我国では、これまで生産性向上をリストラや賃下げと結びつけて考える企業経営者も多かった。市場規模の拡大の中でのシェア拡大主義を、市場規模が縮小に転じつつある時期に至っても標榜し続けてきたことが、コスト削減を生産性向上の手段とするがまん経営にし、企業経営者のマインドをいわゆる内向きのものにしてしまったのではないかと推察される。

 

AIやIoTといった基幹技術のイノベーションが登場する中で、経済社会を取り巻く環境は大きく変わる兆しを見せている。もちろん基幹技術の登場で生産性がすぐに向上するわけではない。

例えばDavidによれば、電力の発明が動力や照明などの生産性に結びつく形で利用化されるまでに半世紀を要したことが知られている。これは、1990年代における米国でのコンピュータに対する投資が、生産性指標の改善に繋がらないことを指摘した、ソローのパラドックスと類似している。

電力といった過去のイノベーションと、現在進行する基幹技術のイノベーションとの違いは、AIやIoTといった技術がビッグデータを介して補完的に規模拡大する点である。このネットワーク効果に加えて、基幹技術をプラットフォームとして取り入れたものと、そうでないものとの間に大きな富の格差を急速に生み出しやすい。

既にこうした点は、EBIT等の会計指標に顕れはじめており、経済のサービス化が更に進行するにつれて、企業間の格差のみならず、中央と地方との格差、資本家と労働者との格差にもつながるのではないかと懸念される。

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参考:【ビッグデータ時代に対応した取組】 GE社はビッグデータ解析の中で事前にエンジンの故障確率を予測して保守修繕をエンジンの販売とパッケージにした商品を提供しているのだ。