次の記述の、(   )に入る表記の組合せとして、最も適切なものはどれか。

独立に製造された軸A1と軸A2を長さ方向にすき間なく接続する。 軸A1の長さと軸A2の長さがそれぞれ独立に正規分布N(μA1,δA12)、正規分布N(μA2,δA22)
に従うとき、接続されたものの長さは正規分布( ア )に従う。
また、独立に製造された軸B1と軸受B2のはめあいを考える。 軸B1の外径と軸受B2の内径がそれぞれ独立に正規分布N(μB1,δB12)、正規分布N(μ B2,δB22)に従うとき、このすき間寸法は正規分布( イ )に従う。ただし、常にμB2>μB1であるものとする。

ア:N(μa1+μA2,δA12+δA22)  イ:N(μB2+μB1,δB22+δB12)
ア:N(μa1+μA2,δA12+δA22)  イ:N(μB2−μB1,δB22−δB12)
ア:N(μa1+μA2,δA12+δA22)  イ:N(μB2−μB1,δB22+δB12)
ア:N(μa1+μA2,δA12−δA22)  イ:N(μB2−μB1,δB22−δB12)
ア:N(μa1+μA2,δA12−δA22)  イ:N(μB2+μB1,δB22−δB12)

https://kakomonn.com/gijyutushi/questions/80691

この問題は、正規分布の合成(和・差)に関する統計の基本的な知識を問うものです。


【ア】の部分:軸A1とA2を「すき間なく接続」する ⇒ 長さの合計

軸A1:N(μA1, δA1²)
軸A2:N(μA2, δA2²)
→ 和 X = A1 + A2

正規分布同士の和は以下のようになります:

  • 平均:μA1 + μA2
  • 分散:δA1² + δA2²(※分散を足す)

つまり:

ア:N(μA1+μA2,δA1²+δA2²)


【イ】の部分:軸受と軸のすき間 ⇒ 内径 − 外径

軸受B2の内径:N(μB2, δB2²)
軸B1の外径:N(μB1, δB1²)
→ すき間 S = B2 − B1

正規分布の差は:

  • 平均:μB2 − μB1
  • 分散:δB2² + δB1²(差でも分散は加算

つまり:

イ:N(μB2−μB1,δB2²+δB1²)


よって、正解は:

ア:N(μA1+μA2,δA1²+δA2²)
イ:N(μB2−μB1,δB2²+δB1²)


正解の選択肢は:

ア:N(μa1+μA2,δA12+δA22) イ:N(μB2−μB1,δB22+δB12)

(※記号の表記ゆれがあるが意味は同じ)


【答え】:3番目の選択肢が正解

分散は差でも加算されるのですか?

はい、分散は差でも加算されます
これは統計学上の重要な性質です。


■ 基本原理:独立な確率変数 XX

 

YY

 

に対して

  • 和:
    Z=X+YZ = X + Y
     
  • 差:
    Z=XYZ = X – Y
     

どちらの場合も、Z の分散は次のようになります:

Var(Z)=Var(X±Y)=Var(X)+Var(Y)\mathrm{Var}(Z) = \mathrm{Var}(X \pm Y) = \mathrm{Var}(X) + \mathrm{Var}(Y)

 

この公式が成り立つのは、XとYが独立である場合です。


■ なぜ差でも分散が加わるのか?

これは、分散が「ばらつきの大きさ」であり、足し算・引き算のどちらでもばらつきは増えるためです。

例:

  • X ~ N(10, 4)
  • Y ~ N(5, 9)

→ Z = X − Y
Z の平均:10 − 5 = 5
Z の分散:4 + 9 = 13

Z ~ N(5, 13)


■ 補足:標準偏差との違いに注意

  • 分散(Variance):加算される → δ²
  • 標準偏差(Standard deviation):分散の平方根 → √(δ²₁ + δ²₂)

■ 結論

✔️ 和でも差でも、独立な正規分布の分散は加算される。
❌ 差だからといって分散を引き算してはいけません。

何か数式の導出や直感的な説明もご希望でしたら、お気軽にどうぞ。