技術士の過去問 令和4年度(2022年) 基礎科目「設計・計画に関するもの」 問2

確率分布に関する次の記述のうち、不適切なものはどれか。
1 .1個のサイコロを振ったときに、1から6までのそれぞれの目が出る確率は、一様分布に従う。
2 .大量生産される工業製品のなかで、不良品が発生する個数は、ポアソン分布に従うと近似できる。
3 .災害が起こってから次に起こるまでの期間は、指数分布に従うと近似できる。
4 .ある交差点における5年間の交通事故発生回数は、正規分布に従うと近似できる。
5 .1枚のコインを5回投げたときに、表が出る回数は、二項分布に従う。

解説

1個のサイコロを振ったときに、1から6までのそれぞれの目が出る確率は、一様分布に従う。これは正しいです。サイコロの各面が出る確率は等しく、一様分布を示します。

大量生産される工業製品のなかで、不良品が発生する個数は、ポアソン分布に従うと近似できる。これも適切な記述です。ポアソン分布は特定の時間や面積、体積内でランダムに発生するイベントの回数をモデル化するのに適しています。

災害が起こってから次に起こるまでの期間は、指数分布に従うと近似できる。これも適切な記述です。指数分布はあるイベントが発生するまでの待ち時間をモデル化するのに使われます。

ある交差点における5年間の交通事故発生回数は、正規分布に従うと近似できる。この記述は少し問題があります。交通事故の回数は非負の整数ですが、正規分布は連続的な分布であり、理論上は負の値も取り得ます。しかし、大数の法則により、事故の回数が十分に大きい場合には、中心極限定理により、事故発生回数の分布は正規分布に近似できる可能性があります。ただし、本質的に交通事故の回数は離散的で、理想的にはポアソン分布などの離散分布を用いるべきです。そのため、この文脈では正規分布を適用するのは少し不適切かもしれませんが、完全に間違っていると断言するのは難しいです。

1枚のコインを5回投げたときに、表が出る回数は、二項分布に従う。これは正しいです。二項分布は固定された回数の独立した試行で、2つの結果(成功と失敗)が発生する確率過程をモデル化するのに適しています。
総合的に考えると、4番の選択肢が最も不適切と言えるでしょう。交通事故発生回数が正確に正規分布に従うとは限らず、他の分布がより適切な場合が多いためです。ただし、これは文脈に依存するため、絶対的な誤りとは言えませんが、他の選択肢と比較して相対的に不適切であると考えられます。

ポアソン分布について教えて下さい

ポアソン分布は、ある固定された時間間隔または空間内で発生するランダムなイベントの回数をモデル化するために使用される確率分布です。この分布は、以下のような特徴を持っています:

1. **ランダム性**: イベントは完全にランダムに発生します。
2. **独立性**: ある時間帯にイベントが発生する確率は、他の時間帯のイベントの発生に影響されません。
3. **平均発生率**: イベントは一定の平均率(\(\lambda\)、ラムダと呼ばれる)で発生します。この率は時間または空間によって変化しません。

ポアソン分布の確率質量関数(PMF)は以下の式で表されます:

\[ P(X = k) = \frac{\lambda^k e^{-\lambda}}{k!} \]

ここで、
– \( k \) は発生したイベントの数を表し、0, 1, 2, … の整数値を取ります。
– \( \lambda \) は単位時間または単位空間あたりの平均イベント発生数です。
– \( e \) は自然対数の底です。
– \( k! \) は \( k \) の階乗を表します。

ポアソン分布は以下のような状況でよく使用されます:
– ある時間内にコールセンターにかかってくる電話の数
– 一定期間内にあるウェブサイトにアクセスするユーザーの数
– ある地域で一定期間内に発生する交通事故の数

ポアソン分布のキーポイントは、イベントがランダムかつ独立に発生し、平均発生率が一定であることです。これらの条件を満たす現象をモデル化する際には、ポアソン分布が非常に有効なツールとなります。

 

指数分布について教えて下さい

指数分布は、ポアソン過程におけるイベント間の待ち時間をモデル化するのに用いられる連続確率分布です。ポアソン分布が一定時間内にイベントが発生する回数に焦点を当てるのに対し、指数分布は連続的な時間軸上での2つの連続するイベント間の時間を扱います。

指数分布の確率密度関数(PDF)は次のように表されます:

\[ f(x; \lambda) = \begin{cases}
\lambda e^{-\lambda x} & x \geq 0, \\
0 & x < 0.
\end{cases} \]

ここで、
– \( x \) はあるイベントが発生してから次のイベントが発生するまでの時間です。
– \( \lambda \) は単位時間当たりの平均イベント発生率で、ポアソン分布のパラメータと同じです。

指数分布の主な特徴は以下の通りです:

1. **無記憶性**: 指数分布の重要な性質は無記憶性です。これは、イベントが発生してからの時間が経過しても、次のイベントまでの残り時間の分布が変わらないことを意味します。
2. **レートパラメータ \( \lambda \)**: このパラメータは平均発生率を制御します。\( \lambda \) が大きいほど、イベントがより頻繁に発生し、待ち時間が短くなります。
3. **平均と分散**: 指数分布の平均(または期待値)は \( 1/\lambda \) であり、分散は \( 1/\lambda^2 \) です。

指数分布は以下のようなシナリオでよく使用されます:

– 機械が故障するまでの時間
– 電話コールセンターで次の電話がかかってくるまでの時間
– 放射性物質の原子が崩壊するまでの時間

指数分布は、イベント間の時間が連続的であり、時間の経過と共にイベントの発生確率が変わらない(無記憶性)場合に適用されます。