アサーティブな自己表現とは
ここまで、非主張的な自己表現と攻撃的な自己表現について見てきましたが、これらとは異なる第三のタイプがアサーティブな自己表現です。
これは、自分の気持ちや考えや欲求を率直に正直に表現し、なおかつ相手にも関心を持って、相手の気持ちや考えや欲求も大切にし理解しようとする、自他尊重のコミュニケーションです。
「私はこう思う」「私はこんな気持ちだった」「私はあなたにこうしてほしい」「私はあなたにこれはやめてほしい」など、きちんと自分の心の中にあることを伝えます。このように「私は」を主語にして表現する伝え方をアイ・メッセージといいます。一般的に日本人は英語ほど主語を明確にして話しませんが、「私」を意識して伝えることはとても重要です。
こうして自分の心の中に、あることを伝える点だけに注目すれば、攻撃的な自己表現とは大差ないのかもしれません。しかし、アサーティブな自己表現は自他尊重がベースにあるので、パートナーはどんな気持ちなのか、どんなことを考えているのかに関心をもって、耳を傾け理解しようとします。つまり、「表現する」「伝える」だけでなく、「聴く」「理解する」「受けとめる」ことも大事にします。僕はこう思うけれど、君はどう?
私はこんなふうに感じるけどあなたの気持ちを聞かせて、など、パートナーの自己表現を引き出し理解しようとします。
アサーティブな自己表現ができる人の特徴
アサーティブな自己表現ができる人は、たとえ愛し合っている夫婦・カップルどうしでも、まったく異なる個性をもった二人の別々の人間なのだから、気持ちや考えや欲求が異なるのはむしろ当然だと考えています。
そして、自分らしさを大切にし、パートナーのその人らしさも大切にしたいと思っているので、なるべく二人が満足のいく結果を出したいと考えます。そのためにも、安易に妥協したり、パートナーを服従させようとするのではなく、面倒くさがらずにパートナーと話し合って歩み寄ろうという姿勢があります。
また、適度な自信と謙虚さを持ち合わせています。基本的には自分に対して自信を持っているのですが、だからといって常に自分が好きな正しいという尊大で傲慢な気持ちを持っているわけではありません。
時には自分も間違うことはあるし、失敗することもあるし、不完全な人間だし、パートナーには自分にないよいところがある、というような謙虚さです。こうした適度な自信と謙虚さがあるからこそ、パートナーの気持ちや欲求にも関心をもち、きちんと聴こう、理解しようと思えるのです。
さらに、アサーティブな自己表現ができる人は、パートナーに対する感謝や、ねぎらい、励ましやほめることなど、肯定的なメッセージを上手に伝えることができるという特徴があります。
「ありがとう」「大変だったね」「大丈夫?」「それ、とっても似合ってるよ」など、ちょっとした言葉かけが無理なく自然にできるのです。米国のゴットマンの研究では、長期間にわたって親密な関係が保てるカップルとそうでないカップルとの大きな違いの一つとして、このような肯定的なコミュニケーションの頻度が大きな意味をもつことが明らかになっています。
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