誘導電動機の回転速度(回転子の回転速度)を求める公式は、以下のように定義されます。誘導電動機の回転速度は、同期速度とスリップによって決まります。
### 誘導電動機の回転速度 \(N_r\) の公式
\[
N_r = N_s (1 – s)
\]
– \(N_r\): 回転子の回転速度(r/min)
– \(N_s\): 同期速度(r/min)
– \(s\): スリップ(無次元)
### 同期速度 \(N_s\) の公式
同期速度は、電源周波数と極数によって決まります。
\[
N_s = \frac{120 \times f}{P}
\]
– \(f\): 電源周波数(Hz)
– \(P\): 電動機の極数
### スリップ \(s\) の公式
スリップは、同期速度と回転子の回転速度の差を同期速度で割ったもので定義されます。
\[
s = \frac{N_s – N_r}{N_s}
\]
スリップは通常、0から1の間の値を取り、0の場合は回転速度が同期速度と同じ(同期運転)、1の場合は回転速度がゼロ(停止状態)を示します。
したがって、誘導電動機の回転速度を求めるには、電源周波数 \(f\)、極数 \(P\)、スリップ \(s\) の情報が必要です。
一分間の回転数の60fが120fになるのはなぜですか?
誘導電動機の同期速度 \(N_s\) の計算において、\(60f\) が \(120f\) になる理由は、極数(ポール数)の関係に基づいています。
### 理由の説明
1. **同期速度の基本的な理解**:
– 同期速度 \(N_s\) は、交流電動機の回転磁界の速度で、回転磁界が1分間に何回転するかを示します。
2. **周波数と回転磁界の関係**:
– 商用電源の周波数 \(f\) は、1秒間における交流の周期数を示します。例えば、50Hzや60Hzといった周波数があります。
– 極数 \(P\) が1対(2極)の場合、電流が1周期(1秒間に1回の正負変化)するごとに、回転磁界は1回転します。
3. **1分間の回転数の計算のための60の使用**:
– 周波数 \(f\) は1秒間あたりの変化数であるため、1分間(60秒)あたりの回転数を求める際には、\(f\) に60を掛ける必要があります。したがって、極数が2の場合は1分間あたりの回転数は次のようになります:
\[
N_s = 60f
\]
4. **極数の影響**:
– 電動機の極数 \(P\) が2以上になると、回転磁界の速度は遅くなります。これは、1対(2極)につき1周期あたりに回転磁界が半回転しか進まないためです。
– したがって、2対(4極)の場合、1周期あたり回転磁界は1/2回転しか進まず、同期速度はその分だけ遅くなります。
5. **同期速度の公式**:
– 極数 \(P\) を考慮すると、同期速度の公式は次のようになります:
\[
N_s = \frac{120f}{P}
\]
– ここで、\(120f\) という式が出てくるのは、周波数 \(f\) による1秒間のサイクル数(60秒を1分に変換するための60)と、極数による2の調整(もう一つの60)がかけ合わさるためです。
### まとめ
– \(60f\) は、1極(2ポール)の場合の回転数を示しています。
– 極数が2(4ポール)になると、実際の回転速度は半分になるため、公式としては \(120f / P\)(\(P\) はポール数)を使用します。これにより、 \(60f\) が \(120f\) になる背景が説明されます。
周波数50はすべての極で50回の周期がきますか?全極の合計が50ですか? ?
交流電動機の周波数50Hzは、電源の交流電流が1秒間に50回のサイクル(正負の変化)を持つことを意味します。この50Hzという周波数は、**全ての極で共通**です。具体的には、次のような意味になります:
1. **周波数と極数の関係**:
– 周波数50Hzは、電源から供給される交流電流の1秒あたりの周期数を示しています。これは電動機のコイル内の磁界の変化率にも影響します。
– 極数(ポール数)は、電動機のステーター(固定子)内で作られる磁極の数を示します。例えば、2極(1対の磁極)や4極(2対の磁極)などがあります。
2. **各極での周期の理解**:
– 周波数50Hzであれば、電動機の**すべての極**で1秒間に50回の周期が発生します。これは、電流が1秒間に50回正から負に、または負から正に変化することを意味します。
– したがって、極数に関係なく、電動機全体で1秒間に50回の交流サイクルが発生します。
3. **回転磁界と極数**:
– 極数に応じて、ステーター内で発生する回転磁界の速度が変わります。例えば、2極(1対の磁極)では、1周期で回転磁界が360度回転します。したがって、50Hzでは1秒間に50回転します。
– しかし、4極(2対の磁極)では、1周期で回転磁界が180度しか回転しないため、50Hzの電流が供給されると、回転磁界の回転速度は1秒間に25回転になります。
4. **まとめ**:
– 周波数50Hzの交流電流では、電動機のすべての極で1秒間に50回の電気的周期が発生します。これは各極で共有されるもので、**全極の合計が50になるのではなく、全極で個別に50回の周期が発生する**という意味です。
– 各極の数が増えると、回転磁界の物理的な回転速度が変化しますが、電気的な周期数(50Hz)は変わりません。
したがって、周波数50Hzは「すべての極で1秒間に50回の周期が発生する」ことを示します。
これらの周期は全ての極で同期していますか?
はい、交流電動機において、すべての極で発生する周期は**同期しています**。これは、電源から供給される交流電流が全ての極で同時に同じ周波数(例えば50Hz)で変化するためです。
### 理由と仕組みの説明
1. **電源供給の一貫性**:
– 電動機に供給される交流電流は、単一の電源から来ており、周波数と位相は全ての極で同じです。したがって、電流が1つの極でプラスからマイナスへ、またはその逆に変化すると、他の全ての極でも同じように変化します。
2. **回転磁界の生成**:
– 交流電流がステーターコイルに流れることで、回転する磁界が生成されます。極数に応じてこの磁界は物理的に回転し、ローター(回転子)を駆動します。
– この回転磁界は、全ての極で同時に発生し、同期した状態で動作します。例えば、4極のモーターでは、各極が90度ずつ位相がずれており、交流電流の変化に従って磁界が回転しますが、それぞれの極は同じ周波数で動作しています。
3. **同期と極の関係**:
– 電動機の全ての極で発生する磁界は、電源周波数に従って同期しています。このため、回転磁界は滑らかで一貫した回転運動を作り出します。極ごとの磁界の位相は異なる場合がありますが、これも電動機の設計によって意図的に配置されており、全体としては同期して動作しています。
4. **結果としての同期動作**:
– すべての極が電気的に同期しているため、誘導電動機の回転磁界は一定の速度で回転します。この速度は「同期速度」と呼ばれ、周波数と極数によって決定されます(例えば、同期速度 \(N_s = \frac{120f}{P}\))。
### まとめ
– **すべての極で同期している**: 交流電源から供給される電流は、電動機の全ての極で同じ周波数と位相で動作しており、結果としてすべての極の周期は同期しています。
– **物理的な回転速度と電気的な同期**: 極数が変わることで回転磁界の物理的な回転速度は変わりますが、電気的な周期は全ての極で同期しています。
したがって、全ての極は同じタイミングで電気的に動作し、同期した状態で回転磁界を生成しています。
全てで同期していて回転になりますか?順番でなくてよいのですか?
はい、すべての極で電気的な周期が同期していても、物理的な回転磁界の生成には「順番」が重要です。交流電動機の動作原理では、極が「順番に」磁界を生成し、それが連続して回転する磁界を形成します。つまり、電気的には同期していますが、極ごとに位相が異なるように設計されているため、磁界が順番に発生し、結果として回転磁界が生成されます。
### 詳細な説明
1. **同期しているが位相が異なる**:
– 電動機に供給される交流電流は、すべての極で同じ周波数で動作しており、電気的には同期していますが、各極は異なるタイミングで電流が最大値(または最小値)になります。これを「位相のずれ」と呼びます。
2. **位相のずれによる順序正しい磁界の生成**:
– 電動機の極(例えば、4極のモーターの場合)は、90度ずつ位相がずれています。この位相のずれにより、各極が順番に最大の磁界を生成し、その磁界が回転するように見えます。
– これにより、回転磁界が生まれ、その回転磁界がローター(回転子)を引き込むことで、実際にモーターが回転します。
3. **回転磁界の生成の仕組み**:
– 例えば、3相交流電源を使用した誘導電動機の場合、各相は120度ずつ位相がずれています。これにより、3つのコイルが順番に磁界を生成し、全体として回転する磁界を形成します。これが「回転磁界」の基本的な原理です。
4. **物理的な順序が重要**:
– もしも各極が同時に最大の磁界を生成した場合、回転磁界は形成されず、モーターは回転しません。そのため、極ごとの磁界生成のタイミング(位相のずれ)が非常に重要です。
### 結論
– **電気的同期と物理的回転**: 電気的にはすべての極が同期しているものの、位相のずれによって極ごとに順番に磁界を生成し、これにより回転磁界が形成されます。
– **順番が必要**: 各極の磁界が「順番に」生成されることで、回転磁界が形成され、ローターが回転する力を生み出します。したがって、電動機が回転するためには、この順番が不可欠です。
このように、電動機のすべての極は電気的に同期していますが、物理的な回転磁界を作るためには、極ごとの位相ずれが必要であり、その順番が正しくないと回転が成立しません。
位相のずれはどのように生み出していますか
位相のずれは、主に**多相(通常は3相)交流電源**を利用することで生み出されています。多相交流電源では、各相の電流が一定の位相差を持っているため、モーター内の各極に供給される電流にも自然と位相のずれが生じます。これにより、各極が異なるタイミングで磁界を生成し、結果として回転磁界が生まれます。
### 位相のずれの生成方法
1. **3相交流電源の仕組み**:
– 3相交流電源は、3本の電力線(相)があり、それぞれが120度の位相差を持っています。この位相差は、交流電源が持つ基本的な特性であり、正弦波状の電流が互いにずれて流れます。
– 各相の電流の時間的な波形は、1つのサイクル(360度)を3等分した120度ずつのタイミングでピークを迎えるようになっています。
2. **位相のずれの役割**:
– 3相交流電流がステーター(固定子)のコイルに流れると、各相のコイルが交互に磁界を生成します。この位相のずれにより、磁界は順番に異なるコイルから発生し、これが連続することで回転磁界が形成されます。
– 例えば、A相が最大磁界を生成しているとき、B相は中間の磁界を、C相は最小の磁界を生成しているといった具合で、時間の経過とともにそれが順番に変化します。
3. **回転磁界の形成**:
– 3相交流電流がステーターのコイルに流れると、各相が作る磁界が順番に最大化します。これにより、磁界が空間的に回転しているように見えます。
– この回転磁界がローター(回転子)に影響を与え、ローターがその回転磁界に追従して回転を始めます。
4. **位相ずれの電動機設計での考慮**:
– 電動機のステーターコイルは、3相電流が流れることを前提に、120度ずつ空間的に配置されています。この設計により、各相の電流が持つ120度の位相差が物理的な配置と一致し、効率的に回転磁界が生成されるようになっています。
### まとめ
– **位相のずれの源**: 位相のずれは、3相交流電源の120度の位相差によって自然に生み出されています。
– **回転磁界の生成**: この位相のずれにより、各極が順番に磁界を生成し、それが回転磁界を形成します。
– **電動機の設計**: 電動機のステーターコイルの配置は、これらの位相のずれを効率的に利用するように設計されています。
したがって、位相のずれは3相交流電源の基本的な特性に由来しており、それが電動機の回転磁界生成の鍵となっています。
極数による2の調整(もう一つの60)がかけ合わさるというのが良くわかりません
説明がわかりにくかった点を補足します。誘導電動機の同期速度の公式で出てくる「120」という数字について、より明確に説明します。
### 同期速度の公式の背景
誘導電動機の**同期速度** \(N_s\) は、電源の周波数 \(f\) と極数 \(P\) によって決まります。公式は以下の通りです:
\[
N_s = \frac{120f}{P}
\]
– \(N_s\): 同期速度(毎分回転数、rpm)
– \(f\): 電源周波数(Hz)
– \(P\): 極数(ポール数)
#### 「120」という数字の意味
1. **基本的な理解**:
– 周波数 \(f\) は「1秒間あたりの周期数」を表します。例えば、50Hzの周波数であれば、1秒間に50回の交流周期(正負の変化)が発生します。
2. **1分間あたりの回転数への変換(60倍)**:
– 周波数は1秒あたりのサイクル数なので、これを1分(60秒)に換算するために60を掛けます。つまり、周波数 \(f\) に対して60を掛けると、1分間あたりの周期数を得ることができます:
\[
\text{周期数(1分間)} = 60f
\]
– ここで60が出てくる理由は、時間単位を秒から分に変換するためです。
3. **極数(ポール数)による調整**:
– 誘導電動機の極数 \(P\) が2の場合、回転磁界は1周期で360度回転します。しかし、極数が4の場合は、1周期で180度しか回転しません(2回の磁極の交代で1回転となるため)。
– したがって、極数 \(P\) が2のとき、回転磁界は電源周波数と同じ回転速度になりますが、極数が4のときにはその速度は半分になり、極数が6のときには1/3になります。
4. **「120」の由来**:
– 1分間の回転数に変換するための60と、極数の影響を反映するためにさらに2を掛ける必要があるため、60と2を掛けた値が120となります。
– これにより、最終的な同期速度の公式は:
\[
N_s = \frac{120f}{P}
\]
– ここで、60は時間の変換(秒から分)、2は極数による調整(2極で1サイクルを1回転とする基準)を意味します。
### 結論
– **「120」という数字は、時間単位の変換(60秒から1分)と、極数による回転調整(2で割る)を組み合わせたものです。**
– この公式により、電源周波数 \(f\) と極数 \(P\) を知っていれば、誘導電動機の回転磁界の同期速度 \(N_s\) を計算することができます。
極数 P が2の場合、回転磁界は1周期で360度回転します。
これは極は2で対だと何個で、ポールだと何個ですか?
極数 \(P\) が2の場合、電動機の極は**1対(2つの磁極)**です。これは、1つの**北極(N極)**と1つの**南極(S極)**から構成される1組の磁極のことを指します。以下で、極数とポール(磁極)の数について詳しく説明します。
### 極数とポールの関係
1. **極数 \(P\) の定義**:
– 「極数(ポール数)」\(P\) は、電動機のステーター(固定子)内で生成される**磁極の数**を表します。通常、極数は**ペア(対)で数えられます**。
– 極数が2の場合、それは**1対の磁極**(1つのN極と1つのS極)を持つことを意味します。
2. **「極」と「ポール」の違い**:
– 「ポール(磁極)」は、N極またはS極のどちらかを指し、1対の極には2つのポールが含まれます。
– 極数が2という場合、それは2ポール(1つのN極と1つのS極)を意味します。
3. **回転磁界の動作**:
– 極数 \(P\) が2の場合、回転磁界は1周期(1電気サイクル)ごとに**360度回転**します。これは、N極からS極への磁界が一巡することで1回転が完了するためです。
4. **他の極数の場合**:
– 極数が4の場合、電動機には2対の極があります(4ポール)。この場合、1周期で180度しか回転しません。なぜなら、1回転に必要な極数が倍になるためです。
– 同様に、極数が6の場合は3対の極(6ポール)が存在し、1周期で120度回転します。
### 結論
– **極数 \(P = 2\)** の場合:
– **対(ペア)の数**: 1対(1組のN極とS極)
– **ポールの数**: 2ポール(1つのN極と1つのS極)
したがって、極数が2の場合、1対の磁極(2ポール)が存在し、回転磁界は1電気サイクルで360度回転します。
まとめ
60f は、1極(2ポール)の場合の回転数を示しています。
というような表現がありましたが、これは間違いですか?
はい、その表現は正確ではありません。少し誤解を招く表現になっています。以下で正確な説明をします。
### 正しい理解
「\(60f\) は、1極(2ポール)の場合の回転数を示しています」という表現は、いくつかの点で正確ではありません。
1. **「1極」という表現の誤り**:
– 電動機における「極数」(ポール数)とは、常に対(ペア)で存在します。例えば、極数2(2ポール)の場合、1つのN極と1つのS極がペアになっています。
– 「1極」と表現することはなく、2ポール(1ペア)で「2極」となります。
2. **「60f」の意味**:
– 「\(60f\)」は、「周波数 \(f\) に基づいて、1分間あたりのサイクル数(周波数)を計算する」式の一部を表しています。
– 1秒間に \(f\) 回の周期がある場合、1分(60秒)間では \(60f\) 回の周期があります。したがって、「\(60f\)」は周波数を1分間の時間単位に変換したものです。
3. **正しい表現**:
– 同期速度の公式は次の通りです:
\[
N_s = \frac{120f}{P}
\]
– ここで、「120」は1分(60秒)間の周期数に変換するための「60」と、磁極の対(ポール)の回転を考慮するための「2」を掛けた値です。
### 正しい説明
– **「60f」は1極の場合の回転数を示す」ではなく**:
– 「**\(60f\) は1分間あたりの周期数**を示しており、回転数(rpm)を求めるには極数(ポール数) \(P\) を考慮して計算する必要があります。」
### まとめ
したがって、「\(60f\) は1極(2ポール)の場合の回転数を示しています」という表現は間違いです。より正確には、「\(60f\)」は周波数を1分間の周期数に変換するためのものであり、実際の回転数(同期速度)を計算するには、極数(ポール数)による調整が必要です。