これは ⑤ 流跡線(pathline)

解説:

  • 流跡線(流跡線/pathline) は、個々の流体粒子が時間を追ってたどる軌跡。アルミ粉末を一様にまいて長時間露光すると、各粒子の動きが時間積分されて軌跡として残るので流跡線が写る。
  • 流線(streamline) はその瞬間の速度ベクトルに接する線(定常流なら流跡線と一致するが、非定常では違う)。
  • 流脈線(streakline) はある固定点から継続的に放たれた粒子の集合位置(スモークワイヤなどで可視化するケース)。
  • 渦管速度ポテンシャル は画像として直接得られるものではない。
したがって、静止画像の長時間露光で得られるのは流体粒子の軌跡、すなわち 流跡線。   参考:技術士第一次試験-令和2年度機械部門Ⅲ-34解答例 | 技術士のたまご  

長時間露光による水面の撮影とはどういう意味ですか?

はい。長時間露光による水面の撮影とは、カメラのシャッターを通常よりも長く開けて(たとえば数秒〜数分)、水面やその上の浮遊物の「動き」を時間的に積分して一枚の画像に写し取る手法です。

何が起きるか

  • 水やアルミ粉末のように動いているものは、シャッターが開いている間に位置を変えるので、動きがぼやけて線や筋(ストリーク)として写る
  • 静止している背景などは鮮明に残る。
  • 流体上にまいたアルミ粉末が流れに乗って移動する軌跡が、時間を通して一つの線として画像に現れる。これが**流体粒子のパス(pathline)**に対応する。

なぜ流跡線になるか

アルミ粉末を水面にばら撒いて、粒子が流れに従って移動する様子をずっと撮り続けると、各粒子がたどった軌跡が光の筋として画像に積分される。つまり「一つの流体粒子が時間をかけて進んだ軌跡=流跡線」が写る。非定常流でもその瞬間の速度ではなく時間に沿った動きが見えるのが特徴です。

実際の撮影での工夫

  • 三脚でカメラを固定してブレを防ぐ。
  • 光が強すぎると過露出になるので、NDフィルターを使ったり絞りを絞る。
  • 感度(ISO)を低めにしてノイズを抑え、シャッター速度を長く取る。
  • 被写体(今回なら水面上のアルミ粉末)は明るく反射するので、その光の軌跡が目立つ。

まとめ

長時間露光を使うと、水面の動き自体ではなく、その上を流れるトレーサー(アルミ粉末)の**時間を通した軌跡(流跡線)**が一枚の静止画像として可視化される、という意味になります。

渦管 や 速度ポテンシャルとは何ですか?

はい。両方とも流れの構造を記述するための概念ですが、役割も性質も違います。順に説明します。

1. 渦管(vortex tube)

定義

渦度ベクトル ω=×v\boldsymbol{\omega}=\nabla\times\mathbf{v} (流れの局所的な回転の「強さ・向き」)に沿った曲線を**渦線(vortex line)**という。 その渦線を取り囲むようにした一群の渦線が作る細長い管状の領域を 渦管(vortex tube) と呼ぶ。

性質(ヘルムホルツの定理から)

  • **渦管を通る渦度のフラックス(渦度面積分)**は、その管に沿って一定: 渦度フラックス=AωdA=一定\text{渦度フラックス}=\int_{A} \boldsymbol{\omega}\cdot d\mathbf{A}=\text{一定}つまり渦管の断面を変えても内部の「渦の量」は保存される(切断や突然消失しない)。
  • 渦の伸長(例えば渦管が細くなる方向に引き伸ばされると渦度が増す):運動量保存のもとで渦の強さが増す現象(渦の強化)。

直感例

  • 竜巻や飛行機翼端渦は渦管の一種。
  • 水中で回転を入れた後に伸ばされる渦の細長い構造も渦管。

渦管と流線/流跡線との違い

  • 流線:ある時刻の速度ベクトルに接する線(流れの方向を示す)
  • 渦線:その点の渦度方向に沿った線(回転の軸)
  • 渦管:渦線を束ねた「管」。流体粒子がそこを流れるとは限らない(回転の構造を表す)。

2. 速度ポテンシャル(velocity potential)

定義

流れが 非回転的(回転成分がゼロ) すなわち ×v=0\nabla\times\mathbf{v}=0   であれば、速度場 v\mathbf{v} はスカラー関数 ϕ\phi の勾配として書ける: v=ϕ\mathbf{v}=\nabla\phi   この ϕ\phi速度ポテンシャル という。

条件と結果

  • 非回転性 ×(ϕ)=0\nabla\times(\nabla\phi)=0  は恒等的に成り立つので、速度ポテンシャルが存在すれば渦度ゼロの流れ(イロタショナル flow)。
  • 非圧縮性 v=0\nabla\cdot\mathbf{v}=0  )なら: ϕ=2ϕ=0\nabla\cdot\nabla\phi=\nabla^2\phi=0すなわちポテンシャルはラプラス方程式を満たす(ポテンシャル流の基本方程式)。

応用

ポテンシャル流は、粘性を無視した理想流体の流れの近似として、源・吸い込み・二重極・渦(特異点として与える)などを重ね合わせて複雑な流れを解析的に構成できる。たとえば翼周りの流れの基本解の構築に使われる。

注意点

  • **循環(全体の回転、例:渦を入れる)**があると ϕ\phi  は全域で一価にならない(多価になり、例えば円周方向に一周すると位相がずれる)。その場合、速度ポテンシャルは「分枝切断」を設けて局所的に定義する。
  • 渦自体は本来 ×v0\nabla\times\mathbf{v}\neq0  なので純粋な速度ポテンシャル流では表現できないが、特異点的な渦を追加して循環を持たせることは形式的にできる(そのときポテンシャルは多価になる)。

3. まとめの対比

項目 渦管 速度ポテンシャル
対象 渦度(回転)の構造を表す管状領域 非回転流の速度場をスカラーから表現
主な式 ω=×v\boldsymbol{\omega}=\nabla\times\mathbf{v}、渦管中の渦度フラックス保存 v=ϕ\mathbf{v}=\nabla\phi 2ϕ=0\nabla^2\phi=0(非圧縮・非回転)
回転成分 内部に回転(渦度)を含む 回転成分ゼロ(イロタショナル)
用途 渦の保存・強化・構造解析(例:渦伸長) 理想流体の流れの解析、複素ポテンシャルによる2次元流れ構成

必要なら(1)渦管の具体的な例図とヘルムホルツの定理の導出、(2)速度ポテンシャルを用いたポテンシャル流の基本解(源・沈み・渦・流れの合成)、(3)渦とポテンシャルの混合(例えば翼周りの循環を含む流れ)のモデル化、のどれを深掘りしますか?

速度ベクトルに接する線や沿った曲線とはどういう意味ですか

  いい質問です。用語を噛み砕いて説明します。

「速度ベクトルに接する線」=**流線(streamline)**の意味合い

流体のある時刻における速度場を矢印(ベクトル)で空間の各点に描くとします。ある曲線をとったとき、その曲線の接線方向(その点での向き)が、ちょうどその点の速度ベクトルと同じ向きになっているような曲線を 流線 といいます。言い換えると、流線は「その瞬間の流れの方向に常に沿っている」曲線です。
  • 数式的には、位置ベクトル r(s)\mathbf{r}(s)  で曲線をパラメータ化するとき、流線は drdsv(r,t)\frac{d\mathbf{r}}{ds} \parallel \mathbf{v}(\mathbf{r},t)を満たす(つまり接線ベクトルがその点の速度ベクトルと平行)。 2次元なら dydx=vu\frac{dy}{dx} = \frac{v}{u}となります。
  • 「接する(tangent)」とは、微分の文脈でその点での方向を共有していること。「曲線に接する直線」はその点での向きと一致する直線のことです。
例:回転する流れ v=(y,x)\mathbf{v}=(-y,x) なら、流線は原点中心の同心円。円周上の接線が速度方向と一致するからです。

「沿った曲線」=流れに沿ってたどる経路

文脈によって異なりますが、「速度ベクトルに沿った曲線」と言うとき、それは流線のことを指すか、あるいは時間を含めた粒子の軌跡(流跡線 / pathline)を指すことがあります。
  • 流跡線(pathline):ある一つの流体粒子が時間とともにたどった軌跡。微分方程式 drdt=v(r,t)\frac{d\mathbf{r}}{dt} = \mathbf{v}(\mathbf{r}, t)を解いたもの。時間発展を含むので非定常流で流線と異なることがある。
  • 流線 は「その瞬間」の方向に沿う曲線、流跡線 は「粒子の時間的な移動」に沿った曲線。

まとめ

  • 接する線:その点での速度ベクトルと向きが一致するように“接”している曲線=流線。瞬間的な方向を反映。
  • 沿った曲線(たどる経路):時間をかけて速度ベクトルに従って移動した軌跡=流跡線(非定常流では流線と違う)。
必要なら図付きで流線・流跡線・流脈線の違いを描いて説明できます。いりますか?