サッカーのプレーにおける戦術セオリーに関する学術研究総括
はじめに: 戦術原則とプレーのセオリー
サッカーにおける「プレーの原則」あるいは戦術セオリーとは、攻撃・守備それぞれの局面でプレーヤーやチームが問題解決するための指針となる基本原則を指しますlink.springer.com。例えば攻撃では「突破」「サポート(厚み)」「幅の活用」「モビリティ(活動性)」「即興性」等、守備では「遅らせ(ディレイ)」「カバーリング」「バランス」「集中(コンセントレーション)」等が古典的に挙げられますtokorozawa.w.waseda.jp。これらの原則は1970-90年代にかけて複数の指導者・研究者によって提唱されており、名称や分類に揺らぎはあるものの、基本的な考え方には各国で概ね共通点が認められますresearchgate.netresearchgate.net。ブラジル・ポルトガルの研究者によるCostaら(2009)は、先行文献をレビューし戦術原則を一般原則(全局面で共通する数的原則)、操作原則(各局面で達成すべき状況別の目的)、核心的原則(攻守それぞれでチーム組織を安定・相手組織に不均衡を生み出すための基本原則)に整理しましたresearchgate.netresearchgate.net。さらにCostaらは従来の核心的原則に**「攻撃の統一」および「守備の統一」**というチーム全体の連動性に関わる原則を新たに追加提案していますresearchgate.net。これら戦術原則は、選手の戦術知識・判断力に直結し、チームの戦略プランやプレーモデルを支える基盤となりますlink.springer.com。本稿では、攻撃・守備・トランジション(攻守の切替)・ポジショナルプレー・ビルドアップ・プレッシング・カウンターアタック・セットプレーといったカテゴリー毎に、近年の主要な学術研究成果を整理し、その主題、方法、主要な発見、および実践的含意を概説します。
攻撃:戦術原則と攻撃スタイルの分析
攻撃局面の戦術原則としては先述の通り「突破(縦への侵入)」「厚み(サポート)」「幅の確保」「モビリティ(流動性)」「創造性(即興性)」が古典的に知られていますtokorozawa.w.waseda.jp。近年の研究では、これら原則が選手の発達段階やチームスタイルによってどのように実践されるかが分析されています。Borgesら(2017)はユース選手を対象に戦術行動評価システム (FUT-SAT) を用いて基本戦術原則の遂行頻度を比較しましたresearchgate.net。U-13からU-17の計48名(3カテゴリ)・3689回のプレー分析により、年長カテゴリーほど「オフェンシブ・カバレッジ(攻撃の厚み=サポート)」をより頻繁に用い、逆に年少カテゴリーでは「幅と長さ(ワイドな展開)」の頻度が高いことが示されましたresearchgate.net。U-17はU-13に比べ突破を支援するオフェンシブなカバレッジを増やし、守備網を集中させる傾向があり、一方で若年層は局面を広げるプレーを多用する傾向があるという結果ですresearchgate.net。このことから攻撃戦術原則の実行頻度は年代によって異なり、年齢と経験の向上に伴い攻撃時の自信と組織的安定志向が高まると示唆されましたresearchgate.net。実践的には、ユース育成において年代に応じた戦術原則の指導比重を変える必要性が示唆されます。
攻撃スタイル(ポゼッション vs 直接攻撃)に関する分析も重要です。近年の大規模データ研究では、ポゼッション志向のビルドアップ(後方からパスを繋ぐ攻撃組み立て)とダイレクト志向の攻撃(素早く縦に速攻する攻め)の効果が比較検討されています。Plakiasら(2025)の欧州11か国リーグ・5992チーム分の試合データ分析では、ビルドアップ局面でポゼッションスタイルを選択したチームの方が、ロングボール主体のダイレクトスタイルより勝率が高いことが統計的に示されましたpmc.ncbi.nlm.nih.gov。具体的には、自陣からパスを繋いで攻撃を組み立てる戦術(いわゆるポジショナルな攻撃)が勝利に有利に働いていることが確認されていますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。この傾向は従来から指摘されてきた「ボール支配率の高いチームのほうが勝ちやすい」とする知見を裏付けるものですpmc.ncbi.nlm.nih.gov。実践面では、後方での確実なボール保持と組み立てが試合結果に寄与することから、ビルドアップ能力向上が重要と言えます。
一方で、フィニッシュ段階では速攻の価値も指摘されています。大規模分析によれば、攻撃の最終局面では素早いカウンターアタックが効果的であるケースが多く、ゆっくりしたポジショナル攻撃よりもカウンターからの方が得点に直結しやすいと報告されていますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。実際、Prieto Gonzálezら(2025)の3大リーグ比較研究では、カウンターアタックの方がポジショナル攻撃よりも有効得点率が高いことが示されました(反復測定ANOVAにて主効果p<0.001)researchgate.net。トップ~下位まで各レベルのチームを含めた分析で、いずれのリーグでも速攻の方が攻撃効率が良好であることは一貫しており、現代サッカーにおいて素早い攻撃転換が鍵であると結論付けていますresearchgate.net。この結果はノルウェーリーグにおけるTengaら(2010)の古典的研究(速攻の方が継続的ビルドアップよりゴール期待値が高いlink.springer.com)とも合致し、カウンター重視の戦術的有効性をデータで裏付けるものです。
もっとも、「ポゼッション vs カウンター」の優劣は局面により異なるため、後方ではボール保持、前方では速攻というハイブリッド戦略が有効である可能性が示唆されます。Aranda-Malavésら(2024)の研究は、イングランド・スペイン両リーグから直接攻撃(ロングボール等で速攻する攻撃)だけを抽出して分析しています。その結果、直接攻撃の頻度自体は両リーグで高いものの、ゴールチャンス(シュート機会)の創出効率という点では総じて低く、「あまり効果的ではない」ことが判明しましたfrontiersin.org。特に10,000回以上の攻撃を分析した中で、縦に速く攻めるだけではゴール前で決定機を作り出しにくい傾向があり、成功させるにはいくつか条件があるとされていますfrontiersin.org。具体的には、(1) 自陣深くから攻撃を開始し(=相手が前がかりの状態から素早くカウンターを発動)、(2) 相手守備が低いブロックで構えている状況に縦突破を試み(=相手が自陣に引いていてもその背後や隙を突く)、(3) 攻撃の幅を十分に取って展開することが、速攻型攻撃でペナルティエリア侵入(守備網の突破)を成功させる上で有意に関連しましたfrontiersin.orgfrontiersin.org。一方で、ゴール機会そのものを作り出すためには「縦方向の素早いボール進行(vertical progression)」が唯一の有意要因であり、速攻時でも横幅の活用以上に縦へのスピードが重要であるとされていますfrontiersin.org。この研究の含意は、攻撃の組み立て段階ではポゼッション重視で安定性を確保しつつ、フィニッシュ段階では一気に縦へ速攻を仕掛けるというバランスが理に適っているということですpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。実際、プレスをかいくぐった後の**素早いフィニッシュ(ファイナルサードでの高速コンビネーションや崩し)**が現代トップチームのトレンドであり、データもそれを裏付けています。
また、日本においても攻撃戦術の効果性に関する研究があります。吉村(2003)は**「有効な攻撃」を「ゴールを奪う、またはシュートに至った攻撃」と定義し、大学チームを対象にトレーニング方法を検討しましたtokorozawa.w.waseda.jp。さらに吉村ら(2002)は攻撃における第一・第二・第三のアタッカー(ボール保持者、サポート役、バランス役)の役割**に着目した分析を行い、効果的攻撃のパターンを議論していますtokorozawa.w.waseda.jp。これらの知見は現場での指導にも応用されており、攻撃時の役割分担訓練やシュートに直結する攻撃練習(例:素早いフィニッシュや局面打開の反復)が重要であると示唆されます。
守備:戦術原則と守備戦術の分析
守備局面の戦術原則としては、「遅らせ」(相手攻撃を遅延させ体勢を整える)、「カバー」(抜かれた味方のカバーリング=数的優位の確保)、「バランス」(全体の陣形バランスを保つ)、「集中」(自陣ゴール前への集中・絞り込んだ守備)などが基本とされていますresearchgate.net。Costaら(2009)の整理によれば、守備の操作原則には「シュート機会の無力化」「ボール奪取」「相手の前進阻止」「ゴール防護」「プレースペース圧縮」が含まれ、これらを具体化した核心的原則が上記の遅らせ・カバー・バランス・集中、および新提案の守備の統一(全体コンパクトネス)ですresearchgate.netresearchgate.net。近年、この守備のコンパクトネス(全体の連動した陣形圧縮)が実際に守備成功に寄与するかどうか、トラッキングデータによる検証が行われています。
Forcherら(2023)はドイツ・ブンデスリーガのトラッキングデータを用い、守備時のチーム全体および各ライン間の距離(コンパクトネス)と守備成功(ボール奪取)の関係を分析しましたresearch.rug.nlresearch.rug.nl。全20チーム・数百試合分のデータから、守備時には全チーム共通してDFラインとMFラインの間隔がおよそ10m前後、FWラインまで含めた全体の縦長が13m前後と非常に圧縮された組織を保っていることが分かりましたresearch.rug.nl。しかし注目すべきは、そのライン間距離や全体のコンパクト度合いにおいて、ボール奪取に成功した守備と失敗(崩されてシュートに至った守備)との間に有意差が見られなかった点ですresearch.rug.nlresearch.rug.nl。つまり、ブンデスリーガ級のトップレベルではどのチームも一定以上に高いコンパクトネスを備えており、もはや「ライン間隔を狭めること自体」は差別化要因になっていない可能性がありますresearch.rug.nlresearch.rug.nl(ただし質の低いリーグでは15m以上に開くこともあり得て、そうした場合には守備失敗が増えるだろう、と著者らは推測していますresearch.rug.nl)。一方で、局所的な観点では重要な発見がありました。守備成功に寄与していたのは**「ボール周辺エリアでの高い密集度(コンパクトネス)」であり、守備陣形全体というよりボール付近の局所的な守備圧縮こそがボール奪取を生む鍵だと示唆されたのですresearch.rug.nlresearch.rug.nl。さらに、攻撃から守備への切り替え直後に素早く再び密集を作り直す「収縮(縮み直し)動作」ができているかが重要な指標になる可能性も指摘されていますresearch.rug.nlresearch.rug.nl。実践上は、守備全体の陣形をコンパクトに維持すること以上に、ボール周辺で数的優位を即座に作る連動守備や奪われた直後に素早く陣形を縮め直すトレーニング**が重要であることを意味しますresearch.rug.nl。この知見は、多くの指導者が重視する「全体のコンパクトネス」だけでなく「局所的・瞬間的な圧縮と収縮」を鍛える必要性を示しており、守備戦術指導への示唆は大きいと言えます。
プレッシング(組織的なボール奪取プレッシャー)戦術も守備戦術の中核として盛んに研究されています。プレッシングは相手陣で行う「ハイプレス」から自陣近くでブロックを敷く「ロープレス」まで強度と位置の差がありますが、現代のトップレベルではハイプレス戦術が重要性を増しています。Brîndescuら(2021)はイングランド・プレミアリーグを対象に、高位からプレッシャーをかける戦術(advanced pressing)の統計的効率を検証しましたresearchgate.net。各チームのプレス成功率や守備ブロックの高さなどをfbrefのデータと映像分析で評価した結果、ハイプレスを積極採用するチームはそうでないチームに比べて平均してリーグ戦績が良好であることが示されましたresearchgate.net。具体的には、高い位置でボールを奪い返すことでそのまま相手ゴールに近い位置から攻撃を開始でき、最終的なシュートや期待得点(xG)などの攻撃指標も向上する傾向が見られたのですresearchgate.net。もっとも著者らは、「質の高い選手層がある程度前提」との断り書きをしつつも、現代サッカーでは前線からの組織的プレッシャーが戦術上有効であると結論付けていますresearchgate.net。但し、ハイプレスにはリスクも伴うため、全体の守備ブロックを保ち、前線と最終ラインの間延び(ギャップ拡大)を防ぐ組織構築が必要とも指摘されていますresearchgate.net。実際、Forcherら(2023)の別研究ではハイプレスをかける場面ではチーム長(陣形の縦長さ)が大きくなりやすい(=コンパクトネス低下)ことが報告されておりresearch.rug.nl、ハイプレスと陣形維持の両立が守備戦術の課題です。
最新の具体的な戦術分析例として、Michosら(2025)はUEFAチャンピオンズリーグ2021-22グループステージ全192試合を対象に、ハイプレス発動時の詳細な状況と結果を記録し分析しましたpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。ピッチを18のゾーンに区分し、どのゾーンでプレスを開始したか、奪取成功したか、奪取地点、プレッシング後の攻撃結果、相手の回避方法(ロングボール等)、パス本数などを精査していますpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。その結果、プレスはもっとも相手ゴール前(第1ゾーン)で頻繁に行われ(統計的有意差あり)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov、相手は主にロングパスでこれを回避しようとする傾向が明らかになりましたpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。プレス成功(ボール奪取)は多くの場合ハーフウェーラインと相手PAの間(中央3分の1付近)で起こりpubmed.ncbi.nlm.nih.gov、奪取後の展開として**「相手守備が整った状態への攻撃」や「ボールロスト」に終わるケースが目立ちましたpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。要するに、前線でプレスをかけても相手がロングボールで逃れて一旦中盤で奪い返す形が多く、結果的に奪取時には相手守備が戻って組織化されている場面が多かった、ということですpubmed.ncbi.nlm.nih.govpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。この分析の結論は、「攻撃的サードでのハイプレスは、ボール奪取自体は比較的中盤で起こり、奪取後は組織された守備陣に対して攻撃する展開になりやすい」というものですpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。これはハイプレスのジレンマとも言え、前線で奪えれば即決定機ですが、現実には相手も回避策を取るため一旦中盤で回収して落ち着いた攻撃に移行する必要があることを示唆します。実践面では、ハイプレスを仕掛ける際にはセカンドボールを中盤で拾った後の攻撃準備**(セットオフェンスへの移行)も重要であり、闇雲なプレスではなく計画的なプレスの発動と素早い攻守切替を練習する必要性が示されています。
守備戦術に関連して、日本ではプレスディフェンスの歴史的変遷に関する研究も行われています。例えば山本(2015)は「プレッシング・フットボール」という積極的守備戦術がどのように発展してきたかを文献研究しています(※詳細は割愛)。総じて、現代サッカーの守備は自陣ゴールを守る受動的な姿勢から、前線から奪いに行く能動的姿勢へと変化してきており、学術研究でもデータに基づきその効果と課題が検証されつつあります。
トランジション(攻守の切り替え)に関する研究
トランジションとはボールの支配権が移動する瞬間、すなわち攻撃から守備への切り替え(自チームがボールを失った瞬間)と守備から攻撃への切り替え(ボール奪取した瞬間)の局面です。近年、トランジションは攻撃・守備と並ぶ第3の重要局面として脚光を浴びておりlink.springer.com、この局面を包括的に捉えた研究が増えつつありますlink.springer.comlink.springer.com。しかしながら包括的レビューによると、トランジション全体を体系的に扱った研究は依然不足しており、攻撃トランジション・守備トランジションそれぞれの成功要因や戦術を統合的に扱う定義も未だ議論が一致していないのが現状ですlink.springer.comlink.springer.com。Forcherら(2022)によるスコーピングレビューでも、特に選手追跡データを用いた守備プレー分析が近年台頭しているものの、攻守切り替えを包括した研究は更なる発展が必要と結論付けられていますlink.springer.com。
それでも、トランジションの重要性自体は多くの統計分析から明らかになっています。ゴールがどの局面から生まれるかを調べた多数の研究は、全得点の相当割合がトランジション中に生まれることを示していますlink.springer.comlink.springer.com。例えば、欧州選手権2004では全得点の20.3%がカウンターから、35.6%がセットプレーから生まれました。同様にW杯2006ではカウンター20.3%、セットプレー32.6%、W杯2010決勝Tではカウンター18.8%、セットプレー20.0%という報告がありますlink.springer.com。さらにプレミアリーグでは**「プレーの切り替えからの得点」が全ゴールの63%**にも達し、シュート機会全体でも56%以上がトランジション契機だったとの分析がありますlink.springer.com。これらはいずれも、攻守の切り替え瞬間を制することが試合の結果に直結することを物語っています。実際、**攻撃トランジション(オフェンシブ・トランジション=カウンターアタック)と守備トランジション(ディフェンシブ・トランジション=カウンタープレス)**はいまや現代サッカーの鍵となる局面であり、トップレベルの監督たちもしばしば「トランジションの質」が勝敗を分けると述べています。
最近の包括的レビュー(2024年)link.springer.comでは、攻撃トランジションと守備トランジション双方の知見を整理し、素早い攻守切り替えのトレーニングや戦術的準備の必要性を訴えていますlink.springer.com。特に攻撃側のトランジション、すなわちボール奪取直後のカウンターアタックについて、多くの研究がその有効性を強調していますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。前述の通り、Prietoら(2025)はカウンターがポジショナル攻撃より効率的と示し、Tengaら(2010)も速攻の得点効率を示しましたresearchgate.netlink.springer.com。さらにLopez-Valencianoら(2020)の分析でも「守備から攻撃への素早い移行が勝利の鍵」と結論づけておりpmc.ncbi.nlm.nih.gov、攻撃トランジション(速攻)の質がチーム成績に大きな影響を与えることがデータで裏付けられています。
守備側のトランジション、つまり攻撃から守備への切り替えにおいて重要なのがカウンタープレス(ゲーゲンプレス)戦術です。ボールを失った直後に即時に複数人でプレッシャーをかけ、相手のカウンターを芽から摘むと同時にボールを奪い返す戦術で、近年リバプールやマンチェスター・シティなどトップチームが体現しています。これに関する体系的研究も増えています。例えば、Plakiasら(2025)は相手のカウンター攻撃を阻止しポジショナルな攻撃に持ち込ませる(遅攻にさせる)ことが勝利に寄与する戦術であると指摘していますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。実際、相手にカウンターをさせずにゆっくり攻めさせる(自陣に戻り守備を固める)ことは、被ゴールを減らす上で重要ですpmc.ncbi.nlm.nih.gov。また、Wrightら(2011)のプレミアリーグ分析では**「切り替え時にすぐ奪い返す守備(リターン・オブ・ポゼッション)」が上位チームの特徴として挙げられていますlink.springer.com。さらに前述のForcherら(2023)の研究でも、収縮動作など守備への移行時にいかに素早く再編成できるかが重要と示唆されましたresearch.rug.nlresearch.rug.nl。これらはすべて、ボールを失った瞬間の数秒間における対応が守備の成否を決め、ひいては試合結果にまで影響を与えることを示しています。従って実践的には、攻守切替の専門練習(例えば3秒ルールでの即時奪回ゲームなど)やトランジションを意識した戦術的準備が不可欠です。また分析面でも、トランジションを単なる「過渡期」ではなく第五の局面(攻撃、守備、攻→守トランジション、守→攻トランジション、セットプレー)の一つ**として捉え、今後さらに体系立てて研究していくことが求められていますlink.springer.comlink.springer.com。
Eusebioら(2024)はトランジションに絡む得点パターンをリーグ横断で分析し、興味深い知見を提供しています。その研究では欧州のトップリーグ・マージナルリーグ・新興リーグを対象に、シーズン前半5試合と中盤前5試合の得点パターンを比較しましたbmcsportsscimedrehabil.biomedcentral.com。各リーグ計702試合・2140得点を「非トランジション(オープンプレーからの得点)」「セットプレー」「オフェンス・トランジション(カウンターから直接得点)」「オフェンス・トランジションのポジティブな結果(速攻から二次的に得点)」に分類したところ、前半戦と中盤戦で得点パターンに大きな差はなく、各リーグで安定した傾向が見られましたbmcsportsscimedrehabil.biomedcentral.com。特筆すべきはトップリーグ(プレミア等)で、全得点の54%がカウンターおよび速攻の流れから生まれていた点ですbmcsportsscimedrehabil.biomedcentral.com。これは他リーグより高い割合で、トップレベルほど攻守切替を制することがいかに勝敗を左右するかを物語ります。著者らは、各リーグで季節による戦術傾向の変化が小さいことから確立されたゲームパターンを維持することの重要性を強調しつつ、特にトップリーグでは速攻パターンの突出した重要性を指摘していますbmcsportsscimedrehabil.biomedcentral.com。このことからも、常に攻守切替を意識したゲームモデルの構築とトランジション能力の向上が現代サッカーで求められると結論付けられますbmcsportsscimedrehabil.biomedcentral.com。
ポジショナルプレーとビルドアップ:スペース原理に基づく戦術
ポジショナルプレーとは、スペイン語で「フエゴ・デ・ポシシオン(juego de posición)」とも呼ばれる概念で、ピッチ上のスペースと選手配置の原理に基づきボール保持を志向する戦術哲学です。ジョゼップ・グアルディオラ監督やその源流のヨハン・クライフらが発展させたスタイルで、選手は定められたゾーンや間(インターバル)を占有・活用しつつ数的優位・位置的優位を作り、ボールを失わず前進していくことを目指します。学術的には、このポジショナルプレーを直接テーマとした実証研究は限られますが、ポゼッションスタイルや攻撃の幅・深さの活用といった観点でその効果が分析されています。
前述のCostaら(2009)は、攻撃の核心的戦術原則として「幅と長さの確保」を挙げています。これはまさにポジショナルプレーの根幹で、攻撃時にピッチの横幅いっぱいと縦方向の十分な距離をチームとして取り、相手守備組織を拡げて崩すという原理ですresearchgate.net。また、数的優位の創出も重要な原則で、Costaらは一般原則として「数的不利を許さず、少なくとも数的同数、可能なら数的優位を作る」ことを掲げていますresearchgate.net。ポジショナルプレーではピッチを細分化し各所で数的優位・位置的優位(相手守備間に立つなど)を作ることが重視されますが、これは戦術原則として既に研究上定義されている考え方です。
具体的な分析例として、前述のPlakiasら(2025)のスタイル研究ではビルドアップ局面でのポゼッション志向が勝利に寄与するとされましたpmc.ncbi.nlm.nih.gov。これはポジショナルプレーの前半部(後方組み立て)にあたります。また同研究では攻撃のクリエイティブ局面で中央突破を図り無駄なクロスを多用しない傾向も勝利チームの特徴と指摘していますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。ポジショナルプレーでは安易なクロスよりも中央~ハーフスペースから崩すことが理想とされますが、データ上もクロスの頻度は勝利と負の相関を示し、中央での連携崩しが有効との知見が報告されていますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。さらに、攻撃時に**ボール保持に多くのパスを必要としない(=少ないパスでも決定機を作れる)**チームほど強いという分析もありpmc.ncbi.nlm.nih.gov、効果的にポジショナルプレーを体現できるチームは、要所で素早く縦に攻めてフィニッシュまで持ち込めることが示唆されています。
ポジショナルプレーの効果は育成年代でも議論されています。例えば実務的な議論では「ユース期の指導はポジショナルプレーにフォーカスすべきか?」というテーマもありますが、学術研究としては先述のユース戦術理解(FUT-SAT)研究researchgate.netや、スタイル別の育成年代比較(例:ボーンマス大の分析でU16/18とトップの比較eprints.bournemouth.ac.uk)などが参考になります。後者では、トップチームほどビルドアップでのパス本数が多く、クロスも増える傾向が指摘されeprints.bournemouth.ac.uk、成熟したレベルでは組織的にパスを繋ぐ傾向が顕著になると報告されています。この意味で、ポジショナル志向は経験とともに深化するスタイルとも言えます。
もっとも、ポジショナルプレー一辺倒が常に良いとは限りません。前述の通りポゼッションと速攻のバランスが鍵となるため、相手によってはポジション志向を捨ててロングカウンターを多用する戦術も有効です。実際、Gollanら(2018)の研究ではプレミア上位チームはこぞってトランジション志向(速攻主体)のスタイルだったとの報告もありますlink.springer.com。したがって、ポジショナルプレーは多彩な戦術の一選択肢であり、常に状況に応じて適切な戦術原則を使い分ける柔軟性が求められるといえますlink.springer.comlink.springer.com。総じて、学術研究はポジショナルプレー(ボール保持とスペース活用)の有効性を一定程度支持しつつ、速攻との組み合わせが重要であることを示しており、これは現代のトップチーム戦術と合致します。
プレッシング:守備戦術としての圧力
(※プレッシング戦術については前述の「守備」セクションですでに詳述していますが、重複を避けつつ要点をまとめます。)
プレッシングは守備戦術の一環ですが、特に相手陣内での組織的プレス(ハイプレス)は現代戦術の象徴とも言え、分析も盛んです。Brîndescuら(2021)はプレミアリーグにおいてハイプレス戦術を敷くチームは成績が良いと報告しましたresearchgate.net。またPlakiasら(2025)のスタイル分析でも、高い位置でボールを奪おうとする守備(ハイプレス)は勝利確率を上げる有意な要因とされていますpmc.ncbi.nlm.nih.gov。一方で、闇雲なアグレッシブ守備はファウルやカードが増え逆効果になるため、規律とのバランスが重要との指摘もありますpmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov。実際勝利チームはファウルや警告が少ない守備傾向もデータに現れておりpmc.ncbi.nlm.nih.gov、賢いプレス運用が求められます。
先端研究から得られたプレッシング戦術の知見としては、Michosら(2025)のCL分析でハイプレスの結果生じる典型パターンが明らかになりましたpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。それによると、前線でプレス→相手がロングボールで回避→中盤で奪取→相手守備が戻った状態で攻撃再開という流れが多く、必ずしも即シュートには至らないことが分かりましたpubmed.ncbi.nlm.nih.govpubmed.ncbi.nlm.nih.gov。これは、ハイプレス成功=即得点機ではなく、セカンドボールを制して二次攻撃につなげるフェーズが重要であることを示唆します。従って練習では、プレス後に中盤でボールを拾った際の攻撃パターンも備えておく必要があります。
また、プレスの成功測定に関する研究も登場しています。例えばLeuven大の研究(Decroosら)では、プレスによる相手攻撃の阻止効果を定量化する指標作成を試みていますpeople.cs.kuleuven.be(Pressing Efficiencyの評価など)。このようにプレッシングはデータ分析でもホットトピックであり、プレス強度や成功率をチームパフォーマンス指標に組み込む動きも見られます。
総じて、プレッシング戦術の学術的知見は「ハイプレスは有効だがリスク管理と組織維持が肝要」「プレス成功後の展開を含めた総合力が必要」という実践上の教訓を与えていますresearchgate.netresearch.rug.nl。指導者にとっては、チーム全体の連動(ライン間の距離維持)と判断力を鍛え、状況に応じたプレスのかけ方・緩め方を習得させることが課題となります。
カウンターアタック:速攻戦術の効果
**カウンターアタック(速攻)**は、守備から攻撃へのトランジションにおける花形戦術です。既に攻撃セクションやトランジションセクションで述べたように、カウンターの有効性は多くの研究で示されています。特にPrieto Gonzálezら(2025)の大規模分析は、カウンター攻撃の得点効率がセットした遅攻(ポジショナルアタック)より高いことを明確に示しましたresearchgate.net。また、Tengaら(2010)の古典的研究でも速攻の方が得点につながりやすいと報告されておりlink.springer.com、これらは現代サッカーの直感とも合致します。
カウンターアタックの成功要因については、Aranda-Malavésら(2024)の分析が詳細です。同研究では速攻が有効となる場面として、(1) 自陣深くでボールを奪い相手が前がかりの状態であること、(2) 攻撃に幅を使い相手守備を広げること、(3) 相手が低いブロックであっても縦に素早く侵入すること、が挙げられましたfrontiersin.org。特に「縦への迅速なボール運び」が決定機創出には不可欠とされていますfrontiersin.org。これはすなわち、カウンター時にはサイドチェンジよりも前方向への推進力が重要という意味であり、実戦でもボールを奪ったら数秒でシュートまで行くケースが理想とされます。
また、Eusebioら(2024)の研究からは、カウンターで得点を奪えるチームはシーズンを通じて安定して強いことが示唆されます。トップリーグでは速攻由来の得点が過半数を占めるほどでありbmcsportsscimedrehabil.biomedcentral.com、カウンターを武器とするチームは常に一定の成果を上げているようです。このことから、どのレベルでもカウンターアタックの習熟は勝利への近道と言えます。
他方、カウンターアタックは成功すれば大きい反面、失敗すると自チームの陣形が崩れてピンチになるリスクも孕みます。したがって、カウンターに出る選手と残る選手のバランス(リスクマネジメント)も重要ですresearch.rug.nlresearch.rug.nl。現代ではセットプレーからの被カウンター対策なども重視されており、コーナーキック時にあえて守備を厚く残すチームもあります。速攻の威力を引き出しつつ、奪われた場合に即リカバリーできる体制を敷くことが、指導上求められるポイントです。
まとめると、学術研究は**「カウンターは効果的な得点手段であり、戦術上重視すべき。ただし成功条件とリスク管理を理解して運用せよ」という示唆を与えていますresearchgate.netfrontiersin.org。実際のトレーニングでも、奪ってからフィニッシュまでの一連の速攻パターン練習や、逆に速攻を防ぐトランジション守備**の両面を鍛えることが重要でしょう。
セットプレー:攻撃と守備の定型戦術
セットプレー(リスタート局面)は、戦術原則とはやや趣を異にしますが、試合の約1/3の時間を占める重要局面として研究対象になっていますmdpi.commdpi.com。セットプレーにはコーナーキック、フリーキック、スローイン、PKなどがありますが、特にコーナーキックは頻度も高く戦術介入の余地が大きいため、多くの分析がなされていますmdpi.commdpi.com。Plakiasら(2025)はコーナーキックに関する既存研究21本を網羅した体系的レビューを発表し、技術・戦術的要素と成果の関連を整理していますmdpi.commdpi.com。
同レビューの結果によれば、攻撃側のコーナー戦術としては「キッカーから見てファーサイド(遠いサイド)への間接的なボール送り」と「3~4人のダイナミックな攻撃陣形(連動した動き)」がシュート成功確率を高めることが示されていますmdpi.com。具体的には、ニアポストに囮を走らせつつファーへインスイングで蹴り、3~4人が連動して相手守備を崩すようなプレーが有効であったとのことですmdpi.com。一方、守備側の戦術としては「マンツーマンとゾーンを組み合わせたミックス守備」かつ「ニアポストにポストマンを配置して守る」ことが、失点率を下げるのに寄与すると報告されていますmdpi.com。完全なゾーン守備や全員マンマークよりもハイブリッドな守備が有効で、特にニアをケアすることで失点の多くを防げるという知見ですmdpi.com。
しかし、レビューは同時に課題も指摘しています。既存研究間でピッチ内のゾーン区分方法が統一されておらず結果の比較が難しいこと、文脈要因(試合展開や相手情報など)の考慮が不足していること、さらに**攻撃側CKが失敗した後のトランジション(被カウンター)**を扱った研究が極めて少ないことなどですmdpi.commdpi.com。実際、コーナーから直接得点になる確率は約3%と低い一方、得点時は試合結果を左右する重要局面でもありますmdpi.com。加えてコーナー後の被カウンターで失点するリスクもあるため、攻守双方でセットプレー後のトランジション対応が今後の研究課題とされていますmdpi.com。
セットプレー全般の重要性については、Dimov & Atanasov(2022)の報告も引用に値します。それによれば、実力が拮抗したチーム同士の試合ではセットプレーが勝敗を決する割合が高いとの分析があります(例えば大会ノックアウト戦ではセットプレー得点が決勝点になるケースが多い等)。このため、トップレベルでは専門のセットプレーコーチを置く例も増えており、科学的な分析結果が現場に導入されつつあります。
実践的な含意として、攻撃側ではクリエイティブなキック戦術や複数人の連携パターンの練習、守備側ではゾーン+マンマークリバウンド戦術の確認、そして双方にリスタート直後の攻守切替(セカンドボール対応やカウンター警戒)の徹底が重要といえますmdpi.com。研究者はさらなるデータ蓄積によるセットプレー戦術の高度化(例えばメタ分析による最適戦術の抽出)を提言しておりmdpi.com、今後もアップデートされる分野でしょう。
結論
サッカーにおけるプレーのセオリー(戦術原則)は、攻撃・守備・トランジション・セットプレーといったあらゆる局面でチームパフォーマンスを支える重要概念です。近年の学術研究は、従来コーチング論で語られてきた原則や定石をデータの裏付けとともに検証・深化しています。攻撃ではボールポゼッションと速攻の双方にメリットがあり、状況に応じたハイブリッド戦略が有効であることが示唆されました。守備では全体のコンパクトネス維持やハイプレスの重要性が確認されつつ、局所的連動や判断力といった質的側面の必要性も浮き彫りになりました。トランジションは得点・失点に直結する局面として研究が活発化し、攻守切替の瞬間を制することが勝利への鍵であるデータ的証拠が蓄積しています。セットプレーについても、最適な攻守戦術や課題が明らかにされつつあります。
学術論文の知見は現場の戦術分析・指導に直接役立つ示唆を多く含んでいます。例えばユース指導者は年代別の戦術理解度を踏まえたトレーニング計画を立てることができますし、トップチームの分析担当者はデータに基づき自チームのスタイル選択(ポゼッション重視か速攻重視か等)やセットプレー戦略の改善を図ることができます。今後もデータ分析技術の発展に伴い、戦術原則の定量的評価や新たな戦術コンセプトの検証が進むでしょう。伝統的なセオリーを押さえつつ最新研究の知見を取り入れることが、プロからアマまでサッカー戦術の研鑽において重要だと言えます。
最後に、本調査で言及した主な研究を表形式でまとめます。
| 論文 / 出典 | 主題(対象) | 手法 | 主な発見 | 実践的示唆 |
|---|---|---|---|---|
| Costa et al. (2009)researchgate.netresearchgate.net | 戦術原則の概念整理(理論) | 文献レビュー(ポ語原典の邦訳) | 攻守の一般・操作・核心原則を分類整理。核心原則に「攻撃/守備の統一」を新提案。 | 用語・概念の統一が戦術指導に必要。特に全体の連動性(統一)を新たな原則として強調。 |
| Borges et al. (2017)researchgate.netresearchgate.net | 基本戦術原則の年齢差(U-13~U-17) | 48名・3689プレーをFUT-SAT分析 | 年長ほど攻撃のサポート・守備集中を重視、年少ほど幅の活用が多い。原則実行頻度に世代差。 | 育成年代に応じ戦術原則の指導配分を調整すべき可能性。守備重視から攻撃自信の漸増。 |
| Prieto et al. (2025)researchgate.net | ポジショナル攻撃 vs カウンター攻撃効率(欧州3大リーグ) | 観察統計(702試合・2140得点分析) | カウンター攻撃がポジショナル攻撃より有効得点率高い(p<0.001)。リーグ・チーム格問わず速攻有利。 | 速攻重視戦術の有効性を裏付け。守備から攻撃への切替をいかに活用するかが重要。 |
| Aranda-Malavés et al. (2024)frontiersin.orgfrontiersin.org | 直接攻撃(速攻)の戦術要因(EPL vs LaLiga) | 2リーグ40試合・10,078攻撃中2,384速攻をロジ回帰分析 | 速攻自体の決定機創出率は低め。ただし縦への素早い進行と幅の活用、自陣から開始等で侵入成功率↑。 | 速攻は頻繁だが闇雲では効果薄。縦の推進力+スペースの幅活用が鍵。自陣からおびき出して速攻◎。 |
| Forcher et al. (2023)research.rug.nlresearch.rug.nl | 守備コンパクトネスと成功要因(ブンデス) | トラッキングデータ解析(数百試合) | 全チーム10~13mの高コンパクト。同程度なら差が出ない。ボール周辺での高密度圧縮が奪取に重要。 | 全体コンパクトは前提条件化。局所的連動守備・素早い収縮(即時再コンパクト)が守備成功の鍵。 |
| Brîndescu et al. (2021)researchgate.net | ハイプレス戦術の有効性(EPL) | スタッツ分析+映像(fbrefデータ) | ハイプレス採用チームの方が成績良好。高い位置で奪取→ゴール近くから攻撃でxG等向上。 | 前線からの組織的プレスは有効。ただし選手の質や組織維持も必要。ハイプレス戦術は訓練次第で成果。 |
| Michos et al. (2025)pubmed.ncbi.nlm.nih.govpubmed.ncbi.nlm.nih.gov | UCLにおけるハイプレス分析 | 全192試合プレス状況統計 | プレス最多は前線。相手はロングボール回避→奪取は中盤に多く、奪取後は整った守備への攻撃が主 outcome。 | ハイプレスしても即ゴールとは限らずセカンドボール対応が重要。プレス後の二次攻撃を用意すべき。 |
| Transitionsレビュー (2024)link.springer.comlink.springer.com | 攻守トランジション研究の総括 | 文献ナラティブレビュー | トランジション全体の包括研究は不足。ゴールの多く(~60%)が攻守切替中に発生し、特に速攻とセットプレーが決定的。 | 攻守切替局面を第5の局面と捉えトレーニング・分析強化を提言。瞬間を制する戦術準備(即時奪回&速攻)が重要。 |
| Eusebio et al. (2024)bmcsportsscimedrehabil.biomedcentral.com | 得点パターン:序盤 vs 中盤戦比較(欧州各国) | 702試合・リーグ横断統計 | 時期で得点様式の差なし=スタイル定着示唆。トップリーグは得点の54%が速攻起因。Emergingのみ若干差異。 | 安定したゲームモデル維持が重要。特にトップレベルでは速攻重視が有効で、一貫した戦術パターンを持つべき。 |
| Plakias et al. (2025)mdpi.commdpi.com | コーナーキック戦術の体系的レビュー | 21研究の系統的レビュー(質評価付) | 攻撃: 中央~ファーポストへの間接クロス&3-4人の動的連携でShot率↑。【守備:** ミックスマーク+ニアポスト配置で失点↓。 | CK戦術のエビデンス蓄積。攻撃は練習パターン最適化を、守備はハイブリッド戦術を採用すべし。標準化された分析フレームの必要性提唱。 |
以上のように、各カテゴリの学術研究から得られた知見は、サッカー戦術の原理原則を改めて裏付けたり新たな視点を提供したりしています。攻撃・守備・トランジション・セットプレーのいずれにおいても、データに基づく戦術の科学が進展しており、指導や分析の現場と密接に結びついていることが確認できました。これらの研究成果を踏まえ、今後も戦術原則の探求と応用が深化していくことが期待されます。researchgate.netlink.springer.com





