プロ公式戦で使われた囲い(2020~2024年)

過去5年間のプロ棋戦では、穴熊囲いの強さが際立ちました。特に居飛車側が振り飛車に対抗するときに用いる居飛車穴熊は「振り飛車の天敵」と評され、藤井聡太などトップ棋士が採用すると無類の勝率を誇りました (藤井聡太棋聖が順位戦B級2組3連勝! 強すぎる藤井穴熊、組めば必勝!?|将棋情報局)。一方、振り飛車側の定番である美濃囲い系統も依然使用頻度は高く、機動力と安定感で評価されています。以下、主要な囲いの使用状況と勝率、代表的な棋士や戦型との関係を整理します。

居飛車穴熊 – 振り飛車キラーの堅陣

美濃囲い・銀冠 – 振り飛車の伝統と堅実さ

  • 使用頻度・勝率: 美濃囲いは振り飛車党の基本形として依然最多クラスの採用率です。対抗形では振り飛車側の多くが美濃系統(ノーマル美濃、高美濃、銀冠など)に組み、速攻とバランスを両立しています。美濃囲い自体の勝率は相手の戦法次第ですが、穴熊相手では持久戦になると不利とされ、居飛車穴熊 vs 振り飛車美濃の組み合わせでは終盤に囲いの堅さの差が出てしまう傾向があります (藤井聡太棋聖が順位戦B級2組3連勝! 強すぎる藤井穴熊、組めば必勝!?|将棋情報局)。それでも、美濃は組み上げのスピードが速く攻めにも転じやすいため、対穴熊でも中盤までに主導権を握れば十分勝機をつかんできました。例えば振り飛車名手の鈴木大介九段は美濃から発展させた銀冠を構築し巧みに攻めましたが、藤井棋聖の穴熊を崩しきれず完敗した例があります (藤井聡太棋聖が順位戦B級2組3連勝! 強すぎる藤井穴熊、組めば必勝!?|将棋情報局)。総じて、振り飛車側が穴熊以外を用いた場合、居飛車穴熊側の勝率が6~7割とやや高い傾向にあります (四間飛車 shogidata.info) (四間飛車 shogidata.info)。
  • 代表的な使用棋士: 振り飛車党の大半が美濃囲いを指しこなします。藤井猛九段や鈴木大介九段といったベテラン振り飛車党は美濃~銀冠の使い手として有名です。女流トップの西山朋佳も四間飛車美濃の名手です。また振り飛車転向組では、タイトルホルダー菅井竜也八段が三間飛車穴熊を志向しつつ、美濃や高美濃も柔軟に使い分けています。居飛車党でも相振り飛車戦になれば美濃囲いに組むケースがあり、近年台頭した若手振り飛車党(例えば古賀悠聖五段 (向かい飛車対局一覧 shogidata.info))も美濃の安定感を評価しています。
  • 有利となる戦型・局面: 美濃囲いは対抗形のみならず相振り飛車戦でも頻出します。相振りでは互いに自玉を美濃に囲う展開が多く、実質的に美濃 vs 美濃の戦いになることもしばしばです。その場合は「美濃は崩れにくい」という格言どおり我慢比べの展開になり、終盤まで大きな差がつかないまま持久戦となります。美濃囲いは端攻めに弱い側面がありますが、銀冠に発展させることで弱点補強が可能です。銀冠は美濃からさらに玉を深く入城させた形で、対急戦にも耐久力を発揮しました。特に四間飛車vs居飛車急戦のような将棋では、銀冠に組んで粘り強く戦うことで勝率を五分近くまで押し戻す展開も見られました (四間飛車 shogidata.info)。
  • 評価・解説: 美濃囲いは「美濃は崩れにくい」との格言があるほど安定感が評価されています。解説者からも「まず美濃に囲っておけば序盤の不利は避けられる」といった趣旨のコメントが頻繁に聞かれます。また銀冠については「美濃の発展形で、攻め合いに強い囲い」と高評価です。もっとも、AI時代の研究により居飛車穴熊 vs 美濃の構図では居飛車有利が定跡化しつつあり、プロの間では振り飛車側も穴熊囲いを採用するケースが徐々に増えてきました (対振りでのエルモ囲い、船囲い、金無双だとプロの使用率はどの辺が高いので… – Yahoo!知恵袋)。それでも、スピード重視の将棋や相振り飛車では美濃・銀冠の信頼性は依然高く、5年間を通じて使用率トップクラスの囲いです。

矢倉囲い – 相居飛車の伝統戦法

  • 使用頻度・勝率: 矢倉囲いは相居飛車戦で歴史的に最も有名な囲いですが、近年は採用率がやや下がりました。公式戦全体に占める矢倉戦の割合は直近では5%前後 (矢倉 shogidata.info)と少なく、AI研究の進展で「矢倉離れ」も指摘されています。それでも矢倉囲い同士の将棋(相矢倉)は依然として名勝負が多く、勝率も互角です。年度別に見ると、例えば2021年の矢倉戦は先手勝率45.9%:後手54.1%と若干後手有利、2022年は先手39.7%:後手60.3%と後手優勢でしたが (矢倉 shogidata.info)、2023年は先手46.4%:後手53.6%と戻しています (矢倉 shogidata.info)。このように統計上は年ごとにばらつきがあり、どちらか一方が明確に高勝率という状況ではありません(研究の深化で互角に収束)。
  • 代表的な使用棋士: 矢倉囲いを得意とする棋士としては、渡辺明九段や佐藤康光九段などが挙げられます。渡辺九段はタイトル戦でも矢倉戦を何局も戦い抜いており、伝統的な「矢倉森下システム」を愛用しました。森内俊之九段や藤井猛九段といったベテランも相居飛車では矢倉を志向する傾向があります。また若手では上野裕寿五段など矢倉採用率の高い棋士もいます (矢倉 shogidata.info)。藤井聡太竜王名人は相居飛車では角換わり腰掛け銀などを選ぶことが多く矢倉戦自体は少ないものの、矢倉囲いそのものの有用性は認められており場面次第で採用しています。
  • 有利となる戦型・局面: 矢倉囲いは典型的な相居飛車型(矢倉戦)で現れ、相手も同じく矢倉に組んでこそ真価を発揮します。双方が矢倉に囲った将棋は**「最も将棋らしい将棋」とも称され、攻防のバランスに優れた展開になります。ただし近年は、矢倉模様から途中で急戦策に転じる駆け引きも増えました。先手が矢倉を目指し後手が急戦策(▲4六銀速攻など)を採るケースや、逆に後手が矢倉を誘導するケースもあり、純粋な矢倉囲い同士の対局自体が減少傾向です (プロの居飛車 現在地 ー2021年3月ー|遠山雄亮/将棋プロ棋士)。そうした中でもタイトル戦など長丁場では矢倉が選択されることがあり、深い研究を背景にした大熱戦**が繰り広げられました。
  • 評価・解説: 矢倉囲いはプロ棋士から「理想的な陣形」と評価されてきました。玉の堅さと攻撃力の両立した陣形で、中盤以降に▲7七銀~▲6六歩型の厚みが終盤力を発揮します。ただAIによる新手発見により、矢倉戦の定跡は複雑化し評価値的にも先手有利とは言えなくなりました (プロの居飛車 現在地 ー2021年3月ー|遠山雄亮/将棋プロ棋士) (矢倉 shogidata.info)。それでも、「矢倉で勝った将棋は内容が充実している」と言われるように、矢倉囲いでの勝利は高く評価されます。解説者からも「矢倉はロマン」「矢倉を制する者が将棋を制す」といった声が根強く、勝率以上に将棋ファンや棋士の間での評価が高い囲いです。

雁木囲い – 復活した新戦法の堅陣

その他の囲い – 新旧の工夫

以上のように、2020年から2024年にかけては**「穴熊最強時代」**とも言える傾向が見られました。居飛車穴熊の勝率が突出して高く (藤井聡太棋聖が順位戦B級2組3連勝! 強すぎる藤井穴熊、組めば必勝!?|将棋情報局)、振り飛車側も対策として穴熊を選ぶ(相穴熊)ケースが増加しました (藤井聡太六冠が「穴熊囲い」 タイトル戦では初めて 師匠が語る「藤井穴熊」とは)。それでも、美濃囲いや矢倉囲いなど伝統の囲いも粘り強く使われ続け、雁木囲いの復活やミレニアム囲いの工夫など新しい流行も加わっています。解説者たちは「囲いにも流行の盛衰があるが、堅陣であるほど勝率が高いのは普遍だ」と述べており、実際データ上も穴熊など固い囲いほど高勝率であることが裏付けられました (藤井聡太棋聖が順位戦B級2組3連勝! 強すぎる藤井穴熊、組めば必勝!?|将棋情報局) (対振りでのエルモ囲い、船囲い、金無双だとプロの使用率はどの辺が高いので… – Yahoo!知恵袋)。総合すると、勝率が高い囲い=穴熊という図式がこの5年間は顕著であり、加えて美濃・矢倉・雁木といった囲いもそれぞれの局面で力を発揮したと言えるでしょう。

(藤井聡太棋聖が順位戦B級2組3連勝! 強すぎる藤井穴熊、組めば必勝!?|将棋情報局) (藤井聡太六冠が「穴熊囲い」 タイトル戦では初めて 師匠が語る「藤井穴熊」とは) (対振りでのエルモ囲い、船囲い、金無双だとプロの使用率はどの辺が高いので… – Yahoo!知恵袋) (矢倉 shogidata.info)