政府が2050年のカーボンニュートラル(二酸化炭素<CO2>排出実質ゼロ)を表明したことにより、日本全体のCO2排出の約4割を占めている電力分野における排出削減の重要性が高まっている。
その成否のカギが、太陽光など再生可能エネルギーのさらなる導入拡大だ。

ここで独自のデジタル技術を持つベンチャー企業がイノベーションを先導している。
福岡市に本社を置くアークエルテクノロジーズ(宮脇良二・代表取締役CEO)は、制電力市場において格安価格で取引されている電力に着目。
料金プランを創設し、安くてクリーンな電力を必要とするユーザーへの販売を20年11月から九州地区でスタートさせた。

月額1,000円(税別)のサービス料支払いを条件に、電力会社間で取引される卸電力市場の価格のまま、電力をユーザーに提供する。
卸電力市場の価格は30分ごとに変動する。

ユーザーは価格変動リスクを背負う代わりに、うまく購入すれば、電気代を大幅に削減できる。

例えば、電力需要の少ない春や秋などの休日で、晴天の日中などには、太陽光発電の発電量が急増し、卸電力市場の価格(九州地区)は1キロワット時1銭という破格の安値に張り付く。
この時間に発電しているのは、再エネや原子力などCO2を発生させない設備だけなので、安くてフリーの電力購入が可能だ。

電気自動車(EV)のユーザーやオール電化住宅の居住者の場合、使用料が多いためとくにコストメリットが大きい。
アークエルは端末(エッジ)に搭載したAI(人工知能)を活用して学習したユーザーの行動様式から、ユーザーに割安となる時間帯と価格を割り出して前日午後6時に通知し、電力の利用や充電を促す。

エッジAIを活用した仕組みは、東京大学先端科学技術研究センターの辻慎吾・特任助教と連携して開発した。

発電事業者と直接取引

独自のデジタル技術を用い、発電事業者とユーザーが再エネ由来の電力を直接取引する取り組みも21年1月に始まる。
京セラは、電力ベンチャーのデジタルグリッド(豊田祐介社長)が構築した取引システムを活用。

自社社員宅の固定価格買い取り制度(FIT)の期限が過ぎた家庭用太陽光発電(卒FIT)の余剰電力および新たに建設する非FITの太陽光発電所の電力を集めて、横浜市内の事業所で使用する。

デジタルグリッドの取引システムは発電事業者と京セラのようなユーザー企業を取り持ち、電力を取引する市場の役割を果たす。
発電事業者とユーザーが直接契約を結ぶ一方、デジタルグリッドは取引システム利用の対価として手数料を受け取る。
電力会社から購入する場合と異なり、マージンがないため、売り手、買い手ともメリットがある。

京セラにとってこの取り組みは自社製太陽光発電システムの販売促進とともに、自社の温室効果ガス削減目標の達成に寄与する。
こうした「再エネ×デジタル」はあらたな潮流になりつつある。

東京電力も21年度上期中に、電化設備の新しいサブスクリプション型サービスを導入する。
EVや蓄電池などを備えている家庭を主な対象に想定している。

 

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