https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/record/19076/files/sk043011003.pdf タイトル(英語および日本語) Ductile Mode Machining(延性モード加工) ジャーナル名と発行年 生産研究, 第43巻第11号, 1991年11月 第一著者と最終著者(英語表記のみ) Yasuhiro Tani 第一所属(英語表記のみ) Institute of Industrial Science, The University of Tokyo 要旨 硬脆性材料の高精度鏡面加工技術の需要が高まる中、延性モード加工が注目されている。本技術は、脆性破壊ではなくせん断破壊により加工を行うことで、クラックのない仕上げ面と工具軌跡の優れた転写性を実現する。本論文は延性モード加工の最新の研究動向を紹介する。 背景 硬脆性材料の加工は従来、脆性モード状態で行われていたが、微小切込みで延性モード加工が可能であることが判明。電子・光学産業での硬脆性材料の需要増加により、精密加工技術の進展が求められている。 方法 単粒切削による切込み量の検出 超精密加工機械の運動精度向上 切削溝形状の観察や粗さ計を用いた解析 結果 延性モード加工では、塑性変形を伴う流れ型切り屑を生成し、表面粗さが大幅に向上。 脆性モード加工から延性モード加工への移行点は切込み量に依存し、工具形状や送り速度が影響する。 議論 延性モード加工の実現には微小切込み制御が不可欠。特に硬脆性材料の加工では、切削条件や工具のすくい角が大きな影響を及ぼす。 従来研究との差別化 これまで脆性材料は脆性モード加工が標準であったが、本研究は延性モード加工の可能性を示し、新たな加工技術の道を切り開いた。 限界 遷移点の明確な定義や評価基準が確立されていない。 工具の切れ味や実切込み量の精密制御技術が発展途上。 潜在的応用 電子産業や光学産業での高精度部品製造 硬脆性材料の高品質加工技術としての応用
単一切れ刃における延性モード加工の条件を教えてください
単一切れ刃における延性モード加工の条件 単一切れ刃を用いた延性モード加工では、以下の条件が重要です。 切込み量 延性モード加工の実現には、切込み量(切削深さ)を非常に小さく制御する必要があります。具体的には、切削条件に応じて数百ナノメートルから数マイクロメートル以下に抑えることが求められます。 延性/脆性遷移点(dc値)は、工具形状や切削速度に大きく依存します。例えば、ガラスやシリコンではdc値が材料特性により異なります。 工具の形状 工具のすくい角や先端形状が重要な影響を与えます。 すくい角が負になると、切削中の応力が変化し、遷移点(dc値)が変動します。シリコンでは負のすくい角でdc値が高くなる一方、ガラスでは逆に低くなることが観察されています。 工具の先端半径 工具先端半径が大きいほど、切込み量を小さく均一に制御しやすく、延性モード加工が実現しやすくなります。 切削速度 切削速度も延性モード加工の実現に影響します。シリコンでは切削速度依存性が低い一方で、ガラスでは切削速度が一定の範囲(例えば、約500m/min)で急激な変化を引き起こすことが報告されています。 切削条件の制御精度 加工機械の運動精度、剛性、制御精度が極めて重要です。 実切込み深さと設定切込み深さの差を最小化するために、高精度な工具および加工装置が必要です。 材料特性の考慮 加工材料の硬度やじん性が異なるため、それに応じて加工条件を調整します。 例えば、脆性材料であるガラスやセラミックスは、延性モード加工を実現するために微小切込み制御が必須です。 これらの条件を満たすことで、単一切れ刃を用いた延性モード加工が実現可能となり、クラックのない高品質な仕上げ面が得られます。