1. 中間プロセスの排除
    中間マージンを得ているプレーヤーを飛ばして、ビジネスを再構築するアイデアのこと。
    例えば、Uberが普及する以前を思い出してみよう。タクシードライバーで稼ごうと思ったらライセンスの登録に高額なお金を払う必要があり、時給も安かったし、劣悪な労働環境だった。実際、米国では、毎年、何千人ものタクシードライバーが強盗被害に遭っている。一方、ユーザー側にとっては、タクシーがなかなかつかまらなかったり、ドライバーの多くが移民で英語をうまく話せないなど、Unpleasant(快適でない)UXを強いられていた。では、Uberが中間プロセスを排除したらどうなったか?

    まず、Uberドライバーの時給は高くなった。
    先日、サンフランシスコでUberを使った時、陽気なメキシコ出身の中年ドライバーに話を聞いたら、なんと月に8000ドルも稼いでいるという。タクシーなら不眠不休で働いても、とても無理な金額だ。

    また、Uberはユーザー評価で、5点満点中4.6点以下になってしまうと、ドライバーとして仕事ができなくなるルールを採用している。
    つまり、顧客のフィードバックが自分の食いぶちになりクリティカルに影響する。結果として、車もきれいになり、ドライバーもフレンドリーになり、ユーザーの満足度は高くなった。

  2. バンドルを解いて最適化する
    あらゆる機能がバンドル(一つに束ねること)されすぎてUXが悪く、ユーザーに価値が届きにくくなっているものを、一度バラバラにして、価値提案を明確にして提供するアイデアのことを「アンバンドル」という。例えば、従来の新聞のビジネスモデルは、記事、広告、クラシファイド広告(求人情報などテーマごとに整理された広告)、新聞スタンド、配達員、印刷会社など、メディアの機能と流通の機能がバンドルされた状態だ。しかし、それではユーザーは興味が低いコンテンツも目に入る。また、固定の流通コストを負担しなければならない。
    それをアンバンドルして最適化したものが、クラシファイド広告なら「Craigslist」、商品広告なら「Google Adwords」、記事コンテンツなら[Cunosy」、「SmartNews」といったサービスとなる。

    一方、フィンテック系スタートアップは、銀行などの金融機関がこれまで統合して提供してきたサービスをアンバンドルして、圧倒的に高いUXや付加価値を提供。
    一気に市場を奪ってきている。先ほど紹介した「TransferWise」は海外送金の領域で、「WealthNavi」などのロボアドバイザーは資産運用の領域で、米国や中国で大きな市場になっている。

    また、「ソーシャルレンディング」は融資の領域で着実にシェアを伸ばしてきている。これまで銀行が担ってきた機能の一つずつを取り出して、圧倒的に高いUXを高めることで、特に若い世代の指示を得て、ビジネスを急拡大している。
    ただし、アンバンドルしてサービスやプロダクトを提供しようとするなら、10%や20%の改善では足りない。

    その程度のUX改善なら、わざわざアンバンドルする価値がないからだ。
    アンバンドルした結果、10倍くらいUXが改善できそうなものこそ、スタートアップが取り組むべきテーマになる。

  3. バラバラな情報の集約
    あらゆる場所にフラグメント化(断片化)している情報や機能を、一つの場所に集約することによって価値を提供するアイデアのこと。
    分かりやすい例としては「価格.com」がある。従来、私たちは靴をネットで安く買いたいと思ったら、いろいろなECサイトに個別にアクセスして価格を比較する必要があった。非常に時間がかかったし、情報を網羅できているか、不安が残った。
    そこで検索キーワードをいれると、目当ての商品を自動的にリストアップし、ひと目で価格やスペックの比較ができるようにしたのが、価格.comだ。

    このほか、飲食店情報と評価を集約した「食べログ」、ローカルビジネスの情報を集約した「Yelp(イェルプ)」なども、このフレームワークに当てはまる。

  4. 休眠資産の活用
    使われていないリソースを活用し、売り上げを発生させるアイデアのこと。
    Airbnbは、未活用の部屋をキャッシュマシンに変えることができる。リソースといっても、モノやカネの話だけに留まらない。時間も立派なリソースであり、空き時間に仕事を受注できるクラウドソーシングや、休みの日だけドライバーとして働けるUberなども、休眠資産の活用を可能にするアイデアである。

    最近は、サプライドサイドとデマンドサイドの属性データ(過去の行動履歴、購買パターン)なども活用し、より精度の高いマッチングをどう実現するかというところに各社は知恵を使っている。

  5. 戦略的自由度
    既存の枠からあえて外れることで、今までにない価値提案が可能になるアイデアのこと。
    いわゆるブルーオーシャン。
    例えばメッセージアプリは、各社それぞれの特徴(スタンプ利用、実名利用といった違い)はあれども、一度送ったメッセージは半永久的に残るという前提でサービス設計がなされてきた。そこに、メッセージを開いたらすぐに消去される機能を持つ「Snspchat」というメッセージアプリが出てきた。既存のメッセージアプリでのやり取りに飽きていた米国ティーンエージャーに「メッセージを開けたときの新鮮な驚き」を与え、しかもメッセージの送り間違いなどに困っていた人に、「時間がたつと消えるのでもっと自由にコミュニケーションできる」という価値提案をした。
    Snspchatは若い層に圧倒的な支持を得てシェアを伸ばし、2017年に上場を果たした。これまでの戦略や価値提案の枠組みを無視し、自由な発想で価値提案を行う思考の型。

    まだ誰も気づいていない、顧客すら気づいておらず、言語化できていない独自の価値提案を見つける。
    それを具現化したプロダクトとUXを磨きこみながら顧客を魅了することで、市場に浸透させていくアイデアである。

  6. 新しいコンビネーション
    これはビジネスアイデアの鉄板でもあるが、全く違う領域で活用されていたサービスを組み合わせて価値を提供するアイデアのこと。
    高い抽象化能力、要素間の関連性を見つけ、その新結合から勝ち筋を見つける洞察力や創造力が必要になる。例えば「エアークローゼット」という女性向けのアパレルレンタルサービスがある。月額6800円を払うとスタイリストがお薦めの服を選んでくれて、自宅に届く。ユーザーはそれを着用したら洗濯せずに無料で返却できる(気に入ったら買い取ることもできる)。スタイリストサービス、フリーショッピング(送料無料)、フリークリーニング、フリークローゼットという4つのサービスを組み合わせたといえる。

    エアークローゼットを創業した天沼聰氏は、もともとアビームコンサルティング出身でビジネスや業務を抽象化する思考を持っていた。
    その後、楽天に移って買い切り型のECに関わる中で、多くの顧客接点を持つサブスクリプション型(会員型)のサービスこそ、より価値提案をできるというアイデアを思いついた。

  7. タイムマシン
    別の市場で既に検証済みのモデルやプロダクトを、他の市場に持ち込むアイデアのこと。
    私は2015年から東南アジアの投資担当をしていて現地のスタートアップと頻繁にコミュニケーションをとっている。インドネシアのある起業家が「we don’t invent wheels」(私たちが車輪を発明することはない)と言っていたことが印象的だ。つまり既に他の国で検証されたビジネスモデル(車輪)は海外から持ってくればいいと考えているのである。

    誰かのまねだからといって、大成功しないわけではない。インドネシアのライドシェアサービスの「GO-JEK」は、オンデマンド型のバイクライドサービスだ。
    ジャカルタ市内は、GO-JEKの緑色のヘルメットをかぶったバイクライダーであふれている。

    Uberのビジネスモデルをそのまま輸入したものだが、ユニコーンクラブ入りしている。
    彼らがローカライズするに当たって、調整したことは2点ある。
    一つは、インドネシアは渋滞がひどいので、車ではなくバイクの配車をしたこと(あまり安全ではないが、バイクは渋滞をすり抜けることができる)。
    もう一つは、現地はクレジットカードの浸透率が数%と低いので、支払い方法をプリペイドとトップアップ(後からチャージする方法)に変更したこと。
    タイムマシンモデルで勝つポイントは、展開する地域のインフラ特性、現地ユーザーの期待するUXに合わせることだと、GO-JEKの事例が教えてくれる。

  8. アービトラージ
    需要に対して供給が不足している市場に、供給過多になっている市場からリソースを持ってくるアイデアのこと。例えばフィリピンは英語が第二外国語のため、流ちょうに話せる人がたくさんいるが、フィリピンの地元では、英会話教師の仕事を見つけるのは供給過多で容易ではない。
    一方、日本では英会話に対する需要が高いが、在日ネーティブスピーカーの教師数は限られているために、レッスン料は割高だった。

    そこで、レアジョブはフィリピンにいる英会話教師と日本にいる生徒をマッチングさせる仕組みを提供することで、需要と供給のギャップを埋めてビジネスチャンスに結び付けた。

  9. ローエンド型破壊
    既存製品の性能が過剰に高まり、多くの顧客が求める水準を超えてしまっている状況で、過剰な部分をそぎ落とし安価な製品を提供するアイデアの事。
    先ほど解説したティファールによる破壊的イノベーションがこれに当たる。他に面白い例を挙げると、たった500円の料金で健康診断が受けられるケアプロというサービスがある。人間ドックを受けるとなると、通常数万円かかるし、最低でも半日を要する。会社が全額または一部を負担してくれるならまだしも、自営業の人だとその負担は大きい。

    そこでケアプロはプロセルを簡易化することで一気にコストを下げた。
    検査項目は健康な指標となる重要な9項目(血糖値、肝機能、血管年齢など)で、かかる時間はわずか数分だ。

    多くの人は、安心を買うために健康診断を受ける。
    だとすれば、大事なところだけを重点的にチェックするケアプロのようなサービスと、細かな診断結果が得られる従来の健康診断では、ユーザーが体感できる効果差は実はあまりない。

    持続的なイノベーションの枠組みで思考していると、過剰機能とそれに見合う価格を正当化しがちである。
    ローエンド型破壊は、必要最低限だけの機能だけを残し、市場に安価な価格で提供することによって、これまでリーチできなかったセグメントを一気に開拓する発想だ。

  10. As a service化する
    プロダクトを売り切るという発想から脱して、As a service化(サービス化)、サブスクリプション化(会員化)するアイデアのこと。
    日本でもそうだが、特にシリコンバレーではBtoC、BtoBを問わず、あらゆるものがサービス化されている。

    米国ではバックオフィス(間接部門)のサービスの8割が、社内業務から切り離され、外部の業者などが提供するバックオフィス機能のサービスに置き換わっている。
    プロダクトのサービス化により、事業者側は顧客との接点が増え、事業者側とユーザー側両方にメリットが生じる。

    売り切り型のモデルだと、商品を売る瞬間に、ユーザーの満足度や気分の盛り上がりのピークを持ってきてしまう。
    売った後にフォローやメンテナンスサービスを提供することもできるが、その後の顧客接点は断片的になりがちだ。

    サービス化すると、売った後も長期間にわたってサービスを使い続けてもらうことがキーになる。
    顧客と積極的に接点を持ち、フィードバックを受けることで、サービスやUXを改善し続けることができる。
    (サービス化した会員事業にとって最も重要な指標は解約率を減らすことになる)

    最近では、人工知能を高度化する技術の一つ、ディープラーニング(深層学習)がサービス化されるケースも増えている。
    米国のClarifai社がオンラインサービスで提供するディープラーニング機能を使えば、画像認識のモジュールを活用したいと思った企業が、わざわざ機械学習のエンジニアや学習データを保存するサーバーなどを自前で準備する必要が一切ない。

    チャットボット開発ツールをサービス化するhachidori(東京・品川)という日本のスタートアップもある。

    2016年は「チャットボット元年」と言ってもいい年で、自社のカスタマーサポートをチャットボット化する企業が増えた。
    ただ、実際の作業は想像以上に手間がかかり、開発費用も数百万円はかかる。
    その点、このhachidoriのサービスを使えば、月額980円からチャットボットを使うことができる。

    今後は、カスタマーサポートやWebUI(ユーザーインターフェース)、モバイルアプリに加えて、モノに備え付けられたセンサー(IoTデバイス)によって、さらに多くの顧客接点(タッチポイント)を持つことが可能になっていく。顕在化したニーズだけでなく、人の行動データなどを活用して潜在的なニーズを掘り起こせることが、競争優位性の源泉になっていくだろう。

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