プラスチックという言葉は、ラテン語のplasticusから来ており、そのもとは成形できるものを意味するギリシア語のplastikosである。

熱や圧力を加えることで任意の形に成形できる塑性(plasticity)をもっている合成樹脂をプラスチックと呼ぶ。

大石不二夫著「図解プラスチックのはなし」では、石油、天然ガス、石炭といった天然炭素資源を主な原料として、これらを高分子合成反応させることによって、炭素、水素、酸素、窒素、塩素などの原子を鎖状や網状に連結した長大分子(ポリマー)に合成し、更にこのポリマーを主体として、充填剤、補強剤などを配合して得る材料のことを指す、と定義している。

最近では石油、天然ガス、石炭といった化石資源だけでなく、トウモロコシやサトウキビといった生物物質を原料とするバイオプラスチックも開発・生産されるようになっている。つまり、プラスチックという一種類の材料があるわけではなく、多種多様なプラスチックが存在しているのだ。

世界で初めて合成ポリマーからプラスチックが作り出されたのは1970年のことだった。その後、任意の形に成形できる便利なプラスチックはさまざまな分野の幅広い製品に用いられるようになる。

第二次世界大戦後、プラスチックは中流階級の台頭とともに、文化的な民主化のシンボルとなった。1940年代から50年代にかけて急速に大量生産が進んだプラスチックは、社会の発展を支えてきたとも言える。

プラスチックは軽量で耐久性があり、好きな形に成形することができ、かつ安価に生産できるなど、極めて有用で、革命的とさえ言える素材だ。また、プラスチックに添加剤を混ぜることで、私たちの望む特性を持たせることができる。

例えば、ビスフェノールAとフタル酸エステルを添加することで、水に強く、燃えにくいプラスチックができる。こうしてプラスチックは何にでも使える素材となってきた。

現在は環境問題の元凶のように目されるプラスチックだが、実は環境保護のためにその利用が増えてきた経緯もあると聞くと驚くかもしれない。初期の頃、プラスチックが多用されるようになった理由には主に二つあるという。

一つは野生動物の保護だ。従来、装飾品などの材料として使われていた象牙やウミガメの甲羅をプラスチック材料で代用することで、ゾウやウミガメなどをできるだけ殺さずにすむ、というものだ。

もう一つは、どのみち廃棄物になるしかなかった製油所からの副産物をプラスチックペレットとして利用し、経済的な価値に転換するという、廃棄物の有効活用である。

今世紀最大の課題と言われる温暖化の問題に対しても、軽量で耐久性の高いプラスチックは社会・経済活動に伴う温室効果ガスの排出量低減に役立ってきた。たとえば飲料ボトルがガラスからプラスチックに代わることで、軽量化が進み、輸送時のCO2排出量が削減される。容器包装に高性能プラスチックを使用することで、食品貯蔵寿命を延ばすことができ、食品ロス削減につながる。

このように、プラスチックは多くの分野や製品・用途において、環境負荷低減役立ってきた。しかし、プラスチックは人間が創り出した人工物であり、自然の中には存在しない。プラスチックをこれほどまでに特別で有用な素材にしているその特性ゆえに、プラスチックは基本的に自然に還ることができないのだ。プラスチックゴミの、大きな問題の一つは、完全に分解されることはないことだ。より細かく砕かれていっても、消えることはない。たとて肉眼では見えなくなったとしても、環境中に残り続ける。

たとえば発泡スチロール製の容器は、分解するのに数千年もかかり、その間、水や土壌を汚染し続けるという。プラスチックは基本的に自然に還らないため、これまでに生産されたプラスチックのほぼすでてが、埋立場であれ、海の中であれ、今でも存在し続けているのだ。