対数グラフ(log–log グラフや semi‐log グラフとも呼ばれる)は,データが指数関数的あるいはべき乗則的な振る舞いを示すときに,「直線」でプロットできるよう軸を対数目盛にしたグラフです。ここでは代表的な2種類について、

  1. 半対数グラフ(片対数グラフ)
  2. 両対数グラフ(log–log グラフ)

それぞれの「直線の傾き」の求め方をステップ・バイ・ステップで解説します。


1. 半対数グラフ(semilog)

  • 横軸:通常の線形目盛
  • 縦軸:対数目盛(logarithmic scale)

1-1. 何が直線になる?

指数関数モデル

y=Aebxy = A \, e^{b x}

 

の両辺に自然対数を取ると

lny=lnA+bx\ln y = \ln A + b x

 

となり,横軸を

xx

,縦軸を

lny\ln y

(または

log10y\log_{10}y

)でプロットすると直線になります。

1-2. 傾き mm

 

の求め方

グラフ上の2点

(x1,  y1)(x_1,\;y_1)

(x2,  y2)(x_2,\;y_2)

を選び,縦軸は

lny\ln y

,横軸は

xx

として考えると,傾き

mm

m  =  Δ(lny)Δx  =  lny2lny1x2x1m \;=\;\frac{\Delta (\ln y)}{\Delta x} \;=\;\frac{\ln y_2 – \ln y_1}{\,x_2 – x_1\,}

 

この傾き

mm

がまさに指数関数の「成長率」

bb

に対応します。


2. 両対数グラフ(log–log)

  • 横軸:対数目盛(
    logx\log x
     

  • 縦軸:対数目盛(
    logy\log y
     

2-1. 何が直線になる?

べき乗則モデル

y=Cxky = C \, x^{k}

 

の両辺に対数を取ると

logy=logC+klogx\log y = \log C + k\,\log x

 

となり,横軸を

logx\log x

,縦軸を

logy\log y

でプロットすると直線になります。

2-2. 傾き mm

 

の求め方

グラフ上の2点

(x1,  y1)(x_1,\;y_1)

(x2,  y2)(x_2,\;y_2)

を選び,
縦軸を

logy\log y

,横軸を

logx\log x

として考えると,傾き

mm

m  =  Δ(logy)Δ(logx)  =  logy2logy1logx2logx1m \;=\;\frac{\Delta (\log y)}{\Delta (\log x)} \;=\;\frac{\log y_2 – \log y_1}{\,\log x_2 – \log x_1\,}

 

ここで求まった

mm

が,モデル中の「指数」

kk

に対応します。


3. 実際の手順まとめ

  1. グラフを描く
    • データが指数関数的なら半対数(縦だけ対数)
    • データがべき乗則的なら両対数
  2. 直線領域を選ぶ
    • 値の散らばりが大きい場合は,直線に近い部分を2点取り
  3. 2点を読み取る

    • (x1,y1)(x_1,y_1)
       

      , (x2,y2)(x_2,y_2) 

      を正確に読み取る

    • 対数目盛ゆえ “目盛り数” をそのまま使ってもOK
  4. 傾きの計算
    • 半対数グラフ:
      m=(lny2lny1)/(x2x1)m = (\ln y_2 – \ln y_1)/(x_2 – x_1)
       
    • 両対数グラフ:
      m=(logy2logy1)/(logx2logx1)m = (\log y_2 – \log y_1)/(\log x_2 – \log x_1)
       
  5. 物理量への解釈
    • 半対数:傾き
      mm
       

      が増加率(例:成長率、崩壊定数)

    • 両対数:傾き
      mm
       

      がべき乗の指数(例: yxmy\propto x^m 


例題(両対数グラフの場合)

データ点

(x1=2,  y1=5),(x2=8,  y2=20)( x_1=2,\; y_1=5 ),\quad ( x_2=8,\; y_2=20 )

 

がべき乗則に従うと仮定して両対数グラフにプロットするとき,傾き

mm

m=log1020log105log108log102=1.30100.69900.90310.3010=0.60200.60211.00m = \frac{\log_{10}20 – \log_{10}5}{\log_{10}8 – \log_{10}2} = \frac{1.3010 – 0.6990}{0.9031 – 0.3010} = \frac{0.6020}{0.6021} \approx 1.00

 

よって,モデルは

yCx1.0y\approx C\,x^{1.0}

すなわち比例関係であることがわかります。


以上が「対数グラフ上の直線の傾き」を求める基本的な流れです。グラフ化の際には,対数目盛の読み取りミスに注意しつつ,必ず直線領域から2点を正確に拾って計算してください。もし具体的なデータや演習問題があれば,さらに詳しくご一緒に解いていきましょう!

 

例題(片対数グラフの場合)

 

以下では,片対数グラフ(縦軸だけ対数目盛,横軸は線形目盛)の例題をステップごとに解いていきます。

ある量

yy

xx

に対して指数関数的に変化し,モデルは

y=Aebxy = A \, e^{b x}

 

と仮定します。観測データとして,次の2点を得たとします。

(x1,y1)=(1,  3),(x2,y2)=(4,  24)(x_1, y_1) = (1,\;3),\quad (x_2, y_2) = (4,\;24)

 

このデータを半対数グラフ(縦軸に

lny\ln y

,横軸に

xx

)にプロットしたとき,直線の傾き

mm

を求め,元のモデルのパラメータ

bb

と定数

AA

を求めてみましょう。


ステップ1:ログ変換

縦軸は

lny\ln y

なので,各点を変換します。

lny1=ln31.0986,lny2=ln243.1781\ln y_1 = \ln 3 \approx 1.0986,\qquad \ln y_2 = \ln 24 \approx 3.1781

 


ステップ2:傾き mm

 

の計算

半対数グラフ上の直線の傾きは

m  =  Δ(lny)Δx  =  lny2lny1x2x1m \;=\;\frac{\Delta(\ln y)}{\Delta x} \;=\;\frac{\ln y_2 – \ln y_1}{x_2 – x_1}

 

より、

m=3.17811.098641=2.079530.6932m = \frac{3.1781 – 1.0986}{\,4 – 1\,} = \frac{2.0795}{3} \approx 0.6932

 

この

mm

が,モデル中の指数

bb

に対応します。よって

b0.6932\boxed{b \approx 0.6932}

 


ステップ3:切片(定数項) AA

 

の計算

モデルは

lny=lnA+bx\ln y = \ln A + b\,x

と同形なので,任意の点を使って

lnA\ln A

を求められます。たとえば

(x1,y1)(x_1,y_1)

を用いて

ln3=lnA+b1lnA=ln3b=1.09860.6932=0.4054\ln 3 = \ln A + b\cdot 1 \quad\Longrightarrow\quad \ln A = \ln 3 – b = 1.0986 – 0.6932 = 0.4054

 

よって

A=e0.40541.500A = e^{0.4054} \approx 1.500

 


ステップ4:最終モデルの確認

以上より,元の指数関数モデルは

y1.50  e0.693x\boxed{y \approx 1.50 \;e^{0.693\,x}}

 

となります。
ちなみに

b0.693b\approx0.693

eb2e^b\approx2

に相当するので,「

xx

が1増えるごとに

yy

がほぼ2倍になる」成長率を表しています。


まとめ

  1. データ点を
    (xi,  yi)(x_i,\;y_i)
     

    で読み取り,縦軸に lny\ln y 

    を取る。

  2. 傾き
    m=(lny2lny1)/(x2x1)m = (\ln y_2 – \ln y_1)/(x_2 – x_1)
     

    を計算し,モデルの指数 b=mb = m 

    と対応づける。

  3. 切片
    lnA\ln A
     

    lnyibxi\ln y_i – b\,x_i 

    から求め,定数 AA 

    を得る。

この手順で,片対数グラフ上の直線から指数関数モデルのパラメータを簡単に読み取れます。具体的なデータがあれば,ぜひ同じ流れで試してみてください!