電力損失は皮相電力➖有効電力ですか?

 

電力損失は、一般的に皮相電力と有効電力の差ではありません。電力損失とは、電力が電力系統や電気機器を通過する際に生じるエネルギーの損失のことを指します。これは主に、電線や変圧器などの電気設備における抵抗によるジュール熱(I^2R損失)、磁気材料のヒステリシス損失、渦電流損失などによって生じます。

一方で、皮相電力(VA、ボルトアンペア)とは、電圧と電流の積で表される電力の総量であり、有効電力(W、ワット)とは、電気エネルギーが実際に仕事をする能力を表します。有効電力と皮相電力の比を力率と呼びます。電力損失を考える際には、これらの概念とは異なり、実際にエネルギーがどの程度失われるかを考慮する必要があります。

したがって、電力損失を直接皮相電力と有効電力の差として計算することは一般的ではありません。電力損失は、送電線や機器を通じてエネルギーがどの程度失われるかに関心があり、その計算にはさまざまな因子が関与します。

零相電圧とは何ですか?

零相電圧(ゼロ相電圧、ゼロシーケンス電圧)は、電力工学において、特に三相交流システムで用いられる概念です。三相交流システムでは、通常、三つの相があり、それぞれが特定の位相差を持っています。零相電圧は、これら三相の電圧が合成されたときに、すべての相に共通する電圧成分を指します。

具体的には、三相システムにおける各相の電圧を、それぞれA相、B相、C相の電圧とした場合、これらの電圧のベクトル和が零でない場合(すなわち、三相が完全にバランスしていない場合)、零相電圧成分が存在すると言えます。これは、アースや中性点に対する電圧として現れ、三相のいずれにも属さない電圧成分として考えることができます。

零相電圧は、地絡(アースフォルト)や不均衡な負荷条件など、システムに何らかの異常が発生したときに顕著に現れることがあります。このため、零相電圧を監視することは、システムの保護や故障診断において重要な役割を果たします。零相電圧の存在は、三相システムが完全に対称ではない、または接地故障が存在することを示す指標となるのです。