カナダのトロントにあるヨーク大学で行われた超精密測定は陽子のサイズの測定に成功した。
陽子のは極めて小さく、直径は1兆分の2mmに満たない。このため、その半径を探り出すのは極めて高い技術を要する。
1つは水素原子に電子ビームを照射する方法だ。水素の原子核はただ1個の陽子でできているため、電子が陽子に当たって錯乱する角度は陽子のサイズによってきまる。
もう一つは物体が発する放射の強度を周波数別に測る分光法に基づく。水素原子の電子をあるエネルギー状態から次のエネルギー状態に励起し、この遷移を起こすのに必要な放射の周波数を見つける。2つのエネルギー準位のギャップの、大きさが陽子のサイズに左右されることをもとに陽子の半径を割り出す。
この2つの手法は1950年代から行われ、陽子半径は0.88フェムトメートルとされた。しかし2010年に行われた、ドイツのマックス プランク量子工学研究所が行ったミューオニック水素による分光法の測定では今までよりも小さな値となった。
この結果によって混迷はさらに深まった。
このデータの不一致はヨーク大学のチームを率いるヘッセルスの注意を引いた。彼は特定のエネルギー準位の間に見られる、ラムシフトに注目した。通常の水素でのラムシフトから陽子半径を導いた。
ヘッセルスがその答えを見つけるのに8年かかった。ヘッセルスは無線周波数の放射を使って水素原子を励起し、ラムシフトを伴う電子エネルギーの遷移を引き起こす周波数を正確に測定した。
最終的に陽子半径は約0.833フェムトメートルと結論づけた。
陽子にはまだ謎が多い。
陽子と中性子はどちらも強い核力によって結びついた3個のクォークからできていることがわかっているものの、その結合の本質はほとんど理解されていない事などだ。
人間も宇宙に存在するあらゆるものも、その質量の99%は陽子と中性子に由来している。非常に、重要な粒子でありながら謎が多いのが実情だ。
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