かつて日本は世界第二位の経済大国として栄華を極めた時代がありました。戦後の高度成長からバブル経済まで、我が国は成長の事態だったと言えます。成長の時代はいわば拡大と活力の時代であったといっても良いでしょう。

しかし、少子化、高齢化が進むかこれからの日本は成熟の時代へとシフトしていかなければなりません。

成熟の時代とは言うならば、濃縮と余裕の時代ともいえます。それはまさに、石田梅岩が生きた江戸期の元禄から享保の時代への変化と同じなのです。

大きな変化の時代にあって、私たちも豊かさの指標をがらりと変えることが求められています。まずは、貨幣のパラダイムだけで評価するのをやめる事です。すべてをお金と言うものだけで計ることが現代において多くの矛盾や苦しみを引き起こしています。

 

世界を股にかけたマナーゲームのいく先がいかなる結果をもたらすのか、かつてリーマンショックとそれに伴う金融危機の時に私たちは嫌と言うほど思い知りました。

貨幣などのひとつの尺度では測れない、多様な価値を認めていくことこそが、これからの時代に必要な生き方だと言えるでしょう。

日本には古くから、商売にはお金に換算できないモラル、道徳が、また経済にも理念が求められるとされてきました。

将来の生活の不安、安定しない経済への不信、さまざまな悩みや迷いを抱えながらも、生きるためのたしかなよりどころを求める現代人において、日本の古くからの哲学は揺るぎない生の土台を築くための有力な答えとなるでしょう。

正直こそが富をもたらす

利益を上げる事は恥ずべきことでもなければ、人の道に反したことでもない。自由市場において、競争の結果で決まる価格は正しい価格であり、その価格で堂々と商いをして得られる利益は正しい利益である。

 

正直や誠実というのは、合理や効率を重んじるビジネスの世界にあっても時代や環境の変化はあっても、やはり成功のための第一級の必要条件であるのです。

 

法には触れなくとも、道徳責任があるといったように正直のものさしは心の中におきましょう。内発的な正直さが必要なのです。

 

勤勉こそが安らぎをもたらす

 

何事も怠る事なく努力すれば、苦労は多いでしょうが、心は安らかでいられます。

それとは、反対に好き勝手な事をして、年貢も納められないとなれば、心は安らかではないでしょう。

心を知り苦労をいとわず一生懸命に努力すれば、毎日の安心が得られます。そうすれば、おのずと礼儀も正しくなり、心配や疑義が生じることもありません。

仕事というのは一人前になるための修行であり、心を磨いて威儀や礼儀を備えた一個の人間として成長する、人格形成のための手段であるとする考え方が日本人には古くからあります。

 

自立してこそ強みを活かせる

自分の考えや意見や意思を明確に持って、自立したひとりの人間としてしっかりと行動しなさい。

自分の意思がなくては真の意味の忠義は尽くせません。人間はみな身分や職業問わず、自立した一個の人間であるべきです。またそれぞれの関係も平等かつ対等であるべきです。

 

経営を行うにあたってのいろいろな問題に関しては、主人である者が独断で勝手に決めてはなりません。まず上級幹部たちと相談し、それでも意見がまとまらない場合は、さらに中堅幹部を集めて討議しながら決定していきます。全員が納得できる意思決定をすることが大切です。

全員参加型の経営が大事なのです。

 

部下と対等な立場に立ったコミュニケーションを図ることであり、みずから仕事を実践してみせることなのです。働くものの幸福に最大の目標をおく。和と協力にもとづく家族主義的な経営。人間中心の水平で民主的な組織運営。

それは長く育まれてきた日本的経営の革新部分といえるでしょう。

 

 

 

 

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