与えることが望ましい結果を生むかどうかは、その「与え方」にもよるのだ。
これは与えることの重要な特徴の一つで、これから本書を読んでいく中で常に念頭に置いてもらいたい事でもある。
人を思いやることが、成功と相容れない場合もあるだろう。
一方が得をすれば他方が損をするというゼロサムゲームや、どちらか一方が勝つか負けるかという関係では、与えることが利益をもたらすことはまずない。
しかし、世の中の大半はゼロサムゲームではない。
最終的にギバーは見返りを手にすることになるといってよい。
冒頭の投資家ホーニックの場合も、自己犠牲的に思える決断が自分に有利に働いた。
短期的には、ホーニックは損をしたように見えたに違いない。
確かに、ギバーが好意と信頼を築き上げるのには時間がかかるが、最後には、成功へと導いてくれる評判と人間関係をつくることができるのだ。
事実ギバーであることの恩恵は時間とともに大きくなっていく。
もちろんリスクもあるが、長い目で見れば、素晴らしい結果をもたらしうるのだ。
ジョワ・ド・ビーブル・ホテルを創業した著名な起業家チップ・コンリーは、こう説明する。
「ギバーであることは100メートル走では役に立たないが、マラソンでは大いに役立つ」
成功するギバーになるための条件
・他者志向になる
テイカーが利己的で、成功できないギバーが自己犠牲的なら、成功するギバーは他者志向的といっていいだろう。
自分を犠牲にして与えていれば、すぐにボロボロになってしまうだろう。
「他者志向」になるということは、受け取るより多くを与えても、けっして自分の利益は見失わず、それを指針に、「いつ、どこで、どのように、誰に与えるか」を決めることなのである。
他者への関心に自己への関心がかなり結びつけば、ギバーは燃え尽きたりやけどをしたりすることが少なくなり、成功しやすくなる。
・燃え尽きることを避ける。
ギバーが燃え尽きるのは、与えすぎた事よりも、与えたことでもたらされた影響を、前向きに認めてもらえていないことが原因なのである。
ギバーは、与えることに時間とエネルギーを注ぎ込みすぎるせいで燃え尽きるのではない。困っている人をうまく助けてやれないときに、燃え尽きるのである。
人助けはまとめてやる。
一日に一つずつ与えるよりも、一日に五つまとめて与えた人のほうが幸福度が増したのだ。
百時間ルールを決めておく。
このラインを限度に設定しておけば、大きなパワーが得られ、疲労感が最もすくないのである。
・自己犠牲から楽しみへ
心理学者のネッタ・ウェインスタインとリチャード・ライアンは、与えることによって気力が回復するのは、義務感からするのではなく、楽しく有意義だと感じる場合に限ることを証明した。
自己犠牲タイプのギバーは他者志向のギバーより助けを受けることがはるかに少ないのを発見しており、そしてそれは、精神的にも肉体的にもダメージを及ぼすことがわかっている。