Figmaのビジネス詳細調査

業績情報(売上・成長率など)

Figmaは未上場企業ながら急成長を遂げており、確認可能な財務指標として年次の定期収益(ARR)や売上高の推計値がいくつか報じられています。Adobeが2022年に発表した買収時の資料によれば、2022年末のARRは約4億ドルに達する見込みで、前年から約2億ドルの純増(前年比ほぼ100%増)とされていますtechcrunch.com。この時点で既存顧客の年間売上維持率(NRR)は150%以上グロス利率は約90%、営業キャッシュフローもプラスと非常に健全な収益モデルを構築していましたtechcrunch.com。ユーザー数も拡大しており、2022年時点で約400万ユーザーを抱え、Dropbox・Slack・Twitter・楽天など多数の企業が導入していましたtechcrunch.com

その後も成長は続き、2023年末時点ではARRが6億ドル超に達したと推計されています(約50%の年成長)techcrunch.com。実際、2024年通年の売上高は約7億4900万ドル(前年比+48%)に上り、2025年第1四半期(1~3月)売上高は2億2800万ドルで前年同期比+46%という驚異的な伸びを示しましたnote.com。注目すべきはこの高成長を維持しながら純利益4490万ドルを計上し黒字化している点ですnote.com。営業利益率も17%と堅調で、既存顧客からの売上成長を示すネットダラーリテンション(NRR)は約132%と非常に高い水準にありますnote.comnote.com。またフリーキャッシュフロー利益率も28%に達し、SaaS業界平均(約18%)を大きく上回っていますnote.com。これらの指標から、Figmaは高成長かつ収益性の高いビジネスへと成熟しつつあることが読み取れます。

資金調達の履歴と評価額(バリュエーション)

Figmaは2012年創業以来、複数回の資金調達を行ってきました。主なラウンドと調達額・評価額の推移は以下の通りです。

  • 2013年6月(シード) – 約390万ドルを調達(Index Venturesなどが出資)clay.com

  • 2015年12月(シリーズA) – 約1400万ドルを調達(Greylockが主導)clay.com

  • 2018年2月(シリーズB) – 約2500万ドルを調達(Kleiner Perkins主導)clay.com

  • 2019年2月(シリーズC) – 約4000万ドルを調達(Sequoia Capital主導)clay.com

  • 2020年4月(シリーズD) – 5000万ドルを調達(Andreessen Horowitz主導)。※この時点で推定評価額20億ドル規模techcrunch.com

  • 2021年6月(シリーズE) – 2億ドルを調達し、評価額は100億ドルに達するtechcrunch.com。前年2020年4月の評価額(約20億ドル)からわずか1年で5倍に跳ね上がった計算ですtechcrunch.com

  • 累計調達額 – 2021年までの一次資金調達の累計は約3億3300万ドルに上りますbusinessinsider.com(PitchBook調べ)。

  • 2022年9月(買収提案) – 米Adobe社が200億ドル(約2兆8000億円)での買収を発表。未公開企業であるFigmaの評価額が一夜にして倍以上に跳ね上がった形となりましたgigazine.net

  • 2024年5月(テンダーオファー) – 一部既存株主・投資家向けに株式の買い取り(セカンダリー)が実施され、この時の評価額は約125億ドルと報じられていますbusinessinsider.com。これはAdobe買収案が宙に浮いた後、社内で算定された最新の時価評価と言えます。

※なお、2025年7月に実施されたIPO(後述)時点では時価総額が初値ベースで150〜200億ドル規模になると見込まれていましたsaas-career-tohshindai.com。結果として初値を大幅に上回る水準で推移し、買収提案時の評価額200億ドルを大きく超える企業価値が市場で付けられましたbloomberg.co.jp

株式公開(IPO)に関する報道・動向

Adobeによる買収が不成立となったことで、Figma単独での株式公開(IPO)が現実味を帯びました。2023年末の報道では、早ければ2025年にもIPOを実施する可能性が指摘されtechcrunch.com、実際に2025年7月31日にニューヨーク証券取引所(NYSE)への上場を果たしました。IPOでは公募価格を1株33ドルに設定し、約12億ドルの資金調達に成功しましたbloomberg.co.jp。需要は非常に旺盛で、公募株数に対し応募超過率40倍超と伝えられていますbloomberg.co.jp

上場初日のFigma株は初値85ドルから取引が始まり、その後終値115.50ドルで取引を終えましたbusinessinsider.combloomberg.co.jp。公開価格からの上昇率は実に約3.5倍(+250%)にも達し、調達額10億ドル超のIPOとしては過去30年で例のない初日高騰となりましたbloomberg.co.jp。完全希薄化後の終値ベース時価総額は約650億ドル(約9.5兆円)に達し、Adobeが提示していた買収額200億ドルの3倍以上となっていますbloomberg.co.jpbloomberg.co.jp。このIPOは近年低迷していたテック企業の新規上場市場を活性化させる「モンスターIPO」と評され、Figmaは2025年最大級の米国IPOとして市場の熱い視線を集めましたbloomberg.co.jp

投資家からは「結果的にAdobeとの破談はFigmaにとって幸運だった」との声も出ていますbusinessinsider.com。Adobeから支払われた10億ドルの契約解除料を元手に、Figmaは**新製品を次々投入(買収破談後15ヶ月で4製品を新規リリース)**しプロダクトラインを倍増させるなど事業を再活性化させましたbusinessinsider.com。また、IPO申請書類によれば前述の通り財務面も黒字転換しており、投資家にとって非常に魅力的な銘柄となったことが今回の成功要因と分析されていますnote.comnote.com

技術的強みやプロダクト戦略

Figmaのプロダクト上の最大の強みは、ブラウザ上で動作するクラウドベースのデザインツールである点です。ソフトのインストール不要でOSを問わず利用でき、インターネット環境さえあればどこからでもアクセス可能ですmocka.jp。特に複数メンバーで同時にデザイン編集やコメントができるリアルタイム共同編集機能は画期的で、「デザイン界のGoogleドキュメント」とも呼ばれる柔軟なコラボレーション体験を提供しましたtechcrunch.com。この同時編集とクラウド保存により、チーム間でのデザイン共有・フィードバックが飛躍的に効率化されています。

またプラグインやウィジェットが豊富で拡張性が高いこともFigmaの強みですmocka.jp。コミュニティによるプラグイン開発が盛んで、デザインシステム管理や自動化、他ツールとの連携など多彩な拡張機能を備えています。ブラウザベースであることからバージョン管理や履歴の追跡も容易で、デザインの変更履歴をタイムラインで遡って比較する機能も標準搭載されていますmocka.jp。さらに基本機能を無料で利用できるフリーミアムモデルを採用しており、個人ユーザーや小規模チームが導入しやすい戦略で利用拡大につなげていますmocka.jp

プロダクト戦略としてFigmaは当初からUI/UXデザインに特化しつつも、関連領域への拡張を進めてきました。2021年にはオンラインホワイトボードのFigJamをリリースし、ブレインストーミングやワークショップ用途にも進出techcrunch.com。さらに近年では開発者向けのデベロッパーモード機能を追加し、デザイナーとエンジニア間のコラボレーション(デザインからコーディングへの引き渡し)を支援するツールにも注力していますtechcrunch.com。加えて生成AI技術の台頭を受け、デザインにAIを活用する機能を自社製品に組み込み始めています(例えばFigJam上での生成AI搭載のアイデア発想支援ツールなど)techcrunch.com。これらの技術拡張によって、Figmaは単なるデザインツールに留まらず包括的なコラボレーション・デザインプラットフォームへと進化を遂げつつあります。

主な競合企業との比較(Adobe XD・Sketch・Canva など)

Figmaが属するデザインツール領域では、従来から複数の競合製品が存在します。以下にFigmaと主要な競合ツールとの比較を表形式でまとめます。

ツール名 (提供企業) 特徴・強み <br> (主な利点など) 主な用途・ターゲット <br> (適した利用シーン)
Figma (Figma社) クラウドベースでブラウザ動作。OS非依存でインストール不要。
複数ユーザーのリアルタイム共同編集が可能。
豊富なプラグイン/ウィジェットによる拡張性。
バージョン管理が容易。基本機能は無料プラン提供。mocka.jp
WebサイトやモバイルアプリのUI/UXデザイン全般
デザインの共同作業が必要なプロジェクト。
クライアントを交えたフィードバック共有などチームでの利用mocka.jp
Adobe XD (Adobe社) Adobe製品との連携が強み(Photoshop/Illustratorとの互換性)。
デスクトップアプリ型でオフラインでも使用可能。
高度なプロトタイピング機能(アニメーションや音声操作にも対応)。
デザインシステム管理機能を搭載。mocka.jp
既にAdobe Creative Cloudを利用するプロデザイナーmocka.jp
凝ったインタラクションやアニメーションを含むプロトタイプ作成。
一般的なUI/UXデザイン業務全般。
Sketch (Bohemian Coding社) macOS専用のネイティブアプリ。
ミニマルで直感的なインターフェース。
豊富なプラグインによる機能拡張が可能。
近年クラウド共有機能も追加。mocka.jp
Macユーザー向けのUI/UXデザインに最適。mocka.jp
Webサイトやモバイルアプリの画面設計・試作。
オフラインで軽快に作業したい個人デザイナー。
Canva (Canva社) ブラウザベースで直感的な操作が可能。
豊富なテンプレートや素材があらかじめ用意されている。
専門知識不要で初心者でも扱いやすい。
スマホアプリ版もあり手軽。基本無料プランあり。mocka.jp
SNS投稿画像やバナー、プレゼン資料などのデザイン。mocka.jp
デザイン専門ではない初心者・非デザイナー層
迅速にビジュアルコンテンツを作成したい個人や小規模ビジネス。

補足: 上記の他にも、プロトタイピング専門のInVision、Windowsユーザー向けの無料ツールLunacyなどが競合として挙げられます。特にAdobe XDはAdobe自らがFigmaに対抗して開発した製品ですが、Figmaの躍進により市場で苦戦しました。Adobeは買収承認を得るために**「Creative CloudにFigmaをバンドルしない」「競合製品Adobe XDを売却する」といった譲歩案さえ提示したほどでgigazine.net、FigmaとAdobe XDが競合関係の中核**にあったことが窺えます。結果的にAdobeはXDを残したままFigma買収を断念することになり(後述)、今後Adobe XDをどう位置付けるかが課題となっています。一方、Sketchは長年Macデザイン業界の定番でしたが、Windows非対応やリアルタイム協業機能の弱さから近年シェアをFigmaに奪われています。Canvaは分野がやや異なり、グラフィックデザインやコンテンツ制作の簡易ツールとして急成長していますが、プロ向けUI設計ツールとしてはFigmaとは棲み分けがなされていますmocka.jp

Adobeによる買収発表とその影響

買収発表: 2022年9月15日、Adobe社はFigmaを約200億ドル(現レートで2兆8千億円超)の巨額で買収する計画を電撃的に発表しましたgigazine.net。このニュースは業界に大きな衝撃を与え、Adobeのデザインツール分野における支配力が一層強まるとの懸念が広がりました。Adobeは自社製品として「Adobe XD」を擁していましたが、FigmaはXDに対する強力な競合でありgigazine.net、買収によりAdobeがUI/UXデザイン市場を独占しかねないとの批判が噴出しましたgigazine.net。Figmaコミュニティでも「使い慣れたFigmaがAdobeに吸収されサービス改悪されるのでは」といった不安の声が上がり、ユーザーの動揺も報じられましたtechcrunch.com

規制当局の審査: 買収発表後、米国や欧州の独占禁止当局が調査に乗り出します。2023年2月には米司法省(DOJ)が本件について反トラスト法違反の疑いで提訴の準備に入ったと報じられましたgigazine.net。さらに2023年7月、EU欧州委員会も本格調査を開始し、同年11月には**「この合併は競争を阻害する」として提訴予定であることが明らかになりますgigazine.net。イギリス競争・市場庁(CMA)も2023年11月末に「AdobeによるFigma買収は市場競争を著しく損なう恐れがある」との暫定判断を発表しましたgigazine.net。こうした各国当局の厳しい姿勢を受け、Adobeは「FigmaをCreative Cloudには統合しない」「Adobe XD事業を売却する」**等の異例の譲歩案を提示しましたが、それでも承認の見通しは立ちませんでしたgigazine.net

買収断念とその後: 2023年12月14日、AdobeとFigmaは双方合意の上で買収契約を解消することを発表し、約15ヶ月に及んだ攻防は幕引きとなりましたgigazine.net。規制当局との折り合いがつかず買収断念に至った形ですが、契約条項に従いAdobeは10億ドル(約1400億円)の契約解除料をFigma社に支払う予定ですgigazine.net。Adobeのシャンタヌ・ナラヤンCEOは「当局の判断には強く不同意だが、独立して前進することがお互いの利益になる」とコメントし、Figma買収断念を表明しましたgigazine.net。一方、Figma共同創業者兼CEOのディラン・フィールド氏は「審査開始から15ヶ月が経過し承認への道筋が見えなくなった。コミュニティの支えに感謝しており、Figmaの最高で革新的な日々はまだこれからだ」と述べ、買収破談後の明るい展望を示唆しましたgigazine.net

買収発表から中止に至るまでの期間、Figma自身は停滞するどころか事業を順調に拡大させていた点も特筆されます。フィールドCEOによれば「この15ヶ月の間にかえって開発ペースは加速した」とされ、実際に発表後500人超の新規採用を行いtechcrunch.com、デベロッパー向け機能や前述の生成AI機能の追加など製品強化を精力的に進めていたことが明らかになっていますtechcrunch.com。結果として、巨額の違約金と引き換えに独立を維持したFigmaは財務的にもプロダクト面でも更なる成長機会を得る形となりました。買収断念直後からIPO準備に動き出したこともその象徴であり、Adobeによる買収劇はFigmaにとって「試練と強化」の期間だったと言えるでしょうbusinessinsider.com。一方のAdobeにとっては、有望な競合を取り込むことで体制強化を図る戦略が頓挫し、デザイン分野で依然Figmaとの競争に向き合う必要に迫られる結果となりました。gigazine.netgigazine.net

Sources:

  • 【1】TechCrunch: Figma’s Dylan Field will discuss evolving as a leader…(2022年6月)techcrunch.comtechcrunch.com

  • 【2】TechCrunch+: Even without Adobe, things don’t look too bad for Figma(2023年12月)techcrunch.com

  • 【7】TechCrunch: Adobe snaps up Figma for $20B…(2022年9月)techcrunch.comtechcrunch.com

  • 【9】Mockaブログ: figma、Adobe XD、Canva..数あるデザインツール何が違う?(2023年)mocka.jpmocka.jpほか

  • 【12】GIGAZINE: Adobeが規制当局の承認を得られずFigmaの買収を断念…(2023年12月)gigazine.netgigazine.netほか

  • 【14】GIGAZINE: Adobe~Figma買収断念…契約解除料を支払い予定(2023年12月)gigazine.net

  • 【22】Business Insider: Here’s Who Got Rich on Figma’s Red Hot IPO(2025年7月)businessinsider.combusinessinsider.combusinessinsider.com

  • 【24】Bloomberg(日本語版): 米フィグマ、上場初日に株価3.5倍(2025年8月)bloomberg.co.jpbloomberg.co.jp

  • 【26】Moomoo投資情報: FigmaのIPO:250%急騰―ツールからAIハブへ(2025年)moomoo.com

  • 【31】note: 今年最大級の上場予定Figma…投資動画メモ(2025年7月)note.comnote.com

figmaは最近上場しました

そうですね。Figmaは2025年7月31日にNYSEへ“FIG”で新規上場しました。主なポイントを手短にまとめます。

  • 上場基本情報:公開価格 $33(当初レンジ$25–28から上方修正)/調達額 約12億ドル。ティッカーは FIG。(Figma, バロンズ)
  • 初日の値動き:初値 $85、高値 $124.63、終値 $115.50 と“ほぼ3.5倍”のスタート。(Kiplinger, バロンズ)
  • 時価総額感:初日後の報道では6兆円超($60B+)規模まで上昇との評価。(フィナンシャル・タイムズ)
  • バリュエーション比較:公開直後の希薄後時価総額は約$19.3B(公募価格ベース)。これは2022年にAdobeが提案していた**$20B**買収額とほぼ同水準。(Axios, news.adobe.com, The Verge)
  • その後のトーン:上場直後は過熱感を指摘する向き(高PSR)もあり、短期はボラティリティ高めとの見方。(Seeking Alpha, The Motley Fool)

背景(買収→破談→単独上場)

  • 2022年のAdobeによる$20B買収提案は、米英EUの競争当局の懸念を受け2023年12月に解消。Adobeは**$1Bの違約金**を支払い、Figmaは独立路線に。(news.adobe.com, The Verge, GOV.UK)

必要なら、直近の株価レンジ/出来高、主要KPI(ARR・NRR)、競合(Adobe XD・Sketch・Canva)との最新比較、ロックアップや需給イベント予定まで整理してお出しします。
※いまライブ株価チャートの取得でエラーが出たため、ここでは初日実績と公式・主要メディア情報で要点のみ提示しました。再度お試しするか、テキストでの推移サマリを作成します。