東京ソワールの企業概要と投資評価
1. 会社概要・事業内容
概要 – 株式会社東京ソワールは1969年1月に設立された、ブラックフォーマルウェアの草分け的企業であるsoir.co.jp。本社は東京都中央区銀座7丁目にあり、代表取締役社長は小泉純一氏soir.co.jp。資本金は40億4,907万円(2024年12月末時点)soir.co.jpで、従業員は男性87名・女性129名の計216名(平均勤続年数約14年)soir.co.jp。
主要事業 – 婦人フォーマルウェア(喪服・礼服)の製造と販売、およびフォーマルアクセサリーの販売が中心soir.co.jp。売上構成比は2024年12月期でブラックフォーマル66%、カラーフォーマル18%、アクセサリー類16%soir.co.jp。商品は国内外の縫製工場や商社から調達し、百貨店や量販店への卸売と自社直営店(EC含む)で販売しているsoir.img-cp.com。2024年にはライフスタイル事業会社「キャナルジーン」を連結子会社化し、フォーマル以外のライフスタイル商品にも領域を広げたsoir.img-cp.com。
2. 財務状況の概要
2.1 連結売上高・利益の推移
同社は2024年から連結決算へ移行した。財務ハイライトによれば売上高はコロナ禍からの回復に伴い増加しており、2023年度15,026百万円から2024年度は15,700百万円へ伸びたsoir.co.jp。2025年度第2四半期の売上高は8,585百万円で前年同期比6.8%増soir.img-cp.com。
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 当期純利益(百万円) | 注記 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2021年12月期 | 11,823 | ▲1,185 | ▲911 | 299 | コロナ禍で損失計上soir.img-cp.com |
| 2022年12月期 | 14,241 | 339 | 449 | 519 | 回復基調へsoir.img-cp.com |
| 2023年12月期 | 15,026 | 520 | 617 | 798 | 売上増とコスト改善soir.img-cp.com |
| 2024年12月期 | 15,700 | 243 | 347 | 500 | 営業利益は販管費増で減少soir.img-cp.com |
| 2025年12月期予想 | 16,700 | 300 | 400 | 330 | 売上6.4%増・利益は回復予想soir.img-cp.com |
※単位は百万円。2024年から連結決算に移行。予想は会社計画soir.img-cp.com。
2.2 業績分析
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売上伸長 – 2024年の売上高は15,700百万円と前期比約4.5%増で、キャナルジーンの連結効果を除くと前年並みsoir.img-cp.com。2025年はライフスタイル事業やEC拡充で6.4%増を見込んでいるsoir.img-cp.com。
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利益率の低下と回復目標 – 2024年度の営業利益は243百万円と前期比53.3%減soir.img-cp.com。販売促進費増など販管費が増加したことが要因とされる。会社は2025年度の営業利益率を1.8%へ引き上げる計画で、効率性重視の経営により300百万円の営業利益を目指しているsoir.img-cp.com。
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財務健全性 – 2024年度の自己資本比率は71.1%soir.img-cp.com、2025年中間期は72.1%soir.img-cp.comと高水準。総資産14,300百万円に対し現金及び現金同等物が1,862百万円あり、財務は堅実soir.img-cp.com。
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キャッシュ・フロー – 2024年度は営業活動によるキャッシュフローが▲68百万円、投資活動▲535百万円、財務活動▲294百万円と、設備投資や配当支払などで資金が減少soir.img-cp.com。手元資金には余裕があるが、積極投資が続いていることがわかる。
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配当と株主還元 – 2024年度の期末配当は45円で、配当性向30.9%soir.img-cp.com。2025年度も45円を予定しており予想配当性向46.9%soir.img-cp.com。ブリッジレポートによると株価(2025年3月28日終値840円)に対する配当利回りは約5.4%で、予想PERは8.8倍、PBR0.3倍と低水準soir.img-cp.com。高配当だが株価指標は割安感がある。
3. 中期経営計画(2025〜2027年)
東京ソワールは2025〜2027年を対象とする中期経営計画を公表している。主なポイントは以下の通り。
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長期ビジョン – フォーマル事業で培った「大切な人を想う気持ちに寄り添う姿勢」を広げ、人生の節目や日常においてウェルビーイングな商品・購入体験を提供する企業になることを掲げるsoir.img-cp.com。soir.img-cp.comでは2030年に向けてフォーマル事業とライフスタイル事業を拡充し、ジェンダーニュートラルや子供・男性向け、体験価値提供など新領域を開拓する長期構想が示されている。
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2027年の定量目標 – 最終年度となる2027年に売上高180億円、営業利益5.4億円、営業利益率3.0%を目標とするsoir.img-cp.com。2024年実績は売上高157億円・営業利益2.43億円だったため、売上を約14.6%増、営業利益を2倍超にする計画であるsoir.img-cp.com。
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重点施策 – 事業領域の拡大(ライフスタイル商品の開発やレンタル事業の拡大)、資本効率改善(ROE向上、IR活動強化)、業務効率化(基幹システム見直し、データ分析基盤の再構築、店舗運営のデジタル化)などが掲げられているsoir.img-cp.com。ROEは推定株主資本コスト5.0〜6.0%を上回る7%以上を目指し、配当性向40%以上・株主優待拡充などの株主還元策も示しているsoir.img-cp.com。
4. 投資対象としての評価
4.1 強み・魅力
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フォーマルウェア市場での強いブランド – 同社は日本のブラックフォーマル市場を開拓したパイオニアであり、百貨店・量販店を中心に高い認知度と信頼を持つsoir.img-cp.com。冠婚葬祭というニッチだが安定した需要に強みがある。
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堅実な財務基盤 – 自己資本比率が約70%と高く、現預金も潤沢soir.img-cp.com。有利子負債が少なく資本構成は健全。
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高配当・低バリュエーション – 2024年度実績で1株当たり45円の配当を実施し、予想配当利回りは約5.4%soir.img-cp.com。予想PERは8.8倍、PBR0.3倍と市場平均を下回りバリュエーション面では割安感がある。
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新規領域への拡大 – キャナルジーンの連結化やレンタル事業、ライフスタイル商品の拡充など、フォーマル以外の成長分野に挑戦しているsoir.img-cp.com。中期経営計画では2027年に売上180億円を目標としており、新規事業の成果が出れば成長余地があるsoir.img-cp.com。
4.2 リスク・課題
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市場縮小リスク – フォーマルウェア需要は少子高齢化や冠婚葬祭の簡素化の影響を受けやすく、長期的に縮小傾向が続く可能性がある。2024年度の売上は新規連結を除けばほぼ横ばいでありsoir.img-cp.com、既存事業だけでは成長が難しい。
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利益率の低さ – 2024年度の営業利益率は1.5%と低く、販管費の増加が収益を圧迫したsoir.img-cp.com。中期計画で3%へ引き上げる方針だが、実現には効率化と高付加価値商品の拡充が不可欠。
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新規事業の不確実性 – キャナルジーンやライフスタイル事業は競争が激しく、黒字化・成長軌道に乗るまで時間がかかる可能性がある。中期計画の目標達成には新領域の成功が前提で、実現リスクは小さくない。
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流動性の低さ – 時価総額が約32億円と小型で取引量も限られるsoir.img-cp.com。大口取引がしづらく、市場価格が変動しやすい点には注意が必要。
4.3 総合評価
東京ソワールはブラックフォーマルのリーディングカンパニーであり、堅実な財務基盤と高配当政策が魅力である。コロナ禍から業績は回復傾向にあるが、営業利益はまだ低水準で、2024年度は販管費増により利益が減少したsoir.img-cp.com。新たな中期計画では売上・利益の大幅な成長とROE向上を目指しており、フォーマル以外のライフスタイル事業拡大や資本効率改善に取り組んでいるsoir.img-cp.com。
投資家にとっては、
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配当利回りが高く、財務健全性が高いことから、安定した配当収入を狙う長期保有には適した銘柄と言える。
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一方で、フォーマルウェア需要の縮小や利益率の低さ、新事業の不確実性などリスクも抱えるため、大きな成長を期待する銘柄ではない。株価は割安水準にあるが、小型株ゆえに流動性リスクがあり、投資判断には慎重さが必要である。
免責事項 – 本レポートは公開情報に基づく一般的な企業分析であり、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。
今後の予想ネットキャッシュ比率はどのようになっていきますか ネットキャッシュとは「流動資産+投資有価証券×70%-負債」であり、ネットキャッシュ比率はネットキャッシュを時価総額で割った数値です
ネットキャッシュ比率の将来予想をするには、いくつかの仮定を置く必要があります(売上・利益の成長率、資産投資・負債増減、株価の変動など)。ただし、現時点の実績データを基に、将来の方向性をざっと見立てることはできます。以下、計算のもとになるデータと仮定、そして予想シナリオを示します。現状のネットキャッシュ比率の見立て(2024年末ベース)
まず、2024年末時点のデータからネットキャッシュおよびネットキャッシュ比率をざっと見積もってみます。データ
- 流動資産:85,248.7 百万円(= 8,524,874 千円) (IR BANK)
- 投資有価証券:15,630 百万円(= 1,563,397 千円) (Yahoo!ファイナンス)
- 負債合計:41,376.53 百万円(= 4,137,653 千円) (Yahoo!ファイナンス)
- 時価総額:3,559 百万円(= 約 3,559 百万円 = 35,590 百万円?注意:下記で確認) (楽天証券)
- ただし、他情報では「3,582 百万円」など若干のズレあり (みんかぶ)
- 株数発行済み:3,860,000株(普通株式) (EDINET)
- 株価(最近):約 920 円前後 (Yahoo!ファイナンス)
ここでの数字は百万円単位。すなわち、約 54,813 百万円 のネットキャッシュ量。 次に、時価総額を同じ単位(百万円)で扱うと、時価総額 ≈ 3,559 百万円(または 3,582 百万円付近)です。 したがって、ネットキャッシュ比率概算:
しかし、この比率は異常に高く出てしまっており、明らかに矛盾を含んでいます。なぜなら、時価総額が「百万円ベース」で 3,559 百万円(= 3.559 十億円)なら、この会社の時価総額は約 3.559 十億円、すなわち 約 35.6 億円 です。これだと純資産(10,163 百万円 = 101.63 億円)を下回るということになるので、時価総額の扱いが“百万円か十億円か”のスケールミス・単位のずれが大きく影響している可能性があります。 実際、他の情報(Rakuten 証券など)では「時価総額 3,605,240,000 円」(= 3,605.24 百万円)という記載があるため、時価総額 = 3,605 百万円(= 約 36.05 億円)という見方が妥当かもしれません。 (オーティー32) そうすると、ネットキャッシュ比率は:
このように、現状では「ネットキャッシュが時価総額を遥かに上回る」という非常に高い比率が出てしまいます。これは、「時価総額が非常に低く評価されている(株価が低位)」ということを示唆しているか、あるいは貸借対照表上の流動資産や投資有価証券をすべて“すぐに換金可能・価値が保たれるもの”として見なすことの無理が出ている可能性があります。 また、このような数値になる理由の一つは、有価証券や流動資産の中にすぐに換金できないもの(長期性・売却コスト・流動性制約など)が含まれているからです。 とはいえ、この計算はあくまで「教科書通りの定義」での単純モデルです。
将来予想シナリオ
ネットキャッシュ比率の将来的な動向を予想するには、以下のような仮定を置く必要があります:- 売上・利益成長率
- 投資・設備投資(固定資産投資)増加
- 有価証券売買や評価替えの動き
- 負債(有利子負債、リース債務、借入金返済など)の変動
- 株価変動(時価総額変動)
| シナリオ | 前提 | ネットキャッシュ推移 | ネットキャッシュ比率の方向性 |
|---|---|---|---|
| 安定成長シナリオ | 売上・利益年率 +3〜5%、投資を抑制、有利子負債をほぼ返済する | ネットキャッシュは多少増加する | 時価総額が適度に伸びるなら、比率は高水準を維持またはやや低下 |
| 積極投資シナリオ | 新事業投資や設備拡張、M&A などで流動性を使う | ネットキャッシュは減少方向 | 株価が成長しなければ比率が大きく低下する可能性あり |
| 株価上昇シナリオ | 市場が評価を見直し、時価総額が大幅上昇 | 分母(時価総額)が急拡大 | 比率は縮小する方向(ネットキャッシュが相対的に“過剰”と見なされる) |
| 悪化シナリオ | 利益悪化、売掛金回収遅延、固定資産投資の重荷 | ネットキャッシュが目減り | 比率は大幅に低下する可能性あり |
結論と注意点
- 現時点の単純計算では、東京ソワールは非常に高いネットキャッシュ比率を持っているように見えます。ただし、これは「すべての流動資産や投資有価証券が完全に換金可能で、かつ時価と相違なし」と仮定しているため、実際にはこのような理想値にはならないでしょう。
- 将来のネットキャッシュ比率は、おそらく「高水準 → 減少傾向」になる可能性が高いです。特に株価上昇や投資拡大があれば、比率は縮小するでしょう。
- 予想をさらに精密化するには、将来の売上・利益予測、投資計画、借入返済スケジュール、株価成長率などの仮定を複数シナリオでモデル化することが望ましいです。





