(ア)
「荷重を増大させていくと、建物は多くの部材が降伏し、荷重が上がらなくなり大きく変形します。最後は建物が倒壊してしまいます。このときの荷重が弾性荷重です。」
これは誤りです。弾性荷重とは、弾性変形のみが生じる荷重のことであり、降伏や倒壊を伴う荷重は塑性荷重や破壊荷重に分類されます。
(イ)
「非常に大きな力で棒を引っ張ると、最後は引きちぎれてしまいます。これを破断と呼んでいます。破断は、引張応力度がその材料固有の固有振動数に達したために生じたものです。」
これは誤りです。破断は材料が引張応力に耐えられなくなった際に起こりますが、固有振動数とは無関係です。固有振動数に関する破壊は「共振」による破壊です。
(ウ)
「細い棒の両端を押すと、押している途中で、急に力とは直交する方向に変形してしまうことがあります。この現象を座屈と呼んでいます。」
これは正しいです。座屈は、圧縮荷重により細長い部材が不安定に変形する現象であり、押される方向と直交する方向に変形します。
(エ)
「太く短い棒の両端を押すと、破断強度までじわじわ縮んで、最後は圧壊します。」
これは正しいです。太く短い棒の場合、圧縮によって破壊が進み、最終的には圧壊します。
(オ)
「建物に加わる力を荷重、また荷重を支える要求を部材あるいは構造材料と呼びます。」
これは正しいです。荷重は構造に加わる力であり、これを支える構造要素が部材や構造材料と呼ばれます。
[解答:③]
もっと知るには・・・
座屈はなぜ押される方向と直交する方向に変形するのですか?
座屈(ざくつ)は、圧縮荷重が細長い部材に加わったときに、押される方向に対して直交する方向に不安定な変形が生じる現象です。これは以下のような理由で起こります。
1. 圧縮荷重による不安定性
細長い部材(例えば細い柱や棒)に圧縮荷重が加わると、部材全体が短くなる方向に力が働きます。しかし、圧縮荷重が一定の限界を超えると、部材がそのままの形で圧縮に耐えられなくなり、横方向に変形して不安定になります。このような不安定性のために、部材が急に変形する方向を選ぶことになります。
2. 曲げ剛性の影響
座屈は、圧縮荷重によって発生する曲げの影響も大きく受けます。圧縮荷重がかかると、部材にはわずかな曲げ変形が生じます。この曲げ変形が荷重の増加に伴って大きくなり、やがて安定を失い、押される方向とは異なる横方向に大きく変形します。
3. エネルギー的な安定性
座屈が生じる際、部材はより低いエネルギー状態を取ろうとします。圧縮荷重が一定の限界を超えると、元の直線の形状を保つよりも、横方向に変形する方が安定になるため、直交する方向に変形が起こります。この現象は「弾性座屈」とも呼ばれ、特に細長い部材において顕著です。
まとめ
座屈が発生するのは、圧縮荷重が限界を超えたときに、押される方向ではなく直交する方向に変形することでエネルギー的に安定するためです。また、細長い形状の部材では、曲げ剛性が小さいため、圧縮荷重に対して横方向に変形しやすくなります。このため、座屈が押される方向と直交する方向に変形するという特性が現れます。
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