全個体電池が実用化されると、電気自動車のガソリン車に対する優位性が大きく増すため、電気自動車へのシフトが一気に加速されると思います。もし、20年代前半に実用化されるとなると、リチウムイオン電池を使っている Tesla に対する優位性を持つことが出来ます。

とは言え、そうなれば Tesla も遅かれ早かれ全個体電池に切り替えて来るでしょうから、全個体電池だけで差別化が出来るのは高々1~2年程度だと思います。

その意味では、トヨタが全個体電池車を出す時には、プリウス、カローラあたりの大衆車を一気に置き換えるぐらいの勢いで攻めると、とても効果的だと思います。

次の質問です。

ある週刊誌の記事で、世界EV戦争で日本に危機感がないのはHVからガソリンエンジンを取り除くとEVが残る。FCVから燃料電池と水素タンクを外せばEVが残る。当然、日本のメーカーにはいつでもEVを作れる技術と自信がある。次世代電池の最右翼固体電池が開発されメドがたてば後出しジャンケンで日本の自動車メーカーの大逆襲が始まる
と書いてありました。

一瞬そうかなとも思ったのですが、自動車業界に造詣の深い中島さんはどの様に考えられますでしょうか。

日本のメーカーがEVを作ろうと思えばいつでもつくれる、のは確かだと思いますが、ソフトウェアや充電インフラも含めて、消費者が欲しがるEVを作るのは簡単ではないと思います。iPhoneが出た時に、日本の携帯電話機メーカーは、「スマートフォンなんか自分たちでも簡単に作れる」と冷たい目で見ていましたが、自分たちだけでは作ることは出来ず、Google の Android に頼らなければならなかったし、市場で十分なシェアを得ることも出来ませんでした。

全個体電池に関しては、一つ前の質問でも答えましたが、大きなポテンシャルがあると見ていますが、それだけを差別要因としてEVを売るのは難しいと思いますが、そこに逆襲のチャンスがあるのは事実だと思います。

しかし、本当に全個体電池で勝負をするのであれば、電池のサプライヤーになった方が大きな利益があげられるので、電池部門だけ切り離して別会社にした方が、株主にとっての価値を最大化することに繋がると思います。

いずれにせよ、トヨタ自動車が現時点でEVを本気で生産していないのは戦略的に大きな間違いです。また、EVで勝負するのであれば、ソフトウェア重視の文化の会社にトップダウンで変えて行く必要がありますが、会社の文化を根本から変えることほど難しいことはないので、そこが大きなネックになると思います。

 

引用 週刊 Life is Beautiful 2020年12月15日号

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