
図中の減衰比 ζ は標準定義
により求めます。
-
、
、
なので
よって最も近い選択肢は
③ 0.1 です。
参考:
技術士第一次試験-令和2年度機械部門Ⅲ-20解答例 | 技術士のたまご
この問題はcとkが並列で描かれていますが、直列でも同じ解答になりますか?
標準的な1自由度系
という形で使った減衰比
は,ばね
とダンパ
が
並列に質量に直結している場合の式です。もしこれらを直列につないで質量に引き付けた場合には,運動方程式そのものが変わり,減衰比の定義も変わってしまいます。
並列接続の場合
- 運動方程式:
- 減衰比:
直列接続の場合
壁―ばね
―ダンパ
―質量,という順序で直列に並べてみると,力
は両素子で共通・変位は足し合わせになります。運動方程式を立てると最後には
となり,
- 有効な減衰係数は
- よって減衰比は
と まったく別の式 になります。
まとめ
- 並列で直結すると
・
がそのまま ODE に現れ,
が成り立つ。
- 直列につなぐと式が変形され,有効減衰係数も
のように入れ替わるので,同じ解答にはなりません。
したがって「直列でも同じ ζ になるか?」という問いの答えは
「いいえ,変わります」 です。
はなに?
“
” は、まさに臨界減衰係数
の式です。つまり
とおくと、減衰比を
と定義でき、
-
:不足減衰
-
:臨界減衰
-
:過減衰
に分類できます。
由来
運動方程式を
とすると、特性方程式は
この二次方程式の判別式をゼロにして「重根にする」(振動せず最速収束の条件)と
したがって “2√(m k)” は、「ちょうど臨界減衰になるときのダンパ係数」の大きさを表す式、という意味になります。
2√(m k)” は、「ちょうど臨界減衰になるときのダンパ係数なので、減衰比は1ですか?
はい、そのとおりです。
臨界減衰係数 (c_c = 2\sqrt{m k}) のとき、減衰比は
[
\zeta = \frac{c}{2\sqrt{m k}} = \frac{c_c}{2\sqrt{m k}} = 1
]
となります。
✅ 意味の整理
| 項目 |
記号 |
条件 |
系の状態 |
| 不足減衰 |
(\zeta < 1) |
(c < c_c) |
振動しながら減衰(オーバーシュートあり) |
| 臨界減衰 |
(\zeta = 1) |
(c = c_c = 2\sqrt{m k}) |
最も早く無振動で静止 |
| 過減衰 |
(\zeta > 1) |
(c > c_c) |
振動せずゆっくり戻る(遅い) |
💡 物理的な意味
- 減衰比が 1(臨界減衰) のとき、システムは振動せずに最短時間で平衡位置に戻る。
- 減衰がそれより小さいと(ζ<1)振動を伴う。
- 減衰が大きすぎると(ζ>1)振動しないが時間がかかる。
したがって、
「(c = 2\sqrt{m k}) のとき減衰比は1ですか?」
→ はい、減衰比は1で、これを臨界減衰状態といいます。
ダンパの減衰係数cと系全体の減衰係数が一致しているときに、もっとも早く静止するのですか?
とても良い質問です。
ここでポイントは,「
ダンパの減衰係数 (c)」と「
系全体の減衰特性」の関係を明確に区別することです。
🧩 基本:運動方程式
1自由度系
[
m\ddot{x} + c\dot{x} + kx = 0
]
では,減衰係数 (c) は「ダンパの粘性係数(比例定数)」そのものです。
系全体の
減衰比は
[
\zeta = \frac{c}{2\sqrt{mk}}
]
で定義され,臨界減衰時(最も早く静止)には
[
c = c_c = 2\sqrt{mk}
\quad\Rightarrow\quad
\zeta = 1
]
⚙️ つまり:
- ダンパの減衰係数 (c) が 系の臨界減衰係数 (c_c) に一致したとき(つまり (\zeta=1) のとき)
→ 最も速く静止(オーバーシュートなしで元の位置に戻る)
- (c < c_c)(不足減衰)では振動を伴って徐々に静止
- (c > c_c)(過減衰)では振動しないが、逆にゆっくり静止(遅くなる)
📊 イメージで言うと
| 減衰状態 |
ダンパ係数 (c) |
重心の動き |
静止までの時間 |
| 不足減衰 ((\zeta<1)) |
小さい |
振動を伴いながら収束 |
中くらい(振動分で余計に時間) |
| 臨界減衰 ((\zeta=1)) |
ちょうど良い (c=c_c) |
振動なしで一番速く収束 |
最短 |
| 過減衰 ((\zeta>1)) |
大きい |
振動せずゆっくり戻る |
遅い |
💡 直感的な理解
- ダンパが弱い → 減衰不足 → 何度も振り返して時間がかかる
- ダンパが強すぎ → 動きにブレーキがかかりすぎてゆっくりしか戻らない
- ちょうど臨界減衰((c=c_c)) → 最速で止まる
✅ 結論
「ダンパの減衰係数 (c) と系の臨界減衰係数 (c_c=2\sqrt{mk}) が一致するとき、最も早く静止する」
→ はい、正解です。
その状態が「臨界減衰(critical damping)」であり、減衰比 (\zeta = 1) です。
減衰係数はなぜ重根が0となるのですか?
とても鋭い質問です。
「減衰係数が臨界値 (c = c_c = 2\sqrt{mk}) のときに“重根になる”」というのは、
運動方程式の特性方程式がちょうど重解(判別式=0)を持つことを意味します。
以下でその理由を数式で説明します。
1. 基本方程式
自由振動(外力なし):
[
m\ddot{x} + c\dot{x} + kx = 0
]
これをラプラス変換や指数解 (x=e^{st}) を仮定して代入すると、特性方程式は:
[
m s^2 + c s + k = 0
]
2. 判別式(根の種類を決める)
二次方程式
[
m s^2 + c s + k = 0
]
の判別式 (D) は
[
D = c^2 - 4mk
]
これによって根の性質が変わります。
| 状態 |
判別式 (D=c^2-4mk) |
根の形 |
減衰状態 |
| (D>0) |
(c^2 > 4mk) |
実数・異なる2根 |
過減衰 |
| (D=0) |
(c^2 = 4mk) |
実数・重根 |
臨界減衰 |
| (D<0) |
(c^2 < 4mk) |
複素共役根 |
不足減衰 |
3. 「重根が0になる」=「判別式が0」
つまり、
[
D = c^2 - 4mk = 0
]
のとき、
[
c = 2\sqrt{mk} = c_c
]
このときの根は
[
s = -\frac{c}{2m} = -\frac{c_c}{2m} = -\sqrt{\frac{k}{m}} = -\omega_n
]
という
重根になります。
4. 物理的な意味
- (D<0):減衰が小さい → 複素根 → 振動(不足減衰)
- (D>0):減衰が大きい → 実根2つ → 振動せず遅い収束(過減衰)
- (D=0):ちょうど臨界 → 実根が重なり (s=-\omega_n) → 振動せず最速で収束
つまり、「
判別式が0になる=根が重なる=臨界減衰」なのです。
✅ まとめ
| 項目 |
数式 |
意味 |
| 特性方程式 |
(m s^2 + c s + k = 0) |
減衰付き振動の運動方程式 |
| 判別式 |
(D = c^2 - 4mk) |
根の種類を決める値 |
| 臨界条件 |
(D = 0) |
重根発生・最速収束 |
| 臨界減衰係数 |
(c_c = 2\sqrt{mk}) |
振動せず最速で静止する条件 |
🔹
要するに
減衰係数が臨界値 (c = 2\sqrt{mk}) のとき、二次方程式の判別式が0になり、根が重なる(重根になる)。
これが「臨界減衰(critical damping)」の定義です。
なぜ系全体の減衰比は \zeta = \frac{c}{2\sqrt{mk}} と定義されているのですか?
とても良い質問です。
この式
[
\boxed{\zeta = \frac{c}{2\sqrt{m k}}}
]
は「
系の物理パラメータ (m,k,c) と,その系がどれくらい減衰しているか(運動エネルギーがどのくらい早く失われるか)」を
無次元的に表す指標です。
なぜこの形になるのかを、物理と数学の両面から説明します。
🧩 1. 運動方程式からの導出
ばね‐質量‐ダンパ系:
[
m\ddot{x} + c\dot{x} + kx = 0
]
全ての項を (m) で割ると:
[
\ddot{x} + \frac{c}{m}\dot{x} + \frac{k}{m}x = 0
]
ここで
[
\omega_n = \sqrt{\frac{k}{m}} \quad \text{(固有角振動数)}
]
を導入して書き直すと,
[
\ddot{x} + \frac{c}{m}\dot{x} + \omega_n^2 x = 0
]
⚙️ 2. 標準形への変形
次のように係数を「無次元化」しておくと便利です:
[
\ddot{x} + 2\zeta \omega_n \dot{x} + \omega_n^2 x = 0
]
この形にそろえると、系の性質を ζ という
1つの無次元数で比較できるようになります。
2つの式を比べると、
[
\frac{c}{m} = 2\zeta\omega_n
\quad\Rightarrow\quad
\boxed{\zeta = \frac{c}{2m\omega_n} = \frac{c}{2\sqrt{mk}}}.
]
⚖️ 3. なぜこの形が「自然」なのか(物理的意味)
- 分子 (c):粘性減衰の強さ(単位 N·s/m)=速度に比例する抵抗の強さ
- 分母 (2\sqrt{m k}):臨界減衰係数 (c_c)
- 「振動せずに最短時間で静止する」条件から導かれる値(判別式=0の条件)
- (c_c=2\sqrt{m k})
したがって、
[
\zeta = \frac{c}{c_c}
]
となり、「
臨界減衰に対してどの程度の割合で減衰しているか」を表す無次元比になります。
📊 4. ζ の意味と分類
| 減衰比 ζ |
系の状態 |
応答の特徴 |
| ζ = 0 |
無減衰 |
振動が止まらない |
| 0 < ζ < 1 |
不足減衰 |
振動しながら収束 |
| ζ = 1 |
臨界減衰 |
振動せず最短で静止 |
| ζ > 1 |
過減衰 |
振動せずゆっくり静止 |
🧠 5. まとめ(なぜこの形にしたか)
- 方程式を「標準形」に整理すると自然にこの形が出てくる。
- (2\sqrt{mk}) は臨界減衰係数 → 比率で表すと無次元化できる。
- 無次元化された (\zeta) によって、異なる系でも「どれだけ減衰しているか」を同じ基準で比較できる。
🔹
結論:
減衰比 (\zeta = \dfrac{c}{2\sqrt{mk}}) は、
「実際の減衰係数 (c) が臨界減衰係数 (c_c = 2\sqrt{mk}) に対してどの程度の割合か」
を表す無次元量として、運動方程式を標準化したときに自然に現れるため、この形で定義されています。