あなたが相手に起こさせたい行動が、一般的か一般的でないかの問題によって説得力は大きく変わってきます。
例を挙げて説明します。

まず、「くしゃみをするときに絶対に手で鼻や口を覆わない友人」を想像してみてください。
この人の行動を変えさせたい場合、強調すべきなのは、くしゃみをするときに手で鼻や口を覆う人の良い面をでしょうか、それとも覆わない人の悪いめんでしょうか。

 

心理学者のH・ブライトンのチームは、メッセージの組み立て方の成否は、相手がそのメッセージと関係する社会規範をどのように認識しているかで決まると考えました。
すでに述べたように、人は社会規範に従おうとするものです。

しかし、しばしば自分を個性的にしてくれる基準に基づいて、自らを定義しようともします。
つまり、自分の行動の暗示するものが、自分のアイデンティティーにふさわしいと考えらえる状況であれば、たいていはすでに知っている規範にただ従うのではなく、そこから外れるメリットとデメリットをより慎重に検討するものです。

ゆえに、ほかの人の行動に影響を与えようとするときには、今ある社会規範に従う観点より、そこから外れる観点でメッセージを組み立てたほうが、うまくいくはずです。

たとえば友人が、くしゃみをするときには顔を手で覆うのが規範だと思っているなら、その規範から外れている人の良くない面を強調するメッセージが最も効果的です。
(たとえば「くしゃみをするときには顔を覆わない人は、まわりの迷惑をちっとも考えていない」)。逆に、くしゃみをするときには顔を覆わないのが規範だと考えているなら、その規範から外れている人の良い面を強調するメッセージのほうが効果的でしょう。(たとえば「くしゃみをするときに顔を覆う人は、ちゃんとまわりの迷惑を考えている)

 

彼らの研究から、問題となる行動に対する社会規範を最初に相手に伝えておき、その後、その規範から外れた人たちの特徴を説明すれば、メッセージの説得力が上がるということがはっきりわかります。

スポーツジムが更衣室を清潔に保ちたければ、新規会員に、ほとんどの会員はタオルを床に放ったりせず洗濯籠に入れていると教えたあと、そうしないごく少数の会員はほかの人に対する敬意に欠けていると指摘するのがいいでしょう。

 

もっと知るには・・・

P18社会規範の効果的な利用方法