https://youtu.be/1u8wYACrCNU.

はじめに

自律走行システム(自立走行)は、自動運転車や屋内外ロボット、農業機械、ドローンなど多岐にわたる応用分野で研究が進められている。これらは地図情報やセンサデータを用いて自律的に自己位置推定と経路計画を行い、安全かつ効率的に移動する技術である。本報告では、主要な技術(SLAM、経路計画、強化学習、センサ融合、Teach & Repeat等)と代表的論文を概観し、応用分野ごとのアプローチ比較や最新動向、各技術の課題と将来展望についてまとめる。

代表的論文と概要

  • Reda et al. (2024) は、自動運転システムにおける経路計画手法をレビューし、275件の論文から従来手法(グラフ探索、サンプリング、勾配法など)、機械学習/深層学習法、メタヒューリスティックの3系統に分類したsciencedirect.com。解析の結果、メタヒューリスティック(全体の23%)は複雑問題での収束性に優れ、学習手法(25%)は既知シナリオで高速応答する傾向があることが示されたsciencedirect.com

  • Hu et al. (2025) は、自動運転車の意思決定・計画アルゴリズムを網羅的に調査し、ルールベース・状態遷移ベース・ゲーム理論ベースの手法や、A*/RRTなどの探索ベース、最適化ベースの計画法を整理したpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。さらに、模倣学習や強化学習などデータ駆動型手法、これらを組み合わせたハイブリッド手法についても詳述し、各手法の長所・短所と今後の課題を論じているpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov

  • Yarovoi & Cho (2024) は、建設現場向けモバイルロボットにおけるSLAM技術をレビューし、ダイナミックな環境での地図作成と自己位置推定の課題を整理しているsciencedirect.comsciencedirect.com。各種センサ(LiDARやカメラ)の特徴を生かしたSLAM手法を概観し、特徴抽出→マッチング→地図更新という基本的プロセスを詳細に説明しているsciencedirect.com

  • Wu et al. (2025) は、農業機械の自律走行に必要な技術(高精度測位、環境認識、経路計画、経路追従制御)を体系的にレビューし、非構造的農地や地形変化に伴う難しさを指摘したmdpi.commdpi.com。例えば、複数センサ融合による高精度位置推定や、段差や不整地に対応する地形適応型経路計画、モデルベースと学習ベースを組み合わせたロバスト制御が将来の研究方向として挙げられているmdpi.commdpi.com

  • Nourizadeh et al. (2023) は、Teach & Repeat(T&R)ナビゲーションにおけるロバスト制御手法を提案した論文である。T&Rは「教示フェーズ」でロボットに経路を示し、「反復フェーズ」でその経路を自律走行する方式で、環境変化下でも高い追従性能を発揮するarxiv.org。著者らはスライディングモード制御を用いた運動制御器を設計し、不確実性を考慮した上で世界的な安定性を実験的に示したarxiv.org

  • Alqobali et al. (2023) は、屋内移動ロボット向けに「セマンティック・ナビゲーション(意味地図ナビゲーション)」を調査した研究である。従来のSLAMが環境の幾何学的情報に依存する一方、本研究では物体や部屋などの意味情報を地図に統合することで、人間的な理解を近づけ、経路計画や人間–ロボット協調を向上させる意義を解説しているmdpi.com

  • Liu et al. (2025) は、無人航空機(UAV/ドローン)向け自己位置推定技術をレビューし、主に純粋視覚ベースとマルチセンサ融合の2系統を扱っている。ORB-SLAMやSVOなど視覚SLAMが盛んに用いられており、画像特徴(SuperPoint, LOFTR等)の深層学習利用も増えているlink.springer.com。一方、光学系のみに依存すると照度や動態に弱いため、LiDAR・IMU・赤外線など異なるセンサを融合する方法が高い堅牢性・精度をもたらすことを示しているlink.springer.com

  • Yeong et al. (2023) は、自動運転車向けマルチセンサ融合についてサーベイし、カメラ・LiDAR・レーダー・GPSなど複数センサの組み合わせが認識精度・信頼性を大きく向上させることを報告したmdpi.commdpi.com。また、融合システムのブラックボックス化への対処として説明可能性(XAI)にも触れ、リアルタイム性とのトレードオフを論じているmdpi.commdpi.com

技術別概観

SLAM(自己位置推定と地図生成)

SLAMはロボット走行の基盤技術であり、移動体が自己の位置と周囲地図を同時に推定する。Yarovoi & Choは、SLAMの一般プロセスとして「各時刻でセンサ特徴を抽出→地図上の既知特徴とマッチング→ロボット位置と特徴位置を同時に更新→未知特徴を地図に追加」という繰り返し処理を説明しているsciencedirect.com。SLAM手法には、フィルタベース(拡張カルマンフィルタ等)とグラフ最適化ベースがあり、使用センサ(レーザ、ステレオカメラ、RGB-Dカメラなど)やリアルタイム性の要求に応じて使い分けられるsciencedirect.comsciencedirect.com。近年は視覚SLAM(ORB-SLAM等)に深層学習で得た特徴や深度情報を統合する研究が進み、UAVではIMUと併用したLoD(LiDAR-ヴィジュアルSLAM)等も注目されるlink.springer.comlink.springer.com。一方、SLAMには累積誤差(ドリフト)や動的障害物への対応困難、長期運用時の地図更新問題など課題が残っており、その克服が今後の焦点である。

経路計画・ナビゲーション

経路計画は環境内の目的地までの走行経路を求める問題で、NP困難な最適化問題である。Redaらは、自動運転システムにおける経路計画手法を伝統的手法・機械学習手法・メタヒューリスティックに分類しており、具体的にはグラフ探索(A*, Dijkstra)、サンプリング(RRT, PRM, DWA等)、勾配法(ポテンシャル場)や、遺伝的アルゴリズムやアリコロニー最適化、PSOなどの生物模倣アルゴリズムが伝統的手法に含まれるsciencedirect.comlink.springer.com。加えて、近年は深層学習や強化学習、さらには大規模言語モデル(LLM)を経路計画に応用する試みも始まり、これにより動的・非構造環境下での学習による適応性向上が期待されるlink.springer.comlink.springer.com。図1に示すように、これら5分類の手法(グラフ、サンプリング、勾配、生物模倣、学習ベース)が組み合わされつつあるlink.springer.comlink.springer.com。研究動向としては、各手法の長所を統合したハイブリッド手法の提案や、未知環境への高速適応を狙う学習ベース手法の登場が目立つ。

図1. 移動ロボットの経路計画手法(グラフ探索、サンプリング、勾配、生物模倣、学習ベース)link.springer.comlink.springer.com

センサ融合

自律走行ではカメラ、LiDAR、レーダー、IMU、GPSなど多様なセンサを組み合わせることで認識性能を高める。Yeongら(2023)は、自動車分野で「マルチセンサ融合」がセンシング信頼性を飛躍的に向上させると報告しておりmdpi.commdpi.com、各センサの利点(例:LiDARは精度高い距離取得、レーダーは悪天候耐性)を統合することが可能になると述べているmdpi.com。センサ融合のアーキテクチャは、前処理前の生データ融合(低レベル融合)、特徴ベクトル融合(中レベル融合)、それぞれ個別解析結果の後処理融合(高レベル融合)などに分類され、それぞれ計算コストとロバスト性でトレードオフがあるmdpi.com。近年は深層学習を用いた融合や、説明可能性を備えた手法(XAI)の開発も進んでいるmdpi.commdpi.com

強化学習・学習ベース手法

近年、自律走行ではデータ駆動型の学習手法が注目される。深層強化学習(DRL)により、ロボット自身が環境と試行錯誤し最適ポリシーを学習する研究が多数報告されているlink.springer.comlink.springer.com。Wagaら(2025)は、古典的手法は確実性に優れる一方、DRLなどの学習手法は未知・動的環境下での適応能力に強みがあると指摘しており、今後は両者を組み合わせたハイブリッド手法が課題解決に有望であるとしているlink.springer.compmc.ncbi.nlm.nih.gov。ただし、DRLは学習のための大量データと計算資源を要する、学習済みモデルの安全性保証が難しいなどの課題もあり、実運用のためにはモデルの軽量化やモデルフリーRLの安全域設定等が研究テーマとなっている。

Teach & Repeat

Teach & Repeat(教示・反復)方式は、あらかじめロボットに経路を教示し、その経路を自律走行させる手法で、同じ環境下での反復タスクに強い。Nourizadehら(2023)は、Teachフェーズでロボットを走行させてセンサデータを記録し、Repeatフェーズでその経路を追従するアプローチを採用したarxiv.org。彼らは特に運動制御の部分で、スライディングモード制御を導入し、車輪摩擦やセンサノイズといった不確実性下でも世界的な安定性を実験的に示したarxiv.org。Teach & Repeatは屋外・屋内問わず使用例があり、地図構築を省くことで計算負荷を低減できる利点があるが、走行経路が変化すると追従困難になる点や、環境の大幅変化への適用性確保などが今後の課題である。

応用分野別技術比較

分野 主な技術・アプローチ 代表的研究・論文例
自動運転車 複数センサ(カメラ・LiDAR・レーダー・GPS)による周囲認識mdpi.compmc.ncbi.nlm.nih.gov 深層学習による物体検出・経路予測、行動決定 ルールベース・状態遷移モデル・ゲーム理論などの意思決定 経路計画はA*/サンプリング・強化学習 Hu et al. (2025)pmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov Yeong et al. (2023)mdpi.com
屋内/屋外ロボット 屋内: 既知環境やBIM情報を用いる場合と未踏内のSLAM<sup>†</sup> 屋外: LiDARやGPS混合SLAM、外界地図なしでの自己位置推定 セマンティックマッピング(物体・部屋タグ)によるナビ強化mdpi.com Teach & Repeatによる巡回経路学習arxiv.org マルチロボット協調研究(ロボット間通信・タスク分担) Yarovoi & Cho (2024)sciencedirect.comsciencedirect.com Alqobali et al. (2023)mdpi.com Nourizadeh et al. (2023)arxiv.org
農業機械 高精度GNSS/INSによる位置推定、RTK-GPS融合 視覚およびLiDARによる作物・地形検出 地形適応型経路計画(畝間走行、狭隘地考慮) モデル予測制御(MPC)やファジィ・学習制御の併用mdpi.com Wu et al. (2025)mdpi.commdpi.com
UAV/ドローン 純粋視覚SLAM(ORB-SLAM, SVO等)や映像特徴学習(SuperPoint等)を用いた自己位置推定link.springer.com IMU・LiDARとのマルチセンサ融合による位置推定強化link.springer.com 経路計画は3Dポテンシャル法やサンプリング リアルタイム動的障害回避(深層強化学習等) Liu et al. (2025)link.springer.comlink.springer.com

※ <sup>†</sup>屋内ロボットでは、BIM(建築情報モデル)等の事前環境情報を活用する研究も存在するmdpi.com

最新の研究動向

直近3年の研究では、深層学習や大規模言語モデル(LLM)の活用拡大が際立つ。経路計画では、従来型アルゴリズムに加え、深層強化学習や模倣学習によるエンドツーエンド制御の研究が進んでおりlink.springer.com、特に動的・複雑環境下で従来手法を超える柔軟な走行が期待される。一方で、Wagaらは伝統手法と深層学習手法のトレードオフに注目し、ハイブリッド手法が今後の鍵と位置付けているlink.springer.comLLMは自然言語指令をナビゲーション行動に変換する可能性が示されており、WagaらもLLMを用いたインタラクティブな移動技術の展開に期待を述べているlink.springer.comlink.springer.com。また、マルチロボット協調フリート学習(複数機間での情報共有・学習)にも関心が高まり、Chenら(2024)のレビューでは自律移動ロボット群の協調戦略とその通信・計画法が体系的に整理されているsciencedirect.com

その他、SLAM分野ではアクティブSLAM(自己探索によるマッピング最適化)や長期運用(地図の継続的更新)といった課題に対する研究が増えている。Teach & Repeatでは、環境変化に強いロバスト制御や、低品質センサを用いた簡易実装などがテーマとなっている。ドローン分野では、GPS非依存ナビゲーション(視覚/LiDAR融合)技術が急速に進展しており、多様なセンサや深層学習によって低テクスチャ・屋内環境でも安定した飛行を実現する手法が報告されているlink.springer.comlink.springer.com

課題と今後の展望

自律走行技術には各種課題が残っており、今後の研究動向はそれらの克服に向けられている。SLAMでは、累積誤差(ドリフト)の制御や動的障害物・環境変化への対応が問題であり、高速・高精度なマッピングの研究が求められているsciencedirect.comlink.springer.com。経路計画では、計算複雑度とリアルタイム性の両立が難しく、Redaらはメタヒューリスティックによる高速近似が有効であると指摘しているsciencedirect.com。また、強化学習手法はサンプル効率の悪さや安全性保証が課題であり、逐次学習や転移学習、物理的安全域の導入などが検討されている。センサ融合ではキャリブレーションリアルタイム処理の複雑さが問題となるほか、Yeongらが指摘するようにシステムの透明性(説明可能性)も確保すべき課題であるmdpi.com。さらに、複数の目的(効率・安全・快適性など)を同時に考慮したマルチモーダル計画や、未知環境・未知状況下でのロバスト性強化も重要な今後の課題とされるlink.springer.commdpi.com

これらを踏まえ、将来の研究では以下の方向性が期待される。学習ベース手法では、シミュレーションデータと実機データを組み合わせたシミュレータ活用、限られた実環境データから学習可能な自己教師あり学習などが推進されている。農業や屋内外の各分野では、環境ごとの固有性(地形、照度、障害物パターンなど)を考慮したアダプティブ制御ハイブリッドセンシングが重要になる。さらに、ロボット間・車車間通信による協調ナビゲーションや5G/V2Xを活用した低遅延制御も研究が進むだろう。総じて、自律走行システムは伝統的手法と最新AI技術の融合によって飛躍的な進歩を遂げつつあり、安全性・信頼性の強化を図りながら、より複雑な実環境での完全自律化を目指した研究が継続的に行われているsciencedirect.comlink.springer.com

まとめ

自律走行に関する研究は、SLAMや経路計画、学習手法、センサ融合といった多面的な技術領域を包含する。近年は深層強化学習やLLMなどAI技術の導入が進みつつも、古典的手法の安定性や解釈性も重視されており、ハイブリッドアプローチが主流になりつつあるlink.springer.comlink.springer.com。応用分野別に見ると、自動運転車ではセンサフュージョンと高度な予測制御、屋内ロボットでは意味理解・学習制御、農業機械では地形適応と精密測位、ドローンでは視覚ナビゲーションとマルチセンサ融合がそれぞれ鍵となる。今後は各技術の弱点(誤差蓄積や計算資源、高次元パラメータ調整など)を解消する研究が進むとともに、分野横断的な協調制御・学習共有や、安全性・説明可能性の向上といった課題にも取り組まれる見込みである。

参考文献: 上記で引用した代表的研究sciencedirect.comsciencedirect.comsciencedirect.comarxiv.orgmdpi.compmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.govmdpi.commdpi.comlink.springer.com等。