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サブプライム問題が深刻化し、他の市場への伝染が進んでいることが明らかになるなかで、私はそこから学ぶべき教訓と思えるものを列挙しはじめた。
そして、つねに念頭に置いておくべき重要な教訓であることに気づいた。

 

●資金調達が容易すぎると、カネは間違ったところへと流入する
資金の需要が逼迫しているとき、投資家はどこにカネを投じるのが最良かという配分の選択を迫られ、忍耐と規律をもって決断を下すようになる。
だが、資金が有り余っているのに投資先が少なすぎる状況では、する価値のない投資が行われるのだ。

●ふさわしくないところに資金が投じられると、悪いことが起こる
資金の需要が逼迫しているときには、しかるべき借り手でも門前払いされる。だが資金がだぶついていると、信用力の低い借り手でも容易に借りられる。
その結果、返済の遅延や倒産、損失などが発生するのは必至である。

●資金が過剰に供給されると、投資家は低いリターンと狭い「誤りの許容範囲」を受け入れて、投資先を奪い合う
人々が何かを買おうと競い合うと、価格はオークションのようにどんどんつりあがっていく。
よく考えれば、買値をつりあげる事は、同じカネで買えるものが減るのと同じことだ。
したがって、投資で競り合うことは、投資家がいかに低いリターンを要求し、いかに大きなリスクを進んで受け入れるかを示していると言える。

●リスク軽視の傾向が広がると、より大きなリスクが生じる
「何も悪いことは起きない」、「高すぎる価格はない」、「誰かが必もっと高い価格で買ってくれる」、「早くしないと他の人に買われてしまう」といった考えは、人々がリスクを軽視していることを表す。
今回のサイクルでは、「買収対象企業の質が向上しているから、あるいは好条件で資金を調達できるから、より高いレバレッジを利かせた企業買収も可能」という考えが広がった。
その結果、好ましくない事態が生じた場合のリスクと、レバレッジに大きく依存することの危険性がないがしろにされた。

●不十分な精査が投資損失をもたらす
損失を避ける最良の防御策は、洞察力を働かせて調査を行い、ウォーレン・バフェットが言うところの「誤りの許容範囲」にこだわることである。
だが過熱した市場では、人々は損失を出すことではなく、機会を逸失することに懸念し、懐疑的な姿勢で時間をかけて行う分析は時代遅れとされてしまう。

●市場が熱狂に包まれると資金は革新的な投資商品へと集中するが、その多くは時の試練に耐えることができない
強気の投資家は何が上手くいくかばかり考え、うまくいかないかもしれないことは考えない。
熱狂が慎重さに取って代わり、人々は理解できていない目新しい投資商品に飛びつく。
そしてあとになって、なぜそのようなことを考えたのかと疑問に思うのだ。

●ポートフォリオの中にある見えない断層線によって、無関係に見える資産の価値が連動する可能性がある
ある資産についてリターンとリスクを評価することは、その価格が他の資産との相対比較でどう動くか理解することよりも簡単だ。
資産間の相関性は、特に危機時はその度合いが高まることもあって、過小評価されがちである。
アセットクラス、業界、地理的分布といった面で分散化されているように見えるポートフォリオでも、厳しい時期にはマージンコール、売買が成立しない市場、全般的なリスク回避志向の高まりといった非ファンダメンタルズ要因が支配的になることで、すべての構成資産が似たような影響を受ける。

●心理的な要因やテクニカル要因がファンダメンタルズよりも強い影響力を発揮することがある
最終的に見ると、価値の創造と破壊は景気動向、企業業績、製品に対する需要、経営陣の能力などのファンダメンタルズによって起きる。
だが短期的には、市場は資産の需要に影響を及ぼす投資家心理やテクニカル要因にきわめて左右されやすい。
何よりも短期的な影響力が強いのは、投資家の信頼感だろう。
したがって、どんなことが起きても不思議ではなく、予期せぬ理不尽な結果がもたらされる可能性もある。

●市場が変化し、従来のモデルが通用しなくなる
「クオンツ」ファンドがうまくいかないのは、主としてコンピュータ・モデルとその根底にある前提に不備があるからだ。
コンピュータは、主に過去の市場で見られたパターンに基づいたポートフォリオ運用で利益をあげようと試みる。
そうしたパターンに変化が起きること、つまり、パターンから外れた状況が生じることは予測できず、概して過去の規範の信頼性を過大評価してしまうのである。

●レバレッジは結果の度合いを増幅させるが、価値の増大にはつながらない
高いリターンが見込まれるお買い得価格の資産への投資を拡大するため、レバレッジを利かせることには大きな意味がある。
しかし、低いリターンしか見込めない資産、別の言い方をすれば適正あるいは割高な価格の資産への投資を増やすためにレバレッジを利かせることは危険といえる。
不適切なリターンを適切なリターンに変えようとするためにレバレッジを用いることは、ほとんど無意味である。

●行き過ぎた状態は修正される
投資家心理が過度に楽観的で、物事はいい方向にしか行かないという前提を完全に織り込んだ価格が形成されている市場では、資本破壊が起こりかねない。
それは、投資家の前提が楽観的すぎることが判明したとき、悪い出来事が生じたとき、あるいはただ単に、高すぎる価格が自らの重みに耐えられなくなったときに起きる可能性がある。

 

2004~2007年に見られたような資金の供給過剰とそれにともなう慎重さの欠如は、その破壊的な影響力によって、投資家生命を脅しかねない。
こうした状況を認識し、対処することが必要なのだ。

 

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