https://www.jstage.jst.go.jp/article/pscjspe/2014S/0/2014S_1025/_pdf/-char/ja
タイトル(英語と日本語)
Visualization of Stress Distribution under Ultrasonic Vibration Cutting
超音波切削における被削材内部応力場の可視化
ジャーナル名と出版年
2014年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集, 2014年
第一著者および最終著者
Hiromi ISOBE, Tsuyoshi IINO
第一所属機関
Nagaoka University of Technology
要旨
本研究では、超音波振動援用切削(UAC)中の被削材内部応力場を可視化した。UACは平均切削力を低減し、加工精度を向上させるが、一般的な動力計では超音波帯域の現象を計測できない。本研究では、超音波振動刃先と同期したパルス発光源と光弾性法を組み合わせ、UAC中の瞬間的な応力場を観察した。その結果、UACは従来の切削に比べ応力場を低減することが確認された。
背景
超音波振動援用切削では、切削抵抗の低減が報告されているが、従来の計測手法では超音波帯域の詳細な応力変動を測定することが困難であった。本研究は、新しい計測技術を用いてUAC中の応力分布を検証し、その切削抵抗低減の要因を解明することを目的とする。
方法
光弾性法を用いて被削材内部の応力分布を測定した。円偏光板を通過した光の位相差を偏光カメラで記録し、応力状態を明暗として可視化した。使用材料にはメタクリル樹脂を用い、加工条件として周波数28kHz、振幅7.5μm、切削速度100-1000mm/minを設定した。
結果
超音波加工時の応力分布では、中立線の角度が切削速度によって変化し、基準応力円直径が最大となる瞬間の応力場を観察した。低切削速度では応力縞がほとんど見られないが、高速では従来加工と類似の結果を示した。
議論
UACは瞬間的な応力分布を制御し、切削抵抗を低減する可能性を持つことが確認された。特に低切削速度では従来の切削方法と異なる挙動を示し、材料加工の効率化に寄与することが期待される。
従来研究との新規性
本研究は、従来の手法では不可能であった超音波帯域の応力分布を高速度撮影と同期パルス光源を用いることで可視化した点で独自性がある。また、切削条件ごとの応力変動を詳細に分析した。
限界
使用材料が限定的であり、異なる材質や加工条件での検証が必要である。また、光弾性法の感度に依存する部分があるため、さらなる計測技術の向上が求められる。
潜在的な応用
本手法は、精密加工や新規材料の切削性能評価に応用できる可能性がある。また、製造業における加工効率の向上や工具寿命の延長に寄与する技術として期待される。