スーパーアプリとしてさまざまなサービスをひとまとめにすると、多様なデータを収集できるようになります。
これがプラットフォームとしては魅力なのです。
仮に食事のデリバリーや送金、QRコード決済、配車サービスを別々に使っているとしましょう。
そうするとQRコード決済でインスタントラーメンを購入した利用者はラーメンがすきだと想定できますが、デリバリーアプリが別だと開いた時にラーメンを提供できないわけです。
個人に合わせた「おもてなし」を提案するチャンスを逃してしまうのです。
1つのアプリでサービスを提供できれば、こうしたデータの共有が容易になります。
利用者はサービスごとにアカウントやクレジットカード情報を登録する手間がなくなるメリットがあります。
ヤフーとソフトバンクグループが展開する「paypay(ペイペイ)」はQRコード決済サービスで先頭を走っています。
またネット通販「ペイペイモール」にも力を入れています。
一方、LINEは日本のメッセージアプリでは断然使われています。
ヤフーが以前カカオトークを買収しても追いつけませんでした。
さらに保険サービス「LINEほけん」や株取引サービス「LINE証券」など金融にも力を入れています。
経営統合にあたり、お互いのサービスを統合してスーパーアプリを作る構想を打ち出しています。
モビリティサービスから進化
しかし、なぜ今なのでしょうか。
ウィーチャットやアリペイ、ウーバーばかりでなく、スーパーアプリが東南アジアに相次ぎ登場。
時価総額1兆円規模という巨大な規模で、いつ日本に上陸してもおかしくない状態だからです。
東南アジアにはシンガポールを中心とするグラブとインドネシアを中心とするゴジェックがあります。
ゴジェックの創業者は最近、辞任してインドネシアの閣僚になると発表し話題になりました。
この2社は配車アプリから出発して独自の進化を遂げ、今や東南アジアにおける生活に欠かせないスーパーアプリになっています。
単に「アジア版ウーバー」の配車アプリとして認識していると大きな誤りになります。
グラブはマレーシアのクルマ部品企業の財閥出身であるアンソニー・タン氏が2012年に、米ハーバード・ビジネス・スクールのクラスメートだったタン・ホーイリン氏と共同で創業しました。
モビリティサービスとして、グラブは東南アジアでは大きなシェアを取りつつあります。
さらに今後の人件費抑制を見越して自動運転タクシーの開発を進めています。
一方でインドネシアのインターネット決済関連のkudo(クド)や、インドの決済スタートアップikaazを買収。
金融事業を開始し、生活インフラの中心になりつつあります。
またビジョン・ファンドからの出資という共通項から、中国の滴滴出行(DiDi)や平安保険などが東南アジアでサービスを展開する際の足がかりの役割も果たしています。
ゴジェックはインドネシア出身のナディム・マカリム氏が普段使っていたバイクタクシ―「オジェック」に可能性を見出して2010年に創業しました。
最初はバイクに特化したモビリティサービスでしたが、今は配送や引っ越しを含む物流全般だけでなく、ポイントやクーポンの配信、買い物や家事の代行、修理手配、占い、寄付、フィットネス、レストランなどの予約、洗車、医療、チケット購入、ニュースリーダー、携帯電話料金の決済など、20近いサービスを展開したスーパーアプリとなっています。
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