TIG溶接とは

TIG溶接は「Tungsten Inert Gas Welding」の省略形であり、日本語では「タングステン非活性ガス溶接」とも呼ばれます。

TIG溶接はタングステン電極を使用して溶接を行う溶接プロセスです。電極のタングステン棒からアークが放電され、非活性ガス(通常はアルゴンガス)で保護された環境下で溶接が行われます。溶接材料を必要に応じて供給しながら、被溶接材料同士を溶かし合わせます。

直流TIGアーク溶接ではアークは電極棒と母材の間に、+のイオンとーの電子の電子を発生させて生じる電気の流れで形成されます。

 

一方で被覆アーク溶接母材と同じ材質の金属棒を心線(電極)として、心線と母材との間にアークを発生させ、それを熱源として溶接する方法です。

心線の被覆から発せられる保護ガスや、スラグと呼ばれる非金属物質で金属を覆って溶接します。
そうすると風の影響を受けづらく、大気中から酸素や窒素の侵入を防げるので、アークの集中性と安定性を良くすることができます。

屋内でも屋外でも手軽に行うことが可能です。

シールドガスの送給

TIG溶接におけるシールドガスの送給タイミングは、以下の手順に従って行われます:

アーク起動前のプリフロー: 溶接作業を始める前に、アークを起動する前にシールドガスを供給します。これにより、溶接部周辺の酸素や空気成分を排除し、溶接部の保護を確保します。通常、数秒間供給されます。

アーク安定時のメインガス: アークが安定し、溶接作業が本格的に開始されると、メインガスがシールドガスとして供給されます。メインガスは、アーク周囲を包み込むように供給され、溶接部の保護を維持します。

アーク終了後のアフターガス: 溶接作業が終了した後も、アフターガスとしてシールドガスを供給します。これにより、溶融プールが急速に冷却され、酸素や空気の侵入を防ぎます。アフターガスは、アーク終了後の数秒間から数十秒間供給されることがあります。

溶接電流の変化

溶接開始時や終了時の電流の変化は、溶接プロセスにおいて特定の効果をもたらします。以下に、溶接開始時と終了時の電流変化とそれに伴う効果を説明します:

溶接開始時の電流変化:

スタートパルス: 溶接開始時には、スタートパルスと呼ばれる低電流のパルスを使用することが一般的です。スタートパルスは、アークを安定させるために短い時間だけ低電流を供給します。これにより、電極先端の汚染や酸化を最小限に抑え、溶接開始部の溶け落ちを防ぎます。
ソフトスタート: 一部の溶接装置には、ソフトスタート機能が備わっています。ソフトスタートは、電流を徐々に上げることで溶接開始部の溶け落ちを防ぎます。急激な電流変化は溶け落ちを引き起こす可能性があるため、ソフトスタートはより滑らかな溶接開始を実現します。
溶接終了時の電流変化:

パルスダウン: 溶接終了時には、パルスダウンと呼ばれる電流を徐々に下げるプロセスが使用されます。パルスダウンにより、溶融プールの急激な冷却を防ぎ、亀裂や収縮応力の発生を抑えます。また、溶接終了部の溶け落ちや欠陥のリスクを軽減する効果もあります。
クーリングパターン: 一部の溶接装置では、クーリングパターンの設定が可能です。クーリングパターンは、溶接終了時の電流変化を制御し、冷却速度や溶接部の形状を調整します。適切なクーリングパターンの選択により、溶接終了部の品質を向上させることができます。
溶接開始時と終了時の電流の変化は、溶接部の品質と安定性に直接影響を与えます。適切な電流制御により、溶け落ちや欠陥のリスクを最小限に抑え、溶接部の均一性と耐久性を向上させることができます。

TIG溶接用タングステン電極の種類と特徴

 

今回はTIG溶接(アルゴン溶接)でアークを発生させる電極、

タングステン電極の種類と用途についてまとめてみます。

  • 純タングステン電極(緑)
  • 2%酸化トリウム入りタングステン電極(赤)
  • 2%酸化セリウム入りタングステン電極(灰)
  • 2%酸化ランタン入りタングステン電極(黄緑)

この4種についてなるべくわかりやすく説明していきたいと思います。

●純タングステン電極(緑)

直流TIG溶接使用時では、アークの安定性は良いけれど、

アークスタートの起動性が他の酸化物が入っている電極と比べて劣ります。

交流TIG溶接ではアークの安定性が良い。

アークを発生させると電極の先端が半球状に丸くなりますが、

丸くなった後ははとんど形状が変化しない特徴があります。

アークスタートさせて先端が丸くなった後形状変化しない事から

電極の消耗が激しい、交流TIG溶接用(アルミの溶接)に使用されていて、

直流TIG溶接で使用することはほとんどありません。

●2%酸化トリウム入りタングステン電極(赤)

直流TIG溶接使用時は、純タングステン電極に比べると、電極先端の消耗が少なく、

アークスタートの起動性に優れています。

交流TIG溶接に使用すると、電極先端が連なったコブ状に変化しやすく、

そのためアークが偏ったり、形成されたコブが溶接部に溶け落ち

溶接不良になる事から、交流TIG溶接にはお薦めしません。

●2%酸化セリウム入りタングステン電極(灰)

アークの起動性、電極の耐消耗性が直流TIG溶接、交流TIG溶接使用時どちらも

トリウム入りタングステン電極より優れています。

交流TIG溶接時においては、アークを発生させると電極の先端が半球状となり、

純タングステン電極より先端部の変化が小さいので、

直流、交流TIG溶接共にアークの集中性、安定性が優れている、オールマイティな電極と言えます。

●2%酸化ランタン入りタングステン電極(黄緑)

アークの起動性、が直流、交流TIG溶接共に優れている。

特に直流TIG溶接時の耐消耗性、長時間連続溶接でも電極の先端形状変化が

少なく、アークの安定性が優れているので、ロボット等での自動溶接が有効です。

交流TIG溶接ではアークの集中制が劣るので、交流TIG溶接で

使用されるケースはほとんどありません。

引用:TIG溶接用タングステン電極の種類と特徴

 

参考資料

TIG溶接研修実施報告

これから TIG 溶接作業に携わる人の ための実習作業テキスト

TIG溶接とは(初心者向け)|上達のコツや基本知識を徹底解説

アーク溶接とティグ(TIG)溶接の違いは知っていますか。【徹底解説】