最も古くからある投資の原則は最もシンプルである。
「安く買って、高く売れ」。まばゆいほど明瞭だ。
値段が安いとかとか値段が高いというのはどういう意味だろう。
「高い」、「安い」という言葉については、何らかの客観的な基準が必要であり、最も実用的な基準はその資産の本質的価値といえる。
そうすると、この原則の意味は明瞭になる。
「本質的価値を下回る価格で買い、上回る価格で売れ」だ。
もちろん、その言葉に従うためには、本質的価値とは何かをよく理解した方がよい。
私にとっては、本質的価値を正確に推計することが、投資の出発点として欠かせないプロセスである。
企業の株式に投資する際のアプローチは二つの基本型にわけられる。
その企業のファンダメンタルズ分析(事業内容や業績などの基礎的要因)に基づくアプローチと、テクニカル分析(その株式そのものの値動きの研究に基づくアプローチ)だ。
言い換えれば、その株式に潜む本質的価値を集計し、そこから株価が乖離した場合に売買する方法と、将来の株価動向の見通しのみに基づいて投資の判断を下す方法だ。
まずは後者について説明しよう。私がその有効性を認めておらず議論の対象からはずしてもよいと思うからである。
テクニカル分析の衰退の一因は「ランダムウォーク仮説」にあると言える。
ランダムウォーク仮説は1960年代前半に生まれたシカゴ学派の理論の一つで、ユージン・ファーマ教授の主導で編み出された。
同仮設は、過去の株価変動が将来の株価変動の予測にまったく役立たないと説く。
テクニカル分析以外で、過去の株価動向を判断基準にする投資アプローチにいわゆる、「モメンタム投資」がある。
このアプローチを実践している投資家は、値上がりした株価はさらに上昇し続けるという前提のもとに投資を行っている。
・・・この方法で儲けようとする人のことがまったく理解できない。
私自身はファンダメンタルズ分析を重視した、バリュー投資を選ぶ。
バリュー投資は安定的なとうしだからである。
まず、バリュー投資は本質的価値を推計することにかかっている。
さもなければ、投資家として成功し続けるという夢は、夢のままで終わってしまう。
正確に推計できなければ、高すぎる、あるいは低すぎる価格でその銘柄を買う公算が大きい。
バリュー投資のアプローチを採用することにし、証券や資産の本質的価値を推計したら、次に重要となるのはそこからぶれないことだ。
投資の世界では、何かが正しかったとしても、必ずしもそれがすぐに証明されるわけではないからだ。
投資家にとって、つねに正しいことをし続けるのは難しい。
そして、つねに正しいことをしかるタイミングで行うのは不可能だ。
バリュー投資家が最大限望めるのは、資産の本質的価値を正しく見積もり、価格がそれを下回った時に買うことだ。
だが今日、買ったところで、明日からすぐに利益が得られるわけではない。
本質的価値に関する見方を我慢強く保持することが、利益の獲得につながるのだ。
株価水準について正しい見解を持っていても、意志が固くなければ、あまり役に立たない。
誤った見解の持ち主の意志が固い場合、状況はさらに悪化する。
この点だけをみても、すべてを正しくおこなうことが如何に難しいか、わかるだろう。
本質的価値を正確に推計することは、感情に流されない着実な投資、利益を生み出す可能性の高い投資に不可欠な土台なのだ。
バリュー投資家が最も高い利益をあげるのは、割安な資産を買い、まめにナンピン買いをしているうちに、価格が分析どおりに上昇した場合である。
したがって、下げ相場で利益をあげるのに不可欠な条件は二つある。
一つ目は、本質的価値に関する見解を持っていること。
二つ目は、その見解を我慢強く持ち続け、たとえ値下がりのせいで自分が間違っているような気にさせられても、買うことだ。
最後にもう一つ忘れてはいけないのは、その見解が正しくなければならないという点である。
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