令和6年度 技術士第一次試験 専門科目(機械) 全35問解説

技術士第一次試験の専門科目(機械部門)は毎年35問出題されます。このページでは令和6年度に出題された35問全問を、材料力学・機械力学制御・熱工学・流体工学の4分野に分けて1ページにまとめて解説しています。個別の問題番号で検索して来られた場合は、目次または該当する見出しへ直接ジャンプしてください。答え合わせだけでなく、「なぜその式・考え方を使うのか」という道筋を重視しています。

問題と正答の出典は、公益社団法人日本技術士会が公表している令和6年度技術士第一次試験の試験問題・正答です。解答の道筋と解説は筆者が独自に作成しました。専門科目は35問の中から25問を選んで解答します。

目次

材料力学

Ⅲ-1 並列組合せ棒の引張(剛体板で結合)

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-1

問題の要旨:直径 $D$、長さ $l$ の丸棒3本(上下の棒1・棒3は縦弾性係数 $E_1$、中央の棒2は $E_2$)が左端で壁に固定され、右端は剛体板で結合されている。剛体板に右向き荷重 $P$ をかけたとき、棒1の応力 $\sigma_1$ と棒2の応力 $\sigma_2$ を求める。剛体板は壁と常に平行。

解説

剛体板が平行を保つので、3本の伸びは等しく、長さも同じなのでひずみ $\varepsilon$ も共通(変形の適合条件)。

断面積 $A=\pi D^2/4$ とすると力のつり合いは

$$P = 2\sigma_1 A + \sigma_2 A = (2E_1 + E_2)\,\varepsilon A$$

よって $\varepsilon = \dfrac{4P}{\pi D^2(2E_1+E_2)}$。

$$\sigma_1 = E_1\varepsilon = \frac{4E_1P}{\pi D^2(2E_1+E_2)}$$
$$\sigma_2 = E_2\varepsilon = \frac{4E_2P}{\pi D^2(2E_1+E_2)}$$

分母に $2E_1$ が現れるのは、$E_1$ の棒が2本あるため。①は棒1・3を1本分しか数えていない誤り。

ポイント

並列棒は「ひずみ共通・荷重は剛性 $EA$ の比で分担」。本数(2本)の数え落としが典型的なひっかけ。

[解答]②

Ⅲ-2 直列棒の熱応力(両端固定)

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-2

問題の要旨:長さ $l$ の棒1($E_1, A_1, \alpha_1$)と棒2($E_2, A_2, \alpha_2$)を直列に接合し、両端を剛体壁で無理なく(初期応力なしで)固定する。両棒の温度を $\Delta T$ 上げたときの棒1の応力 $\sigma_1$ を求める。

解説

両端固定なので全長は変わらない。両棒には同じ軸力 $N$(圧縮を正)が生じる。

自由熱膨張量と圧縮による縮み量が等しい:

$$\alpha_1 l\Delta T + \alpha_2 l\Delta T = \frac{Nl}{E_1A_1} + \frac{Nl}{E_2A_2}$$
$$N = \frac{(\alpha_1+\alpha_2)E_1E_2A_1A_2}{A_1E_1 + A_2E_2}\Delta T$$

棒1の応力(引張を正)は $\sigma_1 = -N/A_1$:

$$\sigma_1 = \frac{-(\alpha_1+\alpha_2)A_2E_1E_2}{A_1E_1 + A_2E_2}\Delta T$$
  • ①⑤:$(\alpha_1-\alpha_2)$ は両棒が「並列」の場合の形。直列では膨張量は足し合わさる
  • ②:符号は正しいが $(\alpha_1-\alpha_2)$ が誤り
  • ③:分母が差になっており誤り(直列ばねのコンプライアンスは和)

ポイント

直列両端固定:膨張量は「和」、軸力は共通、応力は面積で割る。並列(組合せ棒)では $(\alpha_1-\alpha_2)$ が出る、と区別して覚える。加熱で圧縮になるので負号付き。

[解答]④

Ⅲ-3 単純支持はり・半スパン等分布荷重の曲げモーメント

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-3

問題の要旨:長さ $l$ の単純支持はり AB(A:ピン、B:ローラ)で、中央点 C から B までの区間($l/2$)に単位長さ当たり $q$ の等分布荷重が作用する。点 C の曲げモーメント $M$ を求める。

解説

分布荷重の合力は $ql/2$、作用点は B から $l/4$(A から $3l/4$)。

B まわりのモーメントのつり合いから A の反力:

$$R_A\, l = \frac{ql}{2}\cdot\frac{l}{4}\ \Rightarrow\ R_A = \frac{ql}{8}$$

AC 区間には荷重がないので、C の曲げモーメントは A 側から

$$M_C = R_A\cdot\frac{l}{2} = \frac{ql^2}{16}$$

(B 側から計算しても $R_B=3ql/8$ より $R_B\cdot\frac{l}{2}-\frac{ql}{2}\cdot\frac{l}{4}=\frac{ql^2}{16}$ で一致。)

ポイント

全スパン等分布の中央モーメント $ql^2/8$ の半分になる(重ね合わせで左右対称の半分ずつと考えても良い)。反力は「荷重の合力と重心位置」で求める。

[解答]②

Ⅲ-4 断面形状の異なる片持ちはりの最大曲げ応力比

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-4

問題の要旨:同材質・同長さ $l$ の片持ちはり A(高さ $h$、幅 $2b$)と B(高さ $2h$、幅 $b$)の先端に同じ荷重 $P$。最大曲げ応力の比 $\sigma_A:\sigma_B$ を求める。$I=bh^3/12$ が与えられている。

解説

最大曲げモーメントはどちらも固定端で $M=Pl$。最大曲げ応力は $\sigma=M/Z$、長方形断面の断面係数 $Z=bh^2/6$。

  • A:$Z_A = \dfrac{2b\cdot h^2}{6} = \dfrac{bh^2}{3}$
  • B:$Z_B = \dfrac{b(2h)^2}{6} = \dfrac{2bh^2}{3}$
$$\sigma_A:\sigma_B = \frac{1}{Z_A}:\frac{1}{Z_B} = 2:1$$

断面積は同じでも、高さ方向に寸法を取った B の方が $Z$ が2倍で応力は半分。

ポイント

$Z\propto bh^2$:高さを2倍にすると応力は1/4、幅を2倍にすると1/2。同じ材料ならはりは「縦置き」が有利。たわみは $I\propto bh^3$ で効くので差はさらに大きい(4倍)。

[解答]③

Ⅲ-5 片持ちはりの先端たわみ:集中荷重と等分布荷重

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-5

問題の要旨:曲げ剛性 $EI$、長さ $l$ の片持ちはりで、(a)自由端 A に集中荷重 $P$、(b)全長に等分布荷重 $q$。両者の自由端たわみが等しくなる $P$ と $q$ の関係を求める。

解説

片持ちはり先端たわみの公式:

  • 集中荷重:$\delta_a = \dfrac{Pl^3}{3EI}$
  • 等分布荷重:$\delta_b = \dfrac{ql^4}{8EI}$

$\delta_a=\delta_b$ とおくと

$$\frac{Pl^3}{3} = \frac{ql^4}{8}\ \Rightarrow\ P = \frac{3}{8}ql$$

全荷重 $ql$ を先端に集中させると $P=ql$ でたわみは $8/3$ 倍になる。分布荷重は固定端寄りの荷重がたわみにあまり効かないため、等価な集中荷重は全荷重の3/8で済む。

ポイント

片持ち先端たわみ $Pl^3/3EI$、$ql^4/8EI$ は丸暗記。⑤や②の $5/8$ は単純支持はりの $5ql^4/384EI$ と混同したひっかけ。

[解答]①

Ⅲ-6 端末条件と座屈荷重(オイラー座屈)

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-6

問題の要旨:曲げ剛性 $EI$、長さ $L$ の長柱で、端部条件を変えた座屈荷重を比較する。Z の座屈荷重を $P_Z\fallingdotseq 2\pi^2EI/L^2$ としたとき、A、B、C の座屈荷重 $P_A, P_B, P_C$ を $P_Z$ で表す。

解説

図から読み取った端部条件と、オイラーの式 $P_{cr} = n\pi^2EI/L^2$($n$:端末条件係数):

  • Z:上端ピン(回転自由・横移動拘束)、下端固定 → $n\approx2.046\approx2$(題意の $P_Z$ と一致)
  • A:上端自由、下端固定(旗竿) → $n=1/4$ → $P_A = \dfrac{\pi^2EI}{4L^2} = 0.125P_Z$
  • B:両端ピン → $n=1$ → $P_B = \dfrac{\pi^2EI}{L^2} = 0.5P_Z$
  • C:両端固定 → $n=4$ → $P_C = \dfrac{4\pi^2EI}{L^2} = 2P_Z$

この組合せは④。

ポイント

端末条件係数 $n$ = 1/4(固定-自由)、1(ピン-ピン)、約2(固定-ピン)、4(固定-固定)。座屈長さ $L_k = L/\sqrt{n}$ でも覚えられる(2L, L, 0.7L, 0.5L)。

[解答]④

Ⅲ-7 薄肉球殻の周方向応力

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-7

問題の要旨:内径 $d=8.0$ m、肉厚 $t=4.0$ mm の薄肉球殻容器に内圧 $p=1.0$ MPa が作用するとき、円周方向応力 $\sigma_\theta$ を求める。

解説

球殻を中心を通る面で半分に切り、内圧による力と殻断面の力をつり合わせる:

$$p\cdot\frac{\pi d^2}{4} = \sigma_\theta\cdot \pi d\, t\ \Rightarrow\ \sigma_\theta = \frac{pd}{4t}$$

単位を mm にそろえて代入:

$$\sigma_\theta = \frac{1.0\times 8000}{4\times 4.0} = 500\ \text{MPa}$$

ポイント

薄肉円筒の周方向応力は $pd/2t$、軸方向は $pd/4t$、球殻は全方向 $pd/4t$。円筒の式で計算すると1000 MPa(④)になるので注意。直径(m)と肉厚(mm)の単位換算ミスにも注意。

[解答]②

Ⅲ-8 材料の力学的性質と試験法

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-8

問題の要旨:A群の性質(①硬さ ②縦弾性係数 ③延性-脆性遷移温度 ④降伏点 ⑤S-N線図)のうち、B群の試験(引張試験、疲労試験、クリープ試験、シャルピー衝撃試験、破壊靱性試験)の中に評価に適した試験がないものを選ぶ。

解説

  • ① 硬さ:ブリネル・ビッカース・ロックウェル等の硬さ試験で評価する。B群に硬さ試験はない → 該当
  • ② 縦弾性係数:引張試験の応力-ひずみ線図の弾性域の傾きから求める → 引張試験
  • ③ 延性-脆性遷移温度:温度を変えてシャルピー衝撃試験を行い、吸収エネルギーや破面率の変化から求める → シャルピー衝撃試験
  • ④ 降伏点:引張試験で求める → 引張試験
  • ⑤ S-N線図:応力振幅と破断繰返し数の関係で、疲労試験で求める → 疲労試験

ポイント

硬さは引張強さと相関はあるが、評価は専用の硬さ試験で行う。工作現場では焼入れ品の受入れでロックウェル C スケールを測ることが多い。

[解答]①

Ⅲ-9 両端固定軸のねじり(不静定)

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-9

問題の要旨:直径 $d$ の丸棒の両端 A、B が固定され、A から $l_1$、B から $l_2$ の断面 C に直径 $D$ の円盤が同軸に接合されている。円盤の直径両端に逆向きの接線力 $P$(偶力)が作用する。丸棒の最大せん断応力 $\tau_{\max}$ と、A 端に対する C 断面のねじれ角 $\phi_C$ を求める。$l_1>l_2$、横弾性係数 $G$。

解説

円盤に作用するトルクは $T = P\cdot D$(偶力:力 $P$ × 腕の距離 $D$)。

A 側区間のトルクを $T_A$、B 側区間を $T_B$ とすると $T_A + T_B = T$。C のねじれ角は両区間で共通なので

$$\frac{T_A l_1}{GI_p} = \frac{T_B l_2}{GI_p}\ \Rightarrow\ T_A = \frac{l_2}{l_1+l_2}T$$
$$T_B = \frac{l_1}{l_1+l_2}T$$

$l_1>l_2$ より短い BC 区間の方が硬く、大きいトルク $T_B$ を受ける。最大せん断応力は $\tau = 16T/(\pi d^3)$ より

$$\tau_{\max} = \frac{16}{\pi d^3}\left(\frac{l_1}{l_1+l_2}\right)PD$$

ねじれ角は $I_p = \pi d^4/32$ を使って

$$\phi_C = \frac{T_A l_1}{GI_p} = \frac{32}{\pi d^4}\left(\frac{l_1l_2}{l_1+l_2}\right)\frac{PD}{G}$$

②は $\tau_{\max}$ を長い側の区間で計算した誤り。

ポイント

両端固定のトルク分担は長さの逆比(短い側が多く負担)。円盤の偶力のトルクは $P\times D$(半径ではなく直径)である点に注意。

[解答]①

Ⅲ-10 2軸応力状態の傾斜面応力

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-10

問題の要旨:微小要素に $\sigma_x = 30.0$ MPa、$\sigma_y = 10.0$ MPa の引張応力が作用(せん断応力なし)。y 軸から 30° 傾いた傾斜面 a-a′ に作用する垂直応力 $\sigma_a$ とせん断応力 $\tau_a$ の大きさを求める。

解説

傾斜面 a-a′ は y 軸から 30° 傾いているので、面の法線は x 軸から $\theta = 30°$ 傾く。

$$\sigma_a = \sigma_x\cos^2\theta + \sigma_y\sin^2\theta$$
$$= 30\times0.75 + 10\times0.25 = 25.0\ \text{MPa}$$
$$|\tau_a| = \frac{\sigma_x-\sigma_y}{2}\sin2\theta$$
$$= 10\times\sin60° = 8.66\ \text{MPa}$$

モールの円(中心 20 MPa、半径 10 MPa)上で $2\theta=60°$ 回した点とも一致する。せん断応力の最大値は半径の 10 MPa なので、28.7 MPa を含む①④は即座に除外できる。

ポイント

$\sigma_\theta = \frac{\sigma_x+\sigma_y}{2}+\frac{\sigma_x-\sigma_y}{2}\cos2\theta$、$\tau_\theta = \frac{\sigma_x-\sigma_y}{2}\sin2\theta$。角度は「面の法線と x 軸のなす角」で取ること。モールの円の半径を超えるせん断応力は存在しない。

[解答]⑤

機械力学・制御

Ⅲ-11 状態方程式から伝達関数

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-11

問題の要旨:$$\dot{x} = \begin{bmatrix}0&1\\-6&-5\end{bmatrix}x$$$$+ \begin{bmatrix}0\\1\end{bmatrix}u$$、$y=[1\ 0]x$ で表される2次系の伝達関数 $G(s)$ を求める。

解説

$G(s) = C(sI-A)^{-1}B$。

$$sI-A = \begin{bmatrix}s&-1\\6&s+5\end{bmatrix}$$
$$\det = s^2+5s+6$$
$$(sI-A)^{-1}B = \frac{1}{s^2+5s+6}\begin{bmatrix}1\\s\end{bmatrix}$$

$C=[1\ 0]$ で第1成分を取り出して

$$G(s) = \frac{1}{s^2+5s+6}$$

別解:$x_1=y$、$\dot x_1 = x_2$、$\dot x_2 = -6x_1-5x_2+u$ より $\ddot y + 5\dot y + 6y = u$。ラプラス変換して同じ結果。

  • ①②:伝達関数が分子に多項式(非プロパー)になることはない
  • ④:符号の誤り($A$ の最下行が $-6,-5$ なので特性多項式は $s^2+5s+6$)
  • ⑤:伝達関数は $A,B,C$ だけで決まり、状態の値は不要

ポイント

可制御正準形では、$A$ の最下行の符号を反転したものが特性多項式の係数になる($-a_0, -a_1$ → $s^2+a_1s+a_0$)。極は $-2,-3$ で安定。

[解答]③

Ⅲ-12 逆ラプラス変換(複素共役極)

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-12

問題の要旨:$F(s) = \dfrac{s+1}{s^2+4s+5}$ の逆ラプラス変換 $f(t)$ を求める。$e^{\alpha t}$、$\sin\omega t$、$\cos\omega t$ の変換表が参考として与えられている。

解説

分母を平方完成:$s^2+4s+5 = (s+2)^2+1$。分子を $s+2$ を使って書き換える:

$$F(s) = \frac{(s+2)-1}{(s+2)^2+1}$$
$$= \frac{s+2}{(s+2)^2+1}-\frac{1}{(s+2)^2+1}$$

推移定理($F(s+a)\leftrightarrow e^{-at}f(t)$)と、$\omega=1$ の $\cos$、$\sin$ の変換表から

$$f(t) = e^{-2t}\cos t-e^{-2t}\sin t$$
$$= e^{-2t}(\cos t-\sin t)$$
  • ②③:$e^{2t}$ は極の実部 $-2$ と符号が逆
  • ④:角周波数は $\sqrt{5-4}=1$ で 2 ではない
  • ⑤:減衰率 $-1$ は分子の零点と混同している

ポイント

複素共役極は「平方完成 → 分子を $(s+a)$ と定数に分ける → 推移定理」が定石。$f(0)=\lim_{s\to\infty}sF(s)=1$ で選択肢を絞る(①④⑤が $f(0)=1$)方法も有効。

[解答]①

Ⅲ-13 伝達関数の極と安定性

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-13

問題の要旨:伝達関数 $G(s)=\dfrac{s-2}{s^2+5s+6}$ をもつ系の安定性について、極・零点に着目した5つの記述から最も適切なものを選ぶ。

解説

線形系の安定性は極(分母 = 0 の根)で決まり、すべての極の実部が負なら安定である。零点(分子 = 0 の根)は安定性に関係しない。

分母を因数分解すると $s^2+5s+6=(s+2)(s+3)$ なので、極は $s=-2,\,-3$。どちらも負の実数だから系は安定である。

  • ① 極を +2, +3 としているが、符号が逆。誤り
  • ② 極は −2, −3 で安定。正しい
  • ③ 極はすべて負なのに「不安定」としている。誤り
  • ④ 零点は +2 だが、零点で安定性は決まらない。誤り
  • ⑤ 零点は −2 ではなく +2。理由づけも誤り

ポイント

安定性は極だけで決まる。右半平面に零点がある系(非最小位相系)は安定だが、ステップ応答が一度逆向きに振れる(逆応答)。「零点が正だから不安定」は典型的なひっかけ。

[解答]②

Ⅲ-14 フィードバック系の閉ループ伝達関数

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-14

問題の要旨:目標値 $R$ と出力 $Y$ の偏差 $E=R-Y$ をコントローラ $C(s)$ に入力し、その出力 $U$ に外乱 $D$ を加算したものを制御対象 $P(s)$ に入力する、単位フィードバック系を考える。$R$ から $Y$ への伝達関数 $G_{yr}(s)$ を求める。

解説

$D=0$ として、ブロック線図の関係を順にたどる。

$$E=R-Y,\quad U=CE$$$$Y=PU=PC(R-Y)$$

$Y$ について整理すると $(1+PC)Y=PCR$ となり、

$$G_{yr}=\frac{P(s)C(s)}{1+P(s)C(s)}$$

が得られる(相補感度関数)。

①・②は分母が $1-PC$ で、これは正帰還の場合の式。③ $P/(1+PC)$ は外乱から出力への $G_{yd}$。④ $C/(1+PC)$ は目標値から操作量への $G_{ur}$。

ポイント

「前向き経路の積 /(1 + 一巡伝達関数)」が基本形。負帰還なら分母は $1+L$ である。4つの伝達関数 $G_{yr},G_{yd},G_{ur},G_{ud}$ をまとめて覚えておくと、選択肢の消去が速い。

[解答]⑤

Ⅲ-15 ばね振り子のラグランジアン

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-15

問題の要旨:ばね定数 $k$、自然長 $L$ のばねの上端をピン支持し、下端に質量 $m$ のおもりを吊るした「ばね振り子」を考える。ばねの長さ $r$ と鉛直からの傾き角 $\theta$ を変数とし、平面内で運動する。ばねの質量や曲げは無視し、非保存力はないとして、ラグランジアンを選ぶ。

解説

ラグランジアンは $\mathcal{L}=T-V$(運動エネルギー − ポテンシャルエネルギー)である。

  • 運動エネルギー:極座標での速度は、半径方向 $\dot r$、周方向 $r\dot\theta$ の成分をもつ。よって $T=\frac12 m(\dot r^2+r^2\dot\theta^2)$
  • 重力ポテンシャル:支点を基準にすると、おもりの高さは $-r\cos\theta$。よって $V_g=-mgr\cos\theta$
  • 弾性ポテンシャル:伸びは自然長からの差 $(r-L)$ なので、$V_s=\frac12 k(r-L)^2$

以上から

$$\mathcal{L}=\frac12 m(\dot r^2+r^2\dot\theta^2)$$
$$+ mgr\cos\theta-\frac12 k(r-L)^2$$

①は $\theta$ 方向の運動と重力が抜けている。②は $r$ 方向の運動とばねが抜けている。③はばねの伸びを $r$ としていて、自然長を考慮していない。⑤は重力項の符号が逆である。

ポイント

ばねのエネルギーは「伸び」の2乗に比例するので、$(r-L)$ を使う。重力ポテンシャルの符号は、基準より下にあると負になる。

[解答]④

Ⅲ-16 はりの横振動の境界条件

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-16

問題の要旨:はりのたわみを $w(x)$ とし、次の3組の条件式を、固定端・単純支持端・自由端に対応づける。(A) $w=0,\ w^{\prime}=0$、(B) $w=0,\ w^{\prime\prime}=0$、(C) $w^{\prime\prime}=0,\ w^{\prime\prime\prime}=0$。

解説

各量の物理的な意味は次のとおり。$w$ はたわみ、$w^{\prime}$ はたわみ角、$EIw^{\prime\prime}$ は曲げモーメント、$EIw^{\prime\prime\prime}$ はせん断力である。

  • 固定端:たわみも傾きも拘束されるので $w=0,\ w^{\prime}=0$ → (A)
  • 単純支持端:たわみは拘束されるが回転は自由なので、モーメントが 0。よって $w=0,\ w^{\prime\prime}=0$ → (B)
  • 自由端:何も拘束されないので、モーメントもせん断力も 0。よって $w^{\prime\prime}=0,\ w^{\prime\prime\prime}=0$ → (C)

したがって (A) 固定端、(B) 単純支持端、(C) 自由端の組合せ①が正しい。

ポイント

「幾何学的条件($w,w^{\prime}$)」と「力学的条件($w^{\prime\prime},w^{\prime\prime\prime}$)」に分けて考えると覚えやすい。どの端でも条件はちょうど2つになる。

[解答]①

Ⅲ-17 減速する電車内の振り子(慣性力)

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-17

問題の要旨:電車が一定の大きさ $\alpha$ で減速しており、車内に吊るした質量 $m$ の振り子が進行方向へ 30° 傾いて静止している。$\alpha$ と糸の張力 $T$ を求める。

解説

車内(加速度系)から見ると、おもりには進行方向に慣性力 $m\alpha$ が働く。おもりは重力 $mg$、慣性力 $m\alpha$、張力 $T$ の3力でつり合っている。

  • 水平方向:$T\sin30^\circ=m\alpha$
  • 鉛直方向:$T\cos30^\circ=mg$

2式の比をとると $\alpha=g\tan30^\circ=\dfrac{g}{\sqrt3}$。

鉛直方向の式から $T=\dfrac{mg}{\cos30^\circ}=\dfrac{2}{\sqrt3}mg$。

(合力として $T=m\sqrt{g^2+\alpha^2}=mg\sqrt{4/3}$ と求めても同じ値になる。)

ポイント

$\tan\theta=\alpha/g$ と $T=m\sqrt{g^2+\alpha^2}$ を押さえておく。①の $(1+1/\sqrt3)mg$ は、力をベクトルではなくスカラーとして足したひっかけである。

[解答]②

Ⅲ-18 臨界減衰係数

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-18

問題の要旨:質量 $m=0.5$ kg、ばね定数 $k=800$ N/m のばね・質量・ダンパ系(摩擦のないガイド上を直線運動する)について、臨界減衰係数 $c$ に最も近い値を選ぶ。

解説

減衰比が $\zeta=1$ になる減衰係数を臨界減衰係数という。

$$c_c=2\sqrt{mk}=2m\omega_n$$

数値を代入すると $c_c=2\sqrt{0.5\times800}=2\sqrt{400}=40$ N·s/m。

(固有角振動数 $\omega_n=\sqrt{800/0.5}=40$ rad/s から $2m\omega_n=2\times0.5\times40=40$ としても同じ。)

ポイント

$c_c=2\sqrt{mk}$ と、減衰比 $\zeta=c/c_c$ はセットで覚える。$\sqrt{mk}$(= 20)だけを計算して③を選ぶのが典型的なミス。

[解答]④

Ⅲ-19 ピン支持剛体棒+ばねの固有角振動数

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-19

問題の要旨:密度 $\rho$、断面積 $A$、長さ $\ell$ の剛体棒を、一端 O でピン支持し、O から距離 $a$ の位置をばね $k$ で支える。O まわりの回転角を $\theta$ として、鉛直面内の運動方程式と固有角振動数 $\omega_n$ を求める。

解説

棒の質量は $m=\rho A\ell$。端点まわりの慣性モーメントは

$$J_O=\frac{m\ell^2}{3}=\frac{\rho A\ell^3}{3}$$

微小回転 $\theta$ でばねは $a\theta$ だけ伸縮するので、ばね力 $ka\theta$ による O まわりの復元モーメントは $ka^2\theta$ となる。重力は静的つり合いで打ち消されるので、運動方程式には現れない。

よって

$$\frac{\rho A\ell^3}{3}\ddot\theta+ka^2\theta=0,\qquad \omega_n=\sqrt{\frac{3ka^2}{\rho A\ell^3}}$$

②・④の係数 1/12 は、重心まわりの慣性モーメント。③・⑤は根号の中が分母と分子で逆になっている。

ポイント

端点まわりの慣性モーメントは $m\ell^2/3$、重心まわりは $m\ell^2/12$(平行軸の定理で $m\ell^2/12+m(\ell/2)^2$)。$\omega_n=\sqrt{\text{剛性}/\text{慣性}}$ の形かどうかで、すぐに消去できる。

[解答]①

Ⅲ-20 斜面ブロックへの完全弾性衝突

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-20

問題の要旨:なめらかな床に置いた質量 $2m$ の三角ブロック(斜面角 45°、斜面は左上を向く)に、質量 $m$ の質点が速さ $v_0$ で鉛直に落下し、完全弾性衝突する。衝突後のブロックの速度 $V$ と、質点の速度 $v_x,\,v_y$ を求める(x は右向き、y は上向きが正)。

解説

摩擦がないので、撃力 $J$ は斜面の法線方向に働く。法線の単位ベクトルは $\mathbf n=(-1,1)/\sqrt2$(左上向き)。質点は $+J\mathbf n$、ブロックは $-J\mathbf n$ の力積を受ける。ブロックは床に拘束されているので、床からの撃力が鉛直成分を打ち消し、水平成分だけが残る。

$j=J/\sqrt2$ とおくと、各速度は次のようになる。

  • 質点:$v_x=-j/m$、$v_y=-v_0+j/m$
  • ブロック:$V=j/(2m)$

完全弾性衝突なので運動エネルギーが保存される。$u=j/m$ とおくと

$$\tfrac12 m v_0^2=\tfrac12 m\{u^2+(v_0-u)^2\}$$
$$+ \tfrac12(2m)(u/2)^2$$
$$\Rightarrow\ \tfrac52u^2-2v_0u=0\ \Rightarrow\ u=\tfrac45v_0$$

よって $$V=\frac25v_0,\ v_x=-\frac45v_0,\ v_y=-\frac15v_0$$。

確認として、水平方向の運動量は $m(-\frac45v_0)+2m(\frac25v_0)=0$ で保存されている。また、法線方向の相対速度は衝突前 $-v_0/\sqrt2$、衝突後 $+v_0/\sqrt2$ となり、反発係数 1 も満たす。

ポイント

水平方向の運動量保存と、力積の向き(斜面の法線)だけで、選択肢を③か⑤まで絞れる。ブロックは質点から押されて右(+x)へ動くので、V が負の①・②・⑤は除外できる。

[解答]③

Ⅲ-21 ばね付き台車+振子の線形化運動方程式

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-21

問題の要旨:ばね $k$ につながれた質量 $M$ の台車が、なめらかな水平床上を動く。台車の点 C に、長さ $2\ell$、質量 $m$、重心まわり慣性モーメント $I$ の一様な棒が回転ジョイントで吊られている。一般化座標を $x$(C の変位)と $\theta$(棒の傾き)として、線形化した運動方程式の係数ア〜エを選ぶ。

解説

重心 G の位置は $(x+\ell\sin\theta,\ -\ell\cos\theta)$ である。各エネルギーは次のとおり。

$$T=\tfrac12M\dot x^2$$
$$+ \tfrac12m\{(\dot x+\ell\dot\theta\cos\theta)^2+(\ell\dot\theta\sin\theta)^2\}+\tfrac12I\dot\theta^2$$
$$V=\tfrac12kx^2-mg\ell\cos\theta$$

ラグランジュの方程式を立てると:

  • $x$ について:$$(M+m)\ddot x+m\ell\cos\theta\,\ddot\theta$$$$- m\ell\sin\theta\,\dot\theta^2+kx=0$$
  • $\theta$ について:$$m\ell\cos\theta\,\ddot x+(I+m\ell^2)\ddot\theta+mg\ell\sin\theta=0$$

微小振動として線形化する($\cos\theta\approx1,\ \sin\theta\approx\theta$、$\dot\theta^2$ の項は省略)と、

$$(M+m)\ddot x+m\ell\ddot\theta+kx=0$$
$$m\ell\ddot x+(I+m\ell^2)\ddot\theta+mg\ell\theta=0$$

したがって、ア $=M+m$、イ $=m\ell$、ウ $=m\ell$、エ $=I+m\ell^2$。

①・④は $\cos\theta$ が残っており、線形化されていない。②はアが $M$ だけで、棒の質量が抜けている。③はエで $I$ が抜けている。

ポイント

C まわりの慣性モーメントは、平行軸の定理で $I+m\ell^2$ になる(一様棒なら $I=m\ell^2/3$ なので $4m\ell^2/3$)。「線形化」と書かれていれば、$\cos\theta$ が残った選択肢はその時点で除外できる。

[解答]⑤

Ⅲ-22 力の伝達率の定点

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-22

問題の要旨:ばね・質量・ダンパの1自由度系で、力の伝達率は $$\gamma=\sqrt{1+(2\zeta\nu)^2}\,/\sqrt{(1-\nu^2)^2+(2\zeta\nu)^2}$$ で表される。減衰比 $\zeta$ によらずすべての曲線が通る定点 A の伝達率 $\gamma_A$ と振動数比 $\nu_A$ を求める。

解説

$\zeta$ によらず $\gamma$ が一定になるには、$\zeta$ を含む項が分子と分母で同じ寄与をすればよい。そのためには $(1-\nu^2)^2=1$ であればよく、このとき分子と分母が等しくなって $\gamma=1$ となる。

$(1-\nu^2)^2=1$ を解くと $\nu^2=0$ または $\nu^2=2$。$\nu>0$ なので $\nu_A=\sqrt2$、$\gamma_A=1$。

$\nu>\sqrt2$ では、減衰が大きいほど伝達率が大きくなる(グラフで $\zeta=0.70$ の曲線が上側にある)。

ポイント

防振できる領域は $\nu>\sqrt2$($\gamma<1$)。この領域では減衰を大きくすると、かえって防振効果が下がる。工作機械の防振ゴムを選ぶときも、固有振動数を加振周波数の $1/\sqrt2$ 以下にするのが基本である。

[解答]④

熱工学

Ⅲ-23 放射+対流による熱流束

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-23

問題の要旨:室温 20 ℃ の大きな部屋に、表面温度 300 ℃、放射率 0.8 の物体が置かれている。対流熱伝達率は 20 W/(m²·K)、ステファン・ボルツマン定数は $\sigma=5.67\times10^{-8}$ W/(m²·K⁴)。物体からの放熱熱流束を求める。

解説

放射と対流による熱流束を、それぞれ求めて足し合わせる。放射の計算では温度を絶対温度に換算する($T_s=573.15$ K、$T_\infty=293.15$ K)。

  • 放射:$$q_r=\varepsilon\sigma(T_s^4-T_\infty^4)$$$$= 0.8\times5.67\times10^{-8}\times(573.15^4-293.15^4)$$$$\approx 4.56$$ kW/m²
  • 対流:$$q_c=h(T_s-T_\infty)=20\times280=5.6$$ kW/m²

合計 $q=q_r+q_c\approx10.2$ kW/m² で、最も近いのは⑤ 10 kW/m²。

ポイント

大きな部屋(周囲が黒体とみなせる)の中の小物体では、物体の放射率だけを使えばよい。放射の計算で摂氏温度のまま4乗するのは典型的なミス。対流だけを計算すると④ 6 に近い値、放射だけを計算すると③ 5 に近い値になり、それぞれひっかけの選択肢になっている。

[解答]⑤

Ⅲ-24 二層平板の定常熱伝導

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-24

問題の要旨:ガラス板(厚さ 10 mm、熱伝導率 1.5 W/(m·K))とプラスチック板(厚さ 5 mm、熱伝導率 0.2 W/(m·K))が密着している。外側の表面温度はガラス側 70 ℃、プラスチック側 25 ℃ で、定常状態にある。(ア)界面温度と(イ)熱流束を求める。

解説

単位面積あたりの熱抵抗(直列)を求める。

  • ガラス:$R_g=0.010/1.5=6.67\times10^{-3}$ m²K/W
  • プラスチック:$R_p=0.005/0.2=2.5\times10^{-2}$ m²K/W

熱流束は全体の温度差を熱抵抗の合計で割って

$$q=\frac{70-25}{R_g+R_p}=\frac{45}{0.03167}\approx1421\text{ W/m}^2$$
$$= 1.42\text{ kW/m}^2$$

界面温度は、ガラス層での温度降下を差し引いて

$$T_i=70-qR_g$$
$$= 70-1421\times0.00667\approx60.5\ ℃\ \to\ 61\ ℃$$

プラスチックは薄いが熱伝導率が小さいため熱抵抗が大きく、温度差のほとんど(約 35.5 K)がプラスチック層にかかる。

ポイント

熱抵抗 $R=L/k$ の直列和で求める。界面温度は「熱抵抗の比で温度差を配分する」と考えると速い。選択肢の 0.84 kW/m² は、厚さや熱伝導率の取り違えを狙ったひっかけ。

[解答]⑤

Ⅲ-25 熱交換器の基礎(並流・向流・対数平均温度差)

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-25

問題の要旨:定常運転の熱交換器について (ア)〜(オ) の5つの記述が与えられ、正しいものの組合せを選ぶ。(ア)並流型で温度差は入口で最大、(イ)対数平均温度差は高温流体入口温度と低温流体出口温度だけで求まる、(ウ)向流型で低温流体の温度が高温流体の出口温度を超えることがある、(エ)向流型の熱交換量は熱通過率と対数平均温度差だけで求まる、(オ)隔板の熱通過率には隔板の厚さと密度が影響する。

解説

  • (ア)正:並流では両流体が同じ端から入るので、入口側で温度差が最大、出口に向かって単調に縮まる。
  • (イ)誤:対数平均温度差 $\Delta T_{lm}=\dfrac{\Delta T_1-\Delta T_2}{\ln(\Delta T_1/\Delta T_2)}$ は両端の温度差 $\Delta T_1,\Delta T_2$ が必要で、高温側・低温側の入口・出口の4温度がそろわないと求まらない。
  • (ウ)正:向流では低温流体の出口は高温流体の入口側にあるため、低温流体出口温度 $T_{c,out}$ が高温流体出口温度 $T_{h,out}$ を上回る(温度クロス)ことが可能。並流ではこれは起こらない。
  • (エ)誤:$Q=KA\Delta T_{lm}$ であり、伝熱面積 $A$ も必要。
  • (オ)誤:平板隔板の熱通過率は $\dfrac{1}{K}=\dfrac{1}{h_1}+\dfrac{t}{\lambda}+\dfrac{1}{h_2}$ で、影響するのは厚さ $t$ と熱伝導率 $\lambda$。密度は定常の熱通過に現れない(密度が効くのは非定常の熱拡散率 $\lambda/\rho c$)。

正しいのは(ア)と(ウ)→①。

ポイント

$Q=KA\Delta T_{lm}$ の「$A$ 抜け」と、「厚さと熱伝導率」を「密度」にすり替えるひっかけが定番。向流は温度クロス可能で並流より高効率。

[解答]①

Ⅲ-26 オットーサイクルの理論熱効率

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-26

問題の要旨:理想気体を作動流体とし、断熱変化と等積変化で構成されるサイクル(P-V線図:1→2断熱圧縮、2→3等積加熱、3→4断熱膨張、4→1等積放熱)。状態1は0.1 MPa・300 K、状態4は1000 K、圧縮比9、比熱比1.5。熱効率を求める。

解説

断熱2本と等積2本からなるのはオットーサイクルで、理論熱効率は圧縮比 $\varepsilon$ と比熱比 $\kappa$ だけで決まる。

$$\eta=1-\frac{1}{\varepsilon^{\kappa-1}}=1-\frac{1}{9^{0.5}}=1-\frac{1}{3}=0.667$$

温度で確かめると、$T_2=T_1\varepsilon^{\kappa-1}=300\times3=900\,\mathrm K$、$T_3=T_4\varepsilon^{\kappa-1}=1000\times3=3000\,\mathrm K$。

$$\eta=1-\frac{T_4-T_1}{T_3-T_2}=1-\frac{700}{2100}=0.667$$

よって②0.67。圧力0.1 MPaや $T_4=1000$ K は効率の計算には不要(ダミー条件)。

ポイント

オットー:$\eta=1-\varepsilon^{1-\kappa}$。与えられた温度・圧力を全部使おうとして迷わないこと。$\kappa=1.5$、$\varepsilon=9$ のように平方根がきれいになる数値設定に気付くと速い。

[解答]②

Ⅲ-27 層流平板の平均熱伝達率の依存性

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-27

問題の要旨:一様流中に置いた平板上の層流強制対流で、平板長さ(流れ方向)を2倍にしたときと、流速を2倍にしたときの平均熱伝達率の倍率ア・イを選ぶ。

解説

層流平板の平均ヌセルト数は

$$\overline{Nu}_L=\frac{\bar h L}{\lambda}=0.664\,Re_L^{1/2}Pr^{1/3}$$
$$Re_L=\frac{UL}{\nu}$$

したがって

$$\bar h=0.664\frac{\lambda}{L}\left(\frac{UL}{\nu}\right)^{1/2}Pr^{1/3}\ \propto\ U^{1/2}L^{-1/2}$$
  • ア:$L$ を2倍 → $2^{-1/2}=0.707$ 倍(後流側ほど境界層が厚く局所熱伝達率が小さいので平均は下がる)
  • イ:$U$ を2倍 → $2^{1/2}=1.41$ 倍

組合せ (0.7, 1.4) → ④。

ポイント

層流 $\bar h\propto U^{0.5}L^{-0.5}$、乱流は $Nu\propto Re^{0.8}$ なので $\bar h\propto U^{0.8}L^{-0.2}$。指数を覚えておけば即答できる。

[解答]④

Ⅲ-28 ガス冷凍サイクル(逆ブレイトン)の成績係数 ※全員得点

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-28

問題の要旨:等圧変化と断熱変化からなる逆ブレイトン(ガス冷凍)サイクルの成績係数を、状態1〜4の温度 $T_1\sim T_4$ で表したものを選ぶ。問題文では「断熱圧縮前を状態1とし、図のように順に2, 3, 4を経る」とされる。

この問題は、日本技術士会が2025年2月10日付で「問題文と図の記載内容が一致しておらず、図を元に解くと正答が導けない」として、選択した受験者全員に得点を与えると発表しています(当初の正答は③)。以下では、問題文どおりに解いた場合と、図の番号付けで解いた場合の両方を示します。

解説

問題文どおりに解いた場合:1→2断熱圧縮、2→3高圧での等圧放熱、3→4断熱膨張、4→1低圧での等圧吸熱(冷凍効果)。定圧比熱を $c_p$ とすると

$$q_L=c_p(T_1-T_4),\quad q_H=c_p(T_2-T_3)$$
$$\varepsilon_R=\frac{q_L}{q_H-q_L}=\frac{T_1-T_4}{(T_2-T_3)-(T_1-T_4)}$$

同じ圧力比の断熱変化なので $T_2/T_1=T_3/T_4$。これを使うと

$$\varepsilon_R=\frac{T_4}{T_3-T_4}=\frac{T_1}{T_2-T_1}$$

となり、選択肢③ $\dfrac{T_4}{T_3-T_4}$ が当てはまる(①は $\dfrac{T_2-T_1}{T_1}$ で逆数なので誤り)。

図との不一致:図(P-V線図)では、状態1・2が下側の低圧の水平線上(1が左、2が右)、状態4・3が上側の高圧の水平線上(4が左、3が右)にあり、1→2は「等圧変化」(低圧での吸熱膨張)、2→3が断熱圧縮、3→4が等圧放熱、4→1が断熱膨張になっている。つまり図では断熱圧縮の始点が状態2で、「断熱圧縮前が状態1」という問題文と食い違う。

図の番号付けで解くと $q_L=c_p(T_2-T_1)$、$q_H=c_p(T_3-T_4)$、$T_3/T_2=T_4/T_1$ より

$$\varepsilon_R=\frac{T_2-T_1}{(T_3-T_4)-(T_2-T_1)}$$
$$= \frac{T_1}{T_4-T_1}=\frac{T_2}{T_3-T_2}$$

となる。これはどの選択肢にも一致しない(③ $T_4/(T_3-T_4)$ は図の番号では高圧側の量で意味をなさず、④は $T_4<T_3$ なので負になる)。公式発表の「図を元に解くと正答が導けない」という説明どおり。

ポイント

逆ブレイトンの成績係数は $$\varepsilon_R=\dfrac{T_{\text{圧縮機入口}}}{T_{\text{圧縮機出口}}-T_{\text{圧縮機入口}}}$$$$= \dfrac{1}{\pi^{(\kappa-1)/\kappa}-1}$$($\pi$:圧力比)。「どの状態が圧縮機入口か」を必ず線図で確認すること。

[解答]全員得点(当初の正答は③)

流体工学

Ⅲ-29 円管内層流(ハーゲン・ポアズイユ流れ)の速度分布

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-29

問題の要旨:半径 $R$ の静止円管内を、一定の圧力勾配 $dp/dx$ で駆動される十分発達したニュートン流体(粘性係数 $\mu$)の層流がある。$x$ 方向速度分布 $u(r)$ を選ぶ。

解説

半径 $r$ の流体円柱について、圧力と壁面方向のせん断力のつり合いから

$$\frac{1}{r}\frac{d}{dr}\left(r\frac{du}{dr}\right)=\frac{1}{\mu}\frac{dp}{dx}$$

積分して $u=\dfrac{1}{4\mu}\dfrac{dp}{dx}r^2+C_1\ln r+C_2$。中心で有限 → $C_1=0$、壁面 $u(R)=0$ → $C_2$ が決まり

$$u=\frac{R^2}{4\mu}\left(-\frac{dp}{dx}\right)\left\{1-\left(\frac{r}{R}\right)^2\right\}$$
  • ①:係数 $2\mu$ が誤り(二次元平行平板と混同しやすい形)
  • ②:符号が逆で、$-dp/dx>0$ なのに速度が負になる
  • ③⑤:$r=R$ で $u=0$ にならず、次元も合わない

よって④。

ポイント

最大速度は中心で $u_{max}=\dfrac{R^2}{4\mu}\left(-\dfrac{dp}{dx}\right)$、平均速度は $u_{max}/2$、流量 $Q=\dfrac{\pi R^4}{8\mu}\left(-\dfrac{dp}{dx}\right)$。「壁で0、中心で最大」で選択肢を絞れる。

[解答]④

Ⅲ-30 二次元流れの渦度

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-30

問題の要旨:$xy$ 平面の二次元流れで $u=A(x+y)$、$v=A(x-y)$($A$ は定数)のとき、平面に垂直な方向の渦度を求める。

解説

$$\omega_z=\frac{\partial v}{\partial x}-\frac{\partial u}{\partial y}=A-A=0$$

この流れは渦なし(ポテンシャル流れ)。なお $\dfrac{\partial u}{\partial x}+\dfrac{\partial v}{\partial y}=A-A=0$ で連続の式も満たすため、非圧縮の渦なし流れであり、速度ポテンシャル $\phi=\frac{A}{2}(x^2-y^2)+Axy$ が存在する。

ポイント

$\omega_z=\partial v/\partial x-\partial u/\partial y$ の順序と符号を確実に。回転角速度は渦度の1/2なので、「角速度」を問われたら半分にする。

[解答]③

Ⅲ-31 渦励振とストローハル数(次元解析)

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-31

問題の要旨:ばねで吊られた直径 $d$ の物体が流速 $U$ の流れの中で振動数 $f$ で上下に振動する。$U, d, f$ から作る無次元数を、$f$ の指数を1として選ぶ。

解説

$[f]=\mathrm{s^{-1}}$、$[d]=\mathrm m$、$[U]=\mathrm{m/s}$。$f\,d^a U^b$ が無次元になる条件は

  • m:$a+b=0$
  • s:$-1-b=0$ → $b=-1$、$a=1$

よって $\dfrac{fd}{U}$(ストローハル数 $St$)→④。

他の選択肢の次元:①$fU/d$ は $\mathrm{s^{-2}}$、②$f\sqrt{U/d}$ は $\mathrm{s^{-3/2}}$、③$f\sqrt{d/U}$ は $\mathrm{s^{-1/2}}$、⑤ $f\sqrt d/U$ は $\mathrm{m^{-1/2}}$ で、いずれも無次元にならない。

ポイント

円柱のカルマン渦の放出は $St\approx0.2$($Re=10^3\sim10^5$ 程度)。放出周波数が構造の固有振動数に近づくと渦励振(ロックイン)が起こり、配管の温度計さやや煙突で問題になる。

[解答]④

Ⅲ-32 流体力学の基本用語(不適切なものを選ぶ)

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-32

問題の要旨:流体力学に関する5つの記述から、最も不適切なものを選ぶ。

解説

  • ① 適切:自由渦($v_\theta=\Gamma/2\pi r$)は、中心の特異点を除けば渦度 $\omega=\frac{1}{r}\frac{d(rv_\theta)}{dr}=0$。渦度をもつのは強制渦(剛体回転)。
  • ② 適切:ニュートン流体は $\tau=\mu\,du/dy$(せん断応力とせん断ひずみ速度が比例)。
  • ③ 適切:定常流では流線・流脈線・流跡線が一致する。
  • ④ 不適切:ポテンシャル流れは「渦なし流れ」($\nabla\times\boldsymbol v=0$、速度ポテンシャル $\phi$ が存在する流れ)のこと。粘性のない流れは「非粘性流れ(完全流体の流れ)」であり、非粘性でも渦のある流れはありうるので両者は同じではない。
  • ⑤ 適切:非圧縮性の連続の式は $\nabla\cdot\boldsymbol v=0$ で、密度を含まない。

ポイント

「非粘性=ポテンシャル流れ」の混同が典型のひっかけ。自由渦=渦なし、強制渦=渦あり(渦度は角速度の2倍)もセットで覚える。

[解答]④

Ⅲ-33 トリチェリの定理

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-33

問題の要旨:水で満たした大きな容器の側壁、水面から深さ $h$ の位置に小孔がある。粘性を無視して流出速度を求める(密度 $\rho$、重力加速度 $g$)。

解説

水面(点1)と孔の出口(点2)を同じ流線で結んでベルヌーイの式を立てる。大容器なので水面の下降速度 $v_1\approx0$、両点とも大気圧 $p_1=p_2=p_a$。

$$\frac{p_a}{\rho}+0+gh=\frac{p_a}{\rho}+\frac{v^2}{2}+0$$
$$\Rightarrow\quad v=\sqrt{2gh}$$

よって④。$\rho$ は約分されて結果に現れない。①②は速度の次元をもたない($\mathrm{m^2/s^2}$)、③は係数が違う、⑤は次元が $\mathrm{m^{3/2}/s}$ で誤り。

ポイント

$v=\sqrt{2gh}$ は自由落下と同じ速度。実際の流量は縮流と損失を含めた流量係数 $C\approx0.6$ をかけて $Q=CA\sqrt{2gh}$ とする。

[解答]④

Ⅲ-34 1/7乗則境界層の形状係数

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-34

問題の要旨:境界層内の速度分布が $u/U=(y/\delta)^{1/7}$ で与えられ、$\delta=30$ mm のとき、形状係数 $H=\delta^*/\theta$ に最も近い値を選ぶ。

解説

$\eta=y/\delta$ とおく。

排除厚さ:$$\displaystyle\delta^*=\delta\int_0^1\left(1-\eta^{1/7}\right)d\eta$$$$= \delta\left(1-\frac{7}{8}\right)=\frac{\delta}{8}$$

運動量厚さ:$$\displaystyle\theta=\delta\int_0^1\eta^{1/7}\left(1-\eta^{1/7}\right)d\eta$$$$= \delta\left(\frac{7}{8}-\frac{7}{9}\right)=\frac{7}{72}\delta$$

$$H=\frac{\delta^*}{\theta}=\frac{1/8}{7/72}=\frac{9}{7}=1.29$$

よって②。$H$ は $\delta$ に依存しないので $\delta=30$ mm は不要(ダミー条件)。参考までに $\delta^*=3.75$ mm、$\theta=2.92$ mm となり、選択肢④3.75・③2.92はそれぞれ排除厚さ・運動量厚さの値を置いたひっかけ。

ポイント

$H\approx1.3$(乱流、1/7乗則)、$H\approx2.59$(層流ブラジウス解)。$H$ が大きいほどはく離しやすい。一般に $1/n$ 乗則では $H=(n+2)/n$。

[解答]②

Ⅲ-35 移動平板に当たる噴流の力

令和6年度技術士第一次試験問題[機械部門] 専門科目Ⅲ-35

問題の要旨:直径 $d$ のノズルから速度 $v$ で噴出する水噴流が、同じ向きに速度 $u$($v>u$)で動く大きな平板に垂直に当たる。噴流が平板に及ぼす力を求める(密度 $\rho$、粘性は無視)。

解説

平板とともに動く座標系で考えると、噴流は相対速度 $(v-u)$ で平板に近づく。単位時間に平板に到達する質量は(平板1枚が逃げていくので)

$$\dot m=\rho\frac{\pi}{4}d^2(v-u)$$

平板に垂直に当たった流れは板に沿って直角方向へ広がるので、噴流方向の相対速度 $(v-u)$ がすべて失われる。運動量の法則より

$$F=\dot m\,(v-u)=\rho(v-u)^2\frac{\pi}{4}d^2$$

よって④。

  • ①②:$v^2-u^2$ という形は運動量変化として現れない
  • ③:次元が力にならない(質量流量の次元)
  • ⑤:面積を2乗していて次元が合わない

ポイント

単一の移動平板では質量流量にも相対速度を使い $F=\rho A(v-u)^2$。ペルトン水車のように多数のバケットが連続して噴流を受ける場合は、全噴流量が作用するので $F=\rho Av(v-u)$ になる(この違いが頻出)。

[解答]④

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