日々出会う情報はあまりにも膨大で、とてもすべてを調べる事はできない。
吟味すべき情報を見分けるためには、どんどん飛び込んでくる情報や選択肢をフィルタリングする仕組みが必要だ。

 

エッセンシャル思考の人は、目と耳がいい。
(話はそれますが、この記事も似たような事をいっております。:東大生が断言「頭が良い人、悪い人」決定的な差は「目の良さ」)

 

すべての注意を向ける事が不可能だと知っているので、話の空白を聞き、行間を読む。

映画「ハリーポッター」シリーズのハーマイオニーはそれをこう言い表している。
「私ってすごく論理的なの。だから無関係な細部に気を取られないで、みんなが見過ごすものを見抜けるの」

非エッセンシャル思考の人は、耳を傾けているけれど、いつも何かを言う準備をしている。
無関係な細部に気を取られ、瑣末な情報にこだわってしまう。声の大きい意見は聞こえるが、その意味を取り違える。
自分がコメントすることばかり考えていて、話の本質がつかめない。

その結果、彼らは大筋を見失う。作家C・S・ルイスに言わせれば、「洪水の最中に消火器を振り回す」状態になるのだ。

 

 

現代の職場はカオスだ。誰もが声を張り上げて、私たちの注意を引こうとしている。
そんな環境だからこそ、誘惑に惑わされず、本質をつかみとらなくてはならない。

自分の内なるジャーナリストを呼び覚ますための方法を、いくつか紹介しよう。

 

1.日記をつける

ジャーナリストという言葉は、ジャーナル(日記)と語源を同じくしている。
もともとジャーナリストとは「日々の記録を付ける人」というような意味だ。

だからジャーナリストの目を手に入れるには、まず日記をつけてみるといい。

 

人は忘れやすい生き物だ。せっかく体験したことを、片っ端から忘れていく。
例えば、先々週の木曜日に夕食が何だったか、思い出せるだろうか。
3週間前の月曜日は、どんな会議に参加していた?

たいていの人は全く思い出せないはずだ。
日記は、脳のバックアップ装備のようなものだ。
誰かが言ったように、「どれほどすぐれた記憶力も、鉛筆一本にかなわない」。

私は10年も前から日記をつけている。継続の秘訣は、書きすぎないことだ。
いざ日記を始めるとなると、張り切って何ページも書いてしまう人が多い。
すると2日目には気が重くなり、3日目には逃げ出してしまう。

そんなにたくさん書こうと思わず「より少なく、より良く」書いたほうがいい。
日記の習慣が根付くまでは、意識して減らすことが大切だ。

日記をつけたなら、2~3か月ごとに読み返す習慣をつけよう。
といっても細かいことは気にせず、大きな流れを把握するのだ。

1日、1週間、1か月で、あなたの人生に何が起こっただろうか。
日々の小さな変化は見逃しやすいが、まとめて見ると大きな違いに気づくはずだ。

2.現場を見る

スタンフォード大学dスクールの学生だったジェーン・チェンは「定価格デザインを考える」という授業に参加していた。

そのときのテーマは保育器。1台2万ドル以上する保育器の値段を、100分の1に下げられないかというチャレンジだ。
ジェーンはこう説明する。「400万人もの未熟児が、生後28日以内に亡くなっています。安定した体温を保てるだけの脂肪がないからです」

さて、単に値段を下げるだけなら、安い保育器をつくればいい。
だが、本当にそれでいいのだろうか?

チェンとクラスメイトたちは、問題の本質をしるためにネパールへ飛んだ。
現地を取材してわかったのは、新生児の8割が病院でなく、自宅で生まれているという事実だった。
ネパールの村落は電気が通ってないことが多く、たとえ保育器があっても使えない。
つまり本当の課題は、従来の保育器を安くすることではなく、電気を使わない保育器を開発することだったのだ。

この決定的な気づきを得た彼らは、問題の解決に全力で取り組んだ。
やがて「エンブレイス」という会社を設立し、まったく新たなしくみの安価な保育器を発売するに至った。

お湯と保湿ジェルを使った寝袋で、赤ちゃんの体を包み込むというものだ。
保温効果は6時間以上つづき、温度が下がってきたらお湯を取りかえるだけでいい。

現場に足を運び、自分の目で問題をたしかめたおかげで、彼らは問題の本質を知ることができた。
だからこそ、多くの命を救うすばらしい解決法を生み出すことができたのだ。

3.普通を知り、逸脱を探す

マリアム・セマーンは、レバノン出身の実力派ジャーナリスト。
ナイトフェロー研究員としてスタンフォード大学に招かれ、メディアにおけるイノベーションとデザイン思考を研究した専門家である。

そんな彼女に、仕事のコツを訊いてみた。どうすれば膨大なノイズに惑わされず、ストーリーの本質をつかむことができるのだろうか?
知識をつけることです、と彼女は答えた。

ストーリーの本質に迫るためには、その話題を深く知っておくことが不可欠だ。
大切なのは、事件をより大きな文脈の中に置き、一見無関係な分野とのつながりを発見すること。
そのため彼女はあらゆる関連ニュースに目を通し、ほかのジャーナリストが見落としているものを探す。

「ストーリーの描き出す模様を理解し、普通でないところを見つけ出したいんです。
大きな流れの中で、妙な引っ掛かりを感じる部分はないか、と」

そこで彼女が活用するのは、「別の視点で見る」というテクニックだ。
「別の立場にたってみると、事態のあらたな側面が見えてきます。ある人物の目で見たとき、思いがけない一面に気づくかもしれない」

彼女は関係者一人ひとりの立場を想像し、出来事をあらゆる側面から眺めてみる。そうすることで、より深い動機や説明が見えてくるのだ。

問題を明確にする

政治家のインタビューを見ていると、質問をはぐらかす技術の巧みさに感心することがある。
政治家でなくても、多少そういうことをやっているものだ。

必要な情報を集めて明確な答えをだすよりも、あいまいに適当な答えを返すほうがずっとたやすい。
だが、そういう答えはさらなるあいまいさを生み、誤解と無理解の悪循環をもたらす。

そこから抜け出して本質をつかむためには、質問を明確にすることが不可欠だ。

セールスフォース・ドットコムの元副社長イーライ・コーエンは、5人の部下と共にサンフランシスコの高級ホテルの一室に集まっていた。
経営課題のシミュレーションに臨むためだ。これから3時間のあいだに、ほかのチームを圧倒するような解決策を出さなくてはならない。

コーエンのチームは、なかなか前に進めずにいた。何かを意見を言うたびに、さらなる問題や疑問が生まれてくる。
解決策を探していたつもりが、いつしか無秩序な意見のぶつけ合いに変わってしまう。

アドバイザーとしてその場にいた私は、15分経ってから議論を中断させた。
「そもそも今、何の問題を考えているんです?」

私がそう言うと、全員気まずそうに黙り込んだ。それから誰かが別の事を言い、それをきっかけにまた話が脇道にそれていった。
私はもう一度話をやめさせ、同じ質問をした。何度か繰り返したあと、ようやく彼らは静かになり、問題の本質を考えはじめた。

何を解決しなくてはならないか。そのために、何を決めなくてはならないか。
彼らはよけいな話をやめて、個々のアイデアをより深く検討し直した。
それらをつなげる大きな流れは、いったい何なのか。

やがてでたらめな動きがやみ、ひとつの大きな推進力が生まれた。
その勢いに乗って具体的なアクションプランと条件を決め、責任範囲まで確定させた。

ちなみに結果は、彼らのチームの圧勝だった。

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