した目的地の位置情報を受け取り、車両センサーのデータから周辺環境の表現を生成し、目的地までの経路を計算して自律的に車両を誘導する。経路計算中はセンサーデータに基づき経路を更新する。いわゆる「スマートサモン」を高度化した特許。
7. Detected Object Path Prediction for Vision‑Based Systems(視覚ベースシステムにおける物体軌道予測)
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公開番号 : US 20240378896 (Application)
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出願日 / 公開日 : 2022‑08‑19 出願、2024‑11‑14 公開
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発明者 / 出願人 : Nanda Vasudevan、Dhiral Chheda / Tesla, Inc.
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概要 : 車載カメラなど視覚システムから得たデータをもとに、動的な物体の複数の予測軌道を生成し、それぞれに発生確率を付与する。軌道予測により自動運転システムが周囲の交通参加者の動きを予測できる。
8. Vision‑Based System Training with Simulated Content(シミュレーションデータを用いたビジョンシステムの訓練)
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公開番号 : US 20240378899 (Application) / US 20240355132 (Application)
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出願日 / 公開日 : 2022‑08‑18 出願、2024‑10〜11 公開
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発明者 / 出願人 : David Abfall・Michael Hosticka ほか / Tesla, Inc.
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概要 : 車載カメラから得た実データと、シミュレーションシステムが生成する仮想データとを組み合わせた大規模な訓練データセットを生成し、視覚のみで認識を行う機械学習モデルを学習させる。複数時刻のデータを組み合わせてラベルを生成するバージョンも含まれる。
9. Autonomous Driving System Emergency Signaling(緊急時信号送信)
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特許番号 : US 12099363 (Grant)
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出願日 / 発行日 : 2023‑06‑09 出願、2024‑09‑24 特許付与
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発明者 / 権利者 : Michael Cave / Tesla, Inc.
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概要 : 自動運転データを送るタイムディビジョン多重化 (TDM) バスを備えた車両システムで、各センサーが通常の割り当てスロットとは別に、緊急事態を検知した際にはより高い送信電力で緊急メッセージを送信する。緊急時の迅速な情報伝達を目的とする。
10. Data Synthesis for Autonomous Control Systems(自律制御システムのためのデータ合成)
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特許番号 : US 12020476 (Grant)
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出願日 / 発行日 : 2022‑10‑28 出願、2024‑06‑25 特許付与
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発明者 / 権利者 : Forrest Iandola ほか / Tesla, Inc.
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概要 : センサーから取得したデータにシミュレーションによる改変を加えたり、仮想環境のデータを合成することで、現実には存在しない状況を含むトレーニングデータを生成する。これにより検出・制御アルゴリズムを強化する。
11. Artificial Intelligence Modeling Techniques for Vision‑Based Occupancy Determination(空間占有判定のためのAIモデル)
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特許番号 : US 12469160 (Grant) ほか複数出願
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出願日 / 発行日 : 2024‑02‑13 出願、2025‑11‑11 特許付与
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発明者 / 権利者 : Pengfei Duan、Nishant Desai、Philip Lee、Ashok Elluswamy / Tesla, Inc.
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概要 : カメラによる周囲映像をAIモデルに入力し、周辺空間をボクセル格子に分割して各ボクセルが物体で占有されているかどうかを推定する。複数のボクセル占有属性から「占有データセット」を作成する。関連出願では、署名距離( signed distance )を計算して3D空間を高精度に再構成するAIネットワークが提案されており、自動運転の環境認識や駐車支援への応用が想定される。
12. Vision‑Based Machine‑Learning Model for Autonomous Driving with Adjustable Virtual Camera(仮想カメラ調整機能付きビジョンベース機械学習モデル)
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公開番号 / 特許番号 : US 20230057509A1 → 2025‑11‑04 付与(US 12462575B2)
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出願日 / 発行日 : 2022‑08‑18 出願、2023‑02‑23 公開、2025‑11‑04 特許付与
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発明者 / 権利者 : John Emmons ほか / Tesla, Inc.
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概要 : 複数カメラから取得した画像から特徴を抽出し、仮想カメラの高さと視点に合わせてベクトル空間へ投影して集約する。集約された特徴をもとにVRU(人など)と非VRUを区別するなどの認識を行うことで、自動運転における視覚のみのセンシングを向上させる。
13. Optimizing Neural‑Network Structures for Embedded Systems(組み込みシステム向けニューラルネットワークの最適化)
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特許番号 : US 12079723 (Grant)
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出願日 / 発行日 : 2023‑03‑14 出願、2024‑09‑03 特許付与
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発明者 / 権利者 : Harsimran Sidhu ほか / Tesla, Inc.
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概要 : 組み込みハードウェアに適したニューラルネットワークモデルを生成・選択するための訓練パイプラインに関する特許である。モデル生成段階で複数のモデルとそのパフォーマンスを推定し、最適なモデルを選んで訓練・実装する。自動運転においてハードウェア制約下で効率的に学習モデルを動作させるための技術。
14. Bit‑Augmented Arithmetic Convolution(ビット拡張算術畳み込み)
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公開番号 : US 20260017503A1 (Application)
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出願日 / 公開日 : 2025 年出願、2026‑01‑21 公開
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発明者 / 出願人 : Tesla, Inc.
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概要 : ハードウェア HW3 に搭載された 8 ビット演算ユニットで 16 ビットの高精度計算を実現する「ビット拡張」手法を提案する。16 ビット数値を 8 ビット単位に分割し、既存のニューラルネットワークアクセラレータで別々に処理して再結合する。Electrek の解説によれば、この特許は AI モデルの精度向上につながるもののハードウェアのメモリ不足など根本的な制約は解消しないと指摘されている。
考察
テスラは自動運転技術に関する特許を積極的に出願しており、特にカメラベースの認識技術と機械学習に関する特許が増えている。最近はライダーを用いずカメラのみで高精度な環境認識を行うためのニューラルネットワークや、仮想カメラによる視点変換、シミュレーションデータを用いた訓練手法などが中心である。また、オンボードハードウェアの計算制約に合わせてニューラルネットワークを最適化する特許や、故障予測・緊急信号送信など安全性向上に関わる特許もある。2025〜2026年には占有ネットワークやビット拡張演算など、より高度な AI モデリング技術やハードウェア活用の特許が公開されており、将来のフルセルフドライビング(FSD)向け機能の基盤になると考えられる。
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この報告書では、2023~2026年に公開・付与された特許を中心に、特許番号、出願日や発行日、技術的な概要を日本語で整理しています。また、故障予測やデータ合成といった安全性向上技術から、カメラのみを用いた環境認識やAIモデル最適化など最新の機械学習応用まで広く取り上げています。





